四一話 近所の繋がり
ユミナの元へと転移した。まだ、ユミナは寝ている。外をを見ると、太陽はもう、真上にあった。
「ユミナ。起きてくれ、流石に腹が減った」
お腹が空いた。いつも以上に動いたせいか、体が食べ物を欲している。
「起きてくれよー」
肩を揺すっても起きなかった。しょうがない、諦めよう。俺には蹴って起こすという選択肢は無い。
こうなったら、誰かに恵んで貰おう。里にいる子供たちとは仲がいいし、何処かに行けば、恵んでくれるだろう。交友関係は有効活用しないとな。
よし、やることが決まったら、早速行動だ。
徒歩大体、十秒も掛からない位。すなわち、隣の家、ドクの家の目の前に来た。
「すいませーん。隣のリュウですけど、ドクは居ますか」
チャイムなんて、場違いなものは家に取り付けられていないので、ドアをノックした。
すると、走ってくる音が聞こえた後にドアが開いた。
目の前には俺より、頭一つ小さい全く知らない、黄色の髪をした幼女が現れた。
「ワット。私が出るって言ったでしょ」
「ドク姉より、私の方がドアの近くにいたから」
どうやら、この子の名前はワットというらしい。
「どうしたの? リュウから私の所に来ることは初めてだよね」
「ご飯はもう食べた?」
「ううん。今から食べる所だけど」
「良かった。少し分けてくれないかな」
ワットという子に興味はあるが、今は空腹の方をどうにかしたい。
「うん、いいよ。でも、どうしたの? ユミナさんなら、料理も出来るって聞いているんだけど」
「今日、ちょっと体調が悪いみたいなんだ」
「大丈夫なの?」
「一日休んで貰ったら、直に直るだろう」
詳しい説明は面倒臭いので大まかにしておいた。
「ドク姉。この人、誰なの?」
「ああ、ワットはまだ知らなかったね。リュウはね……」
ドクが俺の軽い説明をしているが、早くして欲しい。異常なまでに腹が空いている。
「これから、よろしくね。リュウ兄」
「ああ、よろしく。ワット」
結構、のんびり会話をしているが、そろそろ、意識が飛んでしまいそうな位だ。
「こんな所で話していても、何もならないし、そろそろ、家に入って」
「お邪魔します」
約束も無しに受け入れてくれて良かった。やっぱり、普段から、近所付き合い(主に子供)を大切にしていたお陰だな。
家に入らせて貰ったが、なんと、部屋の配置がユミナの家と同じなのだ。
勿論、家具の場所は違うが、それでも、分かる程、似ていた。まあ、あまり、興味は無い。
「あら、この子が最近ドクが異常に話してくる人族のお友達かしら」
「そうだよ。お母さん」
緑色の髪の女性がドクと会話をしているが、会話から見るに、ドクの親らしい。
「いつも娘が世話になっているね。最近は種族で差別があったりするみたいだけど、この里は魔族以外なら歓迎するよ」
「ありがとうございます。後、ドクにはこちらこそ世話になっています」
急に話を振られたので、礼儀を持って返した。
後、魔族はかなり嫌われているようだ。今の俺には関係ないな。
「あら、まだ、子供なのに丁寧ね。全く、ドクにも見習って貰いたいよ」
「もー。お母さんったら。リュウもそんなに堅苦しいのは止めて、いつも通りでいいよ。そんな事より、お腹が減っているから、早くご飯にしよう!」
「ごはーん!」
「分かりました。すぐ用意しますから、座って待っときなさい」
この家族のやり取りを見ていると、とても穏やかな気分になる。この平和な光景をいつまでも見ていたい。平和はいいものだ。
絶対にこの里をクズな魔族から守りたい。
「リュウ兄。こっちに座って」
「ああ、ありがとう」
ワットが座ったまま床を叩いて、隣に座るように促して来た。別に断る必要も無いので、そこに座った。
「私はここだね」
開いている方の隣にドクが座って来た。隣なのはいいが、やけに距離が近い気がする。
そんな事を言って、空気が毒によって悪くなったら、面倒臭いので止めておいた。
「お待たせ、ご飯持って来たよ。あらあら」
ドクの母さん。ニヤニヤしながら俺たちを見るのはやめて欲しい。
「今日の料理は、おにぎりと魚入りの鍋です」
「やったー」
昼から、鍋というのもすごいが、また米と魚か。この里の人たちは米と魚が大好きなのか? 魚嫌いなあいつはこの里に住めないな。
後、鍋をよく見たが、魚入りというより、魚オンリーな気がする。だって、魚が四匹と申し訳程度の野菜が入っているだけだ。鍋では無く煮魚の方が正しい気がする。
きっと、文化の違いだろう。いや、元の世界で同じ国の勇者が伝えた文化なら、文化は同じか。
「「「「いただきます」」」」
鍋をどんな風に食べればいいか、分からないので、おにぎりから食べ始めた。
たまに他人の握ったおにぎりは食べれないという奴がいるが、俺は明らかに変な色をしていなければ、食べられる。
一口、食べての感想を言えば、辛い。塩を入れすぎな気がする。それでも、ドクとワットはどんどん食べている。
俺も空腹なので、辛いと思いながらも、食べた。
何故かは知らないが、誰も鍋に手を付けない。誰かが食べてくれないと、俺も食べずらい。
思った所で状況が変わらないので、箸で鍋の野菜を食べた。
塩の量が多かったが、野菜に対してはいい味付けになっていると思う。
まだ、大きい魚に手を出すのはいけない気がする。
鍋の野菜ばかり食べていると、とうとう野菜が無くなった。
「魚っていつ食べるんだ」
誰も何も教えてくれないので、訊いた。
「いつでもいいよ」
文化の違いを気にしすぎてしまったみたいだ。しかし、何故誰も、鍋を食べようとしないのかが、疑問だ。
「「野菜が無くなったー!」」
ワットとドクが声を合わせて言った後、魚を食べ始めた。
うん。何だろうか、この利用された感じは。気にしたら、駄目な気がする。
俺も魚を食べた。予想していたが、やはり塩っぽい味がしたが、悪くは無かった。
「ごちそうさまでした」
塩が濃かったが、空腹を満たすことが出来たので、満足だ。
「今日はありがとうございました」
「いいよ。これも、近所付き合いってものだしね。あと、娘の恋人……友達を見ることが出来てこっちも楽しかったよ」
途中で変な単語が出た気がするが、気にしない方がいいな。あれ、さっきから、気にしてはいけない事が続くな。
それより、急に来た子供に「ご近所付き合いだから」ご飯を恵んでくれるなんて、今、考えるとありがたい事だ。
「リュウ。みんなの所に遊びに行こう」
「分かった」
「私もお兄ちゃん達と遊びたいけど、ごめんね」
ワットは何故か来ないらしい。理由があるだろうが、長い話になりそうなのでやめた。
この里に居られるのは後、何日だろうか?




