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二三話 友達

 少年を探すためにダンジョンの中に入ったが、見失ってしまった。

 仕方がないので、ダンジョンを探索しよう。


 早く魔物に会ってみたい。面白いことにこのダンジョンにはドラゴン系の魔物しか出ないらしい。


 五百年前のドラゴン系モンスターはなかなか強かった記憶がある。特に龍は馬鹿みたいに強かった。


 適当に歩いていると二足歩行のトカゲが現れた。この魔物はリザードマンという奴だ。

 生えている鱗が固そうだな。


 【アイテムボックス】入っている、鉄で作られた剣で切ろうとしても、逆に剣が折れるだろう。

 まあ、剣が駄目なら、魔法を使えばいい話だ。


「《水槍ウォーターランス》」


 俺の目の前に水で出来た槍が生成され、リザードマンの方に飛んで行き、貫通した。

 死体が地面に溶けるように消え、一枚の鱗がドロップした。


 鱗を回収して、ダンジョンの探索を再開した。


 ――――――


 十体ほどリザードマンを倒した所で目的を思い出した。


「探さないと」


 魔物を倒すことに夢中になってしまっていた。


 歩いて探してもいいが見つかる可能性は低い。そんな、面倒臭いことはしたくないので、頭痛を覚悟であるスキルを使った。


 今、使ったのは【魔力感知】だ。このスキルは今までも使っていたが、今回は感知する範囲を広くした。

 そのせいで、頭に大量の情報が流れ込んで来る。 


 脱水症状の時みたいに頭が痛くなる。今回は平面しか感知していないので、そこまで痛くはならなかった。地下や上空も調べるとこれとは比較にならない痛みが襲ってくる。


 魔物の魔力も感知してしまったが、二つだけ他とは違う魔力があったので、すぐに分かった。

【魔力感知】を解除した。痛みをずっと感じたい系の人間ではない。


 俺は二つの魔力があった所に向かって走った。


 ――――――


 たどり着いた場所は探していた少年とミラが居た。


「探したよ。僕は悪い人族ではないよ」


 説明は面倒臭いので、単刀直入に言った。今、考えると胡散臭い奴だな。


「あの気味の悪い子が来ちゃったね」


 七歳児に対して、気味が悪い。普通の子供なら傷ついているぞ。


「ミラさん。あいつをどうするの」

「何もしないよ。彼はユミナが連れて来ていたからね、こっちが実際に被害を受けないと何も手を出せないんだ。いくら気味が悪くても」


 それにしても、一般の人に何回も気味が悪いと言われると少し傷つくな。俺はミラに対してそこまで変なことをしたのだろうか?


「ひどいですね。気味が悪いって僕。そんな変ですか?」

「分かっていないのかな。私に初めて会った時にユミナの後ろに隠れたよね。その時は人見知りをする可愛い子かなと思って、からかうつもりで声を掛けたんだ」

「僕は普通に答えたと思うんですけど」

「そこだよ」


 あの時は別に変なことは言っていないはずだ。


「私の知っている限り、人の後ろに隠れる子は質問に答えずに目を合わさないように隠れるか、慌てたりするんだ。なのに君は普通に答えたよね」


 その程度で、気味が悪い子ってことになるのだろうか。多少の例外はあるだろう。


「それが竜人族の子ならまだ分かるんだけど、よりにもよって人族の子だからね。かなり怪しいと思ったんだ」


 ここでも種族差別のせいで、怪しまれてしまったらしい。変な時代になったものだ。


「この子からは話は聞いているよ、いくら蹴ってもダメージを負わないそうじゃないか、そのせいで余計に気味が悪くなったよ」

「ユミナお姉ちゃんに鍛えて貰っていますから、頑丈になっただけですよ」


 ユミナに歴史の勉強・・鍛えて(・・・)貰っているので、俺は何も嘘をついていない。


「この少年も私が鍛えているんだけどね。身体能力は竜人の方が上なのにこの子の攻撃が効かないって可笑しくない? 私がユミナに圧倒的に劣っているってことなのかな」


 俺は教育者になったことが無いので共感しずらいが、劣等感は共感できる。

 しかし、今はそんなことはどうでもいい。


「僕は特殊ですからね。それより、僕はそこの子と仲良くなりたいので話をしてもいいですか」

「いいよ。ほら、トシ」

「分かったよ。ミラさん」


 少年はトシという名前みたいだ。


「こんにちはトシ君。僕のこと覚えているかな」

「うん。あの時は蹴ってごめんなさい」

「いいよ」


 まず謝罪から入ったことから、俺を蹴ったことは反省しているだろう。それだけで、十分だ。

 反省と謝罪をしたら、もう気にしなくてもいい。


「じゃあ、仲良く出来るかな」

「僕はそれでもいいんだけど、ミラさんが君のことを変って言っていたし」


 大人の都合に合わせようとするのは、悪いことではない。しかし、友達関係では違う。


「君が良ければ僕はいいと思うんだ。僕は君と友達になりたいな」

「そうだよね。友達って大人の都合で決めるものではないよね」


 トシも納得してくれた。

 ここまで異常なまでにスムーズに説得が出来たが、なんでだろうか?


「君って、僕たちが暴力を奮っても僕たちに直接攻撃をしなかったでしょ。人族だからって、差別するのは可笑しいと思ったんだ」


 あの時、反撃をしなくて良かった。


 俺とトシはお互い近づいて握手を交わした。


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