表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/135

三五話 魔道具

 今、俺を先頭にして、ドクとダンジョンを探索? をしている。いや、正しくは彷徨っていると言った方が正しい。


 竜が通るためなのか、この階層の通路は広い。

 そのせいで、少ししか歩いていないのに、長い距離を歩いた気分になる。


 ユミナが居てくれれば、次の階層へ最短で進んでいるのを知れるから、精神的に楽だ。


「次の獲物はどいつかな」


 ドクは俺とは正反対に足取りが軽い。初めて戦う魔物。そして、久しぶりのダンジョン。興奮する気持ちは分かる。

 しかし、そろそろ地上では日が沈む頃だ。あと一体ぐらいが限度だろう。


 彷徨っていると、通路よりも幅が狭い道を見つけた。気になるな。

 特に行かないといけない道がある訳ではない。


 勝手な行動だが、一瞬に帰る能力があるのはクウだけだ。すなわち、俺に主導権がある。


 狭いと言っても、両手を広げても余裕のある位の道を歩いていると、開けた場所に着いた。


 キューブ型をした空間で、真ん中に木箱が置いてあった。


「ここが宝箱がある部屋ですね。初めて来ました」

「そうらしいね。私も初めて来たよ」


 そう、ここは宝箱が設置されている場所だ。確か、ダンジョンについて書かれている本には、罠がある可能性について書かれていた。


 ほとんどの罠が、宝箱を開けた瞬間、大量の魔物が発生する魔物部屋ルームらしい。

 俺としては魔物が出てきてくれるのはありがたい。


「僕が開けるから、なるべく近くにいてね」

「うん。分かった」


 ドクが俺の片手を掴んだ。

 そういえば、転移させる系の罠もあったけな。でも、俺ならすぐに戻れてしまう。警戒する必要のない罠だ。


 宝箱を開けた瞬間。部屋が一瞬暗くなった。


 どうやら、魔物部屋ルームみたいだ。


「ドク。遠慮せずに出せ」

「うん。分かった」


 部屋が明るくなり、周りに貧弱竜ザコ以外にも、一層から三層目にいた、リザードマンも発生していた。

 なかなかの数だ。ざっと、五十体はいやがる。


 このまま、ドクを守っていれば、いずれ決着がつくだろう。

 でも、俺たちはそんなに暇ではない。俺もドクもまだ子供だ。なら、心配する大人が居る。


 すぐに終わらせるために魔法をイメージする。

 殺すのではなく、出血をさせる程度の風を大量にまき散らす。


 魔法の名は《切り裂き嵐(ジャックテンペスト)》中級魔法だ。

 

 風を凝縮して飛ばすため、大気中に漂っている毒も合わさり、毒の刃となる。 


「グギャー! ガアー!」


 魔物が悲鳴を上げる。魔物と言っても、あの四足野郎ザコだけだ。他の魔物はドラゴン系の名に恥じていない。

 傷口から、更に毒が入る。


 どんどん。魔物が倒れていく。


 その中で、一体だけがブレスを放って来た。検討違いな方向な所に飛んで行ったが。

 敵の努力に免じて、俺が直接手を下してやろう。光栄に思えよ。


 本気で走り、対象の魔物に近づいた。魔物は俺に気付いているのか、足から崩れ落ちそうになりながらも、俺を睨んだ。


 最後まで足掻く奴は、嫌いではない。


 剣を出し、首を撥ねた。

 地面に鱗がドロップした。誰が倒しても同じドロップだが、作業とは違う楽しさがあった。


 周りを見渡した。どうやら、魔物は全滅したみたいだ。

 意外にすぐ倒せたな。


 ドクの所に戻った。 


「良かった。無傷だね」

「うん。一瞬びっくりしたけど、何とかなったよ」


 会話をしながら、開いた宝箱を見た。

 

「これは、石なのかな」

「そうだね。でも、ただの石じゃないね」


 宝箱の中にはその辺にありそうな拳位の石が置いてあった。

 この石には少し魔力を感じる。多分、魔道具だろう。


「これ、貰っていいよね」

「いいよ、いいよ。私は今回、毒を出していただけだし」


 遠慮なく貰う。

 今後、役に立つ気がする。


「じゃあ、帰ろうか」

「え、どうやって?」


 俺が、転移させたことを覚えていないのだろうか? まあ、いいか、早く帰ろう。転移をするためにドクの手を掴む。


 『クウ。田んぼの道に飛んでくれ、ミスをするなよ』

 『分かりました。……行きます《短距離転移ショートワープ》』


 ――――――


 いつもの感覚と共に転移をした。空は後、少しで沈み切る所にあって、暗くなり始めている。


「え、ここって」

「田んぼだよ」


 説明が面倒臭いが、隠すのは悪手だな。


「これはね。クウ出てきて」

 『はい。今、出ます』


 白い球体。クウを出して、ドクに説明した。


「すごいね。便利の塊だね」

「でもね、その分、面倒事があるんだ」

 

 力を持つということはその分、責任や義務を背負う時が、いや――()()()()()


「このことは秘密にしてくれないかな?」

「いいけど。どうして?」


 ただし、力を知られた場合だけだ。やっと、勇者の義務を終えたんだ。もう、他人の為に命を懸けて、働きたくない。

 俺は自分の力で、楽しく生きるんだ。

 

 こんな本音をこんな純粋で勇者好きな少女に言うのは少し酷だ。


「転移って、かなり魔力を使うんだ。みんなに自慢すると、後で辛いんだ」

「そうなんだ。うーん。もっと聞きたいことがあるけど。時間が時間だからね。帰ろう」


 何を聞きたいのだろうか? なんか、面倒な事にまた巻き込まれるのは御免だ。


 クウを体に戻し、ドクを家まで送った。

 魔族が誘拐を企てているかもしれないからな。


 別に何処に家があるか、気になったわけでは無い。

 

 街灯が無い里は、暗いと思ったが、意外に家が密集していて、比較的に明るかった。


「今日はありがとう。私の家はここだから」


 ドクが指さした家を見た。家は何も変哲もないが、場所が少し、気になった。


 俺が今住んでいるユミナの家の隣だった。

 隣人だったのか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ