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二七話 鬼ごっこ 後編

 二人を見つけた。この里の鬼ごっこは捕まったらスタート地点に戻る。

 知っているルールとは少し違ったがこれが竜人なりの文化なのだろう。


 俺たちはもう二人を見つければ、勝ちだ。


「あんな所に隠れられたら私には見つけられないよ。リュウはどうして分かったの?」


 別に嘘をついてもいいが嘘は絶対と言っていいほど後で、大きくなる。


「いや。勘だよね。水が透き通っている訳ではないからね。意図的に発見出来るはずがないもんね」


 勝手に納得してくれた、俺から何か説明する必要は無くなった。


「後は二人だね。僕も何処に隠れているか、分からないから。協力して捕まえよう」

「初めて、私が鬼でみんなを見つけることが出来るのかな」


 隠れている場所が普通じゃ考えもしない所だから、ドクも見つけることが出来なかったのだろう。残りの奴らも特性を生かして隠れているのだろう。面白い。


「とりあえず、歩こう。向こうからこっちに来ることは無いと思うし動いていれば見つかるよ」


 スキルを発動させとけば、水の中に潜られても木の上であろうと見つけられる。


 歩いているとスキルに反応があった。


「見つからないね。みんな私には分からない場所に隠れているから、普通じゃ分からないよね」


 スキルに反応があった所を見ても誰もいない。

 俺は何故見つからないか知っているが、どうやってドクに伝えたものか。


「じゃあ、行こうか」

「いや、少しここで休憩しよう」


  移動をされたら見つけさせる可能性が無くなる。

 

「この辺に座ろう」


 反応があった所の隣に座った。ドクに観察力があれば気付いてくれるはずだ。


「そういえばさ、トシがダンジョンに行ったときに追いかけていたけど、リュウは[龍の巣]にいるリザードマンを何体ぐらい倒したの?」


 喋りながら、ドクが俺の隣に座った。この歳の子供は男女のあまり意識をしていない。平気で隣を座ってくる。

 でも、座った所は悪くない。


「ざっと二〇体ぐらいかな」

「すごいね。私は一体も倒せていないんだ。他の竜人と比べて身体能力があまり高く無いからね」


 かくれんぼに近い鬼ごっこをしながら、ドクについて聞けそうだ。


「なんでドクは身体能力が他の竜人より低いの?」

「ああ、それはね……きゃ」


 ドクの座っていた地面がいきなり浮き上がった。タイミングが悪い。

 

「重たかった」


 橙色の髪の男の子だ。名前はケイだ。忘れていると思ったが覚えていて良かった。


「ちょっと! 私ってそんなに重たいのかな」

「いや、そんなことは無いですよ。ドクさん。土が重たかっただけです。はい」


 ケイが必死になって言い訳をしているが、もう手遅れだな。精々、怒られるといい。


「言い訳はいいよ。もうケイなんて知らない」


 ドクがそっぽを向いた。

 俺もこんな体験をしたことがあるのでケイの気持ちはよく分かる。


「ケイ。女性に体重と年齢について言うとかなり怒るから気にした方がいいよ」

「そうなのか。こんなこと初めてだから知らなかったんだ」


 アドバイスはするがフォローはしない。

 言い訳をするより素直に謝ったら良かったのにな。


 この後、ケイは正座をして、ドクに怒られていた。


「散々な目にあったよ。いつもはバレていないから、こんな事にはならなかったのに」


 土の中に隠れていたら普通は見つからないだろう。他の地面より少し盛り上がっている程度の違いしかないのだ。


「じゃあ、僕は戻っておくね。確か、あとはトシだけだったね。すぐに見つけてくれよ」


 スタート地点に帰っていった。


 ――――――


 日が暮れるまで探してみたが、トシを見つけることが出来なかった。

 スキルがあればすぐに見つかると思っていたが全然見つからなかった。


 時間的に俺たちの負けだろう。


「そろそろ、元の場所に戻るか」

「そうだね。トシも見つけたかったけど、全然分からなかったよ」


 みんなが居る所に戻った。


「灯台元暗しってよく言ったものだよね」


 盲点だった。トシもスタート地点にいた。スキルを使ってまで負けたのは悔しい。


「みんな、日が暮れて来たし、帰ろう」

「そうだね。私、もうお腹空いたよ」


 これで今日はお開きらしい。明日も一緒に遊べるだろうか。


 他の子と途中まで一緒に帰り、ユミナの家に帰宅した。


 こんな、のんびり遊ぶためにも魔族の件は解決しないとな。



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