二五話 議題
話しながら、歩いていると見覚えのある道になった。
出口に近づいている。
「そろそろ出口だけど、私に聞きたいこととか無い? 君の魔導を見れたし、大抵のことは答えるよ」
ダンジョンで出会った時は散々、気味が悪いと言っていたのに対応が変わったな。
怪しい気もするが聞きたいことはある。
「なんで、竜人が集まっているのか、気になります」
「あれ、ユミナから聞いていなかったの? ……これは、私から言っても同じかな」
会議をするためとは知っているが、議題は何だろうか?
「まず、この里に魔族の男が一人で来たんだ。そして、『この里について知られたくなかったら、クリスタルドラゴンの子孫を渡せ』と言った。それで、どうするかをみんなで集まって話そうっていうのが今回の議題って訳」
クリスタルドラゴン。ユミナの事だな。
俺の仲間に手を出した訳だ。目の前にいたら八つ裂きにしていたな。
「クソ。魔族は今どこにいる!」
他種族を脅して、協力させようとしているのだろう。
でも、いきなり来て、人を寄越せというのは気に入らない。
「そんなに慌てなくてもいいよ。あと、二年後にまた来るって言って帰って行ったから」
「あ、すいません。つい、興奮してしまいました」
魔族という単語もあるせいか、焦ってしまった。五百年前とは違って、魔族が良い種族になっている可能性もある。
とりあえず落ち着こう。
もし、クズだったとしても、身内や仲間に手を出ない限りは殺さない方向でいこう。
「それで、最終的にどうなる予定ですか」
「そうだね。私の予想なら、ユミナは嫁ぐと思うんだ」
ユミナは透明な鱗をしているので、クリスタルドラゴンの子孫だと、すぐに分かる。
そんな結果になるぐらいなら、俺が魔族を絶滅させてでも止めてやる。
しかし、面倒臭いのでなるべく、そうならない方がいい。
「そうなると個人的に嫌なんですが、別の解決方法ってありますかね」
「あるっていえば、あるけど……」
なるべく楽なこと方法だといいな。
「一つ目が里を別の場所に移す方法。二つ目に他の種族に助けを求める方法。この二つが可能性が高い方法だね」
一つ目の方法は逃げている気がするし、追いかけられたら意味がない。
二つ目の方法は見返りを求められるかもしれない。
どちらの作戦も反対だ。
「可能性が低いけど、三つ目にこのダンジョンを攻略することになるね。噂の範囲だけど、攻略したら、貰える【龍化】のスキルがあれば、魔族もびびると思うよ」
龍は竜の上の存在だ。
魔族も今の人族みたいに退化していれば当然、龍を恐れるだろう。
「ありがとう。ミラさん」
「そろそろ、ダンジョンの出口だよ」
ダンジョンを出てから何をしようか悩む。
ユミナに会いに行く手もあるが、何も言わずに去ってしまった子供たちの所にも行きたい。
「リュウは今から何処かに行く予定はあるかな」
「特には無いよ。どうしたの」
「この後、暇なら一緒に遊ばない?」
「いいよ。みんなと仲良くなれるといいな」
トシからの誘いもあるし、子供たちの所に行こう。
ユミナの方は夕方あたりに家に帰れば落ち着いて話も出来るだろう。
階段を上がりダンジョンを脱出した。
――――――
目の前には滝がある。
このダンジョンは滝によって隠されているが、よくこんな所にあるダンジョンを竜人が見つけたな。
「なんで、こんな所にあるダンジョンを見つけられたか不思議に思っている顔だね。確かにただの落水の裏なんて誰も確認なんてしないよね。でもね、この滝ではある訓練をするためには大切な場所なんだ」
心の中を読まれていい気はしないが聞く手間を省けたので良かった。
「それで、ある日、修行をやりに来た人が見つけたって訳。賢い君ならこのぐらいならこのぐらいの説明で大体分かったんじゃないかな」
何のための修行かは分からないが、竜人にとっては簡単に見つけることが出来るダンジョンらしい。
「ダンジョンが近くにあって楽しいと言う戦闘狂もいるけど、私としては得体の知れないのは嫌だからね。せめて、どんなスキルが手に入るかは知りたいね」
俺の方を向きながら言って来た。まるで「君には攻略出来るよね?」と言われている気分だ。
「そうですね。何層あるかも分からない訳ですから、不気味ですよね。今の僕の実力で何処まで行けるか想像も出来ません」
「君が本気を出せば、私が行った五層目までは簡単に行けそうだね」
確かに本気を出したら、行けないことも無いだろう。
「分かりませんね。。死なないように攻略出来たらいいですね」
「二年間は猶予があるんだから、のんびり攻略するといいよ」
どうしようか。
流石に二年間も家に帰らないのは難しい。仮にも公爵家の長男なので、捜索をされる可能性がある。迷惑を掛けたくない。
一か月が限度だろう。
滝を受けながら外に出た。
「私はまたダンジョンに入るから、二人は元の場所に戻って遊んでいてね」
ミラが再び滝の中に入った。
なんで、俺たちを出口に送ったかは知らないが、気にすることは無い。
「みんなの所に行こうよ。リュウもすぐに仲良くなれるよ」
「そうだといいね。僕だって戦い訳では無いからね」
今、考えると俺には同年齢の友達がいない。
別にコミュ障ではないが、住んでいる所が森のあたりでしかも公爵家。これだけ、友達になりにくい人は少ないはずだ。
種族が違うことに少し違和感があるがどうでもいい。
二人で田んぼへと走った。




