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二十話 家掃除

 俺の目の前には時代劇で出てきそうな、日本風の田舎がある。


「テレビでしか見たことの無い景色が異世界で見られるとはな」


 田んぼには米らしき植物が育てられ、家の屋根は瓦で出来ている。


「そういえば、リュウ様は元は勇者様が住んでいる異世界の人でしたね。この里は他の勇者様が休息で来た時についでに文化を教えて下さって作られたんですよ」


 田舎出身の奴が召喚されたのだろう。都会に住んでいる奴が田んぼの用水路や瓦の作り方なんて知らないと思う。少なくとも俺は知らない。


「そうなのか、勇者ってこの里に入って良かったのか?」


 勇者時代には一度も竜人の里を訪れたことは無い。


「はい。魔王討伐に竜人族の誰かが関わっていたら入ることは可能でした。私が子供の時に勇者様が来ていたので、間違いないです」


 竜人にとってのの子供時代は何歳までかは知らないが、勇者は来ていたみたいだ。でも、俺には休息なんて贅沢な時間は無かったので行けなかったな。


「とりあえず、私の家に行きましょう。それと、リュウ様が竜人の里に入れた理由は門番に言ったことのままにしましょう」

「分かったよ。ユミナお姉ちゃん」


 俺には姉が今も前もいなかったので、「お姉ちゃん」なんて言ったことが無い。別に嫌ではないのでこのままでもいい。


「じゃあ、行きましょう」


 ユミナがさり気なく右手を俺の方に出して来た。どうやら手を繋ぎたいみたいだ。精神年齢が俺の判断を迷わしたが、手を掴んだ。


 手を繋いで歩き、ある一軒の家に着いた。その家は他の家と同じで、屋根が瓦で出来ている。大きさも他の家と同じぐらいだ。


「ここが私専用の家です。実家は違う所にあるんですけど、基本的に里に帰ってきたら、ここに滞在しますね」


 ユミナだけの家らしい。

 でも家って、作るのが大変な気がするが、この里は助け合いの精神でやっているのか、それとも、ユミナが相当、お金持ちなのか少し疑問に思った。


「さあ、入って下さい。後、知っていると思いますが、靴は脱いで上がってくださいね」

「お邪魔します」


 本当に元の世界に近い文化になっている。靴を履いたまま家に入るという文化を変えるのは大変だっただろう。俺なら面倒臭いので伝えなかった。

 他の転移者を褒めても、何も得られないな。


「しばらく帰っていなかったので、掃除をしないといけませんね」


 長い時間掃除されていなかったせいで、床に埃が溜まっていた。

 こんな時に最適な魔法を作ったことがある気がするが、何の魔法だったか思い出せない。


「私、掃除道具取ってきますから、待っておいて下さい」


 ユミナが他の部屋に行ったので、魔法を思い出そうと考えてみる。魔法のみを考えても、思い出せそうにないので、その魔法が出来たエピソードを思い出した。


 ――――――


 確か、あの魔法は俺が転移して、大体、三か月ほど経ったときに作った。

 賢者レイに認められて魔法の作り方を教えて貰った時だ。


「まずは何をしたいかを考えるのじゃ」


 あの時、俺はレイの部屋を見て、何も置かれていない代わりに一切掃除がされていない印象が強かった。


 そこで、俺は風を使って埃を飛ばすか、水で洗い流すかを考えた。

 しかし、風を使うと埃が舞ってしまい、水を使うと、本などが濡れる。どちらにせよ弱点がある。


 いくらか考えても思いつかないので、俺のアイデアとその欠点をレイに相談した。


「それなら、両方を使ってみたらどうなのじゃ?」


 レイにアドバイスされたように両方使う考えで想像をして実験を何回かした。

 それが、異世界に来て、初めて作ったオリジナルの魔法だ。


 ――――――


 魔法を思い出した。


 イメージは水で埃を湿らして、風によって、集める感じだ。後はネーミングセンスの無い詠唱をするだけだ。


「《部屋掃除ルームクリーナ》」


 部屋の埃が湿って、色が灰色の方に変わった。そして、部屋に落ちてあった埃が生き物みたいに集まって一つの山になった。

 後は埃を外に出すだけで掃除は完了だ。


「リュウ様。いつの間に掃除をされたのですか」


 ユミナが掃除道具を持って来ていた。ホウキもあるが完全に無駄になってしまった。


「魔法を使ったんだ」

「こんな魔法聞いたことが無いですけど」

「俺がこの世界に来て、初めて開発した魔法で、誰にも教えていないから聞いたことは無くて当然だ」


 俺が作って、レイ以外には教えてないので、誰も知らない魔法のはずだ。


「後は集めるだけですね。その魔法があれば、掃除道具はは要らないですね」

「そうでもないぞ。この魔法は五百年前でも、使える人はごく少数レベルの難易度らしいから、結局は掃除道具を使うことになるぞ」


 俺以外なら普通に掃除をした方が早い。


「他の部屋もお願い出来ますか?」

「いいぞ、でも埃の回収は頼む」


 俺はユミナの家の中を適当に回り、魔法を使った。


「これで掃除は終わりですね。前は一室しか掃除して無かったです。それでも大変でしたが、今回は早く綺麗に出来ました」

「それは良かった。便利な魔法は結構作った気がするから、面倒臭いことがあったら聞いてくれ」


 俺の性格上、少しでも面倒臭いを楽を変える魔法を多く開発している。

 多すぎて忘れている魔法もあるがその時は昔を思い出すことも出来るので、なるべく思い出したい。


「しばらくはのんびりして貰っても構いません。後、他の竜人がいる時はあの設定でお願いします。居ない時でも、バレる可能性を減らすために今日位はやって頂けるとありがたいです」

「分かった。ユミナお姉ちゃん。それでいつ頃、移動するの?」


 いつもは会議があると聞いたが、何時いつからあるのだろうか?

 あと、口調を急に変えるのが意外と難しい。


「そうですね、明日あたりに帰って来たことを報告しに行きましょう」

「明日でいいの?」

「大丈夫ですよ。竜人は人と比べて時間に対する考えが楽観的ですからね」


 龍人のジョンは一分一秒を大切にしていたが、他の竜人は違うらしい。

 確かに、長い寿命の種族にとっては、時間なんてあっという間に通りすぎるのだろう。


「今日は部屋で空を飛んだ疲れを癒したいと思います」

「じゃあ、もう布団とかを出しましょう」

「観光は明日報告をした後にしましょうね」


 正直、今すぐ観光をしたしたいが、ユミナが疲れているならしょうがない。


 布団を出してユミナに竜人の里に何があるかを聞いたりして、情報収集と雑談をした。


 楽しく対話をしていたら、あっという間に夜になっていた。

 今日は久しぶりに夜になってすぐに睡眠をとった。明日は竜人の里をじっくり見学しよう。



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