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十五話 盗賊

 ダンジョンをユミナと攻略を初めてから、十五日目、今回で五回目のアタックになる。


「今日は十層に行けるかな」


 今、俺たちは九層目の真ん中あたりにいる。六層目までは、次の階層へ行く階段は近くにあったが、七層目から、遠くにあり、時間が掛った。


「そうですね。この調子で行けば十層まで行けると思います」


 でも、気になることがある。俺達はまだ、冒険者に出合っていない。[嫉妬ジェラシー]は人が少ないダンジョンとは言っても、一人もいないのはおかしい気がする。


 俺たちにとっては都合がいいので、あまり、気にしていない。


「では、行きましょうか、スキル発動【最適ルート】」


 いつも道理に進むこと三分、俺たちは魔物ではなく。三人組の男と出会った。


「おう、女と子供がなんで、ダンジョンにいるんだ」

「魔物だけがダンジョンの脅威だと思っているんじゃないか」

「そうだな。ここで、俺たちの恐ろしさを体感させようぜ」


 会話がすべて、聞こえているが、こいつらは何なのだろうか、冒険者組合の時みたいな意外と優しい人なのだろうか。いや、雰囲気からしてそれは無い。


「おい。ガキ、そこの女を寄越せば、命だけは助けてやる」

「だが、断る」

 

 もし、力づくで来るなら、あいつ等をクズと判断して、俺もそれ相応の抵抗をさせてもらう。


「へ、まだ俺たちの怖さを知らないんだな。よし、二人でやれ」


 今、命令した奴がリーダー格だな。

 左右にいる男たちが、こちらにやってきた。


「ガキのくせにこんなところ来やがって。恨むなら、ここまで、来た自分を恨むんだな」

「さっき、渡していれば半殺しで済んだのにな」


 男たちがそれぞれの武器を出してきた。左にいた男は斧を右にいる男は槍を持っている。

 どうやら、本当に戦うみたいだ。


「スキル発動【腕力きょ――ぐは」


 誰が殺し合いで相手のスキルの発動を待ってやるか。

 無詠唱で《身体能力強化》発動し、槍を持っている男の顔をぶん殴った。


「よくも仲間をやりやがったな。くらいやがれ」


 斧男が俺に斧を下ろして来た。油断をしていた訳ではないが、斧を下ろさせるまで、気づかなかった。

 多分、レベル差があるせいだろう。

 

 俺はすぐさま、【アイテムボックス】の中から、剣を取り出して、斧を受け流すように斜めに構える。

 剣を折られるとまた入手するのは面倒臭いので受け流した。

 

 剣と斧が当たる。手に衝撃が来た瞬間に俺は横に逸れた。斧が地面に当たり弾かれる。


「その剣をどこから出しやがった」

「さあ、どこからでしょうかね? ……お前の足りない脳みそで考えな」


 だんだん楽しくなって来た。魔物やモンスターを倒す時とはまた違う感覚だ。

 クズ相手には俺の心は自然と痛まない。


「今なら、そこに倒れているお仲間の命だけで、許してやるよ。ちなみに俺は人を殺すことに何の躊躇いも無いからな」

「ガキが! 殺してやる」


 挑発は想像以上に効いたみたいだ。斧を横に振ってが、怒っているせいか、力任せに振っている。

 この程度なら、姿勢を低くするだけで、簡単に躱せる。


「甘かったな。お前の敗因は相手の実力をしっかり見られなかったことだ」


 斧が通りすぎたと同時に相手の顔にジャンプアッパーをした。《身体能力強化》をしているお陰もあり、一発で気絶させた。


「後はお前だけだが、どうするか。逃げたかったら逃げればいい。でも、その場合、この二人は貰っていく」


 俺は、残っているリーダー格の奴に警告をした。逃がす気はないが、もしも仲間がいた場合、報復とかされると面倒臭い。


「舐めやがって、酷い目に合わせてやる!」


 男が俺たちとは反対方向に走って行った。予想通り、仲間がいるみたいだ。


 クウで転移すればここは逃げられるが、次に来た時に誰かがクズに襲われていることを想像すると、嫌な気持ちになるので、殺そう。

 何より、楽しいからな。


「ユミナ。逃げた奴を尾行する。アジトを見つけ出して、潰す」

「分かりました。ここに寝ている男どもはどうしますか」


 斧男と槍男は俺を殺そうとしたクズだ。レベルの糧になるしか道は無い。


「俺がこいつらは殺す。後、斧と槍は回収しよう」

「分かりました。槍は少し遠くにあるので、私が取りに行ってきます」


 槍は男を殴った時に反動で飛ばされている。槍はユミナに任して、俺は斧男の所に行き斧を拾い、斧を振りかぶった。


 運良く、斧男が目を覚ました。

 

「おい、ガキ! まさか、俺を殺す気なのか、人じゃない。化け物め」


 斧男の首が空を舞った。


「お前が言えたことではないだろ」


 クズが何を言おうが俺の心には響かない。むしろ、楽しい気分になる。


 人を殴るためには殴られる覚悟が必要と言われるように、人が殺しをするときは殺される覚悟をする。

 しかも、あいつらクズは自分の快楽の為に殺しをする。


 相手がクズなら殺すのは簡単だ。

 

 ユミナが槍男の首根っこを掴んでやって来た。


「リュウ様。槍と人間を持ってきました」

「ありがとう」


 槍男も目覚めていた。


「なあ。助けてくれよ。俺はあの逃げた奴に命令されただけなんだ」


 命乞いをして来た。この状態の相手からは基本なんでも聞き出せる。利用させてもらう。


「俺が聞く質問に答えてくれたら、返答によっては生かしてやる」

「はい。分かりました。ですから、命だけは」


 俺が心の中で決めている条件を満たしていれば殺さないでおこう。


「まず、アジトとやらのの場所を後で案内出来るか」

「行けます」


 これで、逃げた男を急いで追いかけなくてもよくなった。


「お前たちは何をやっているんだ」

「盗賊です。このダンジョンは人があまり来ないので、いい拠点なので」


 勝手に情報を吐いてくれた。まあ、クズどもの集まりがあるのだろう。


「アジトで人を襲った事のある奴はどれぐらいいるか」

「俺たちは人を襲って、逃げるためにあのアジトに移っています。なので、全員、誰かを襲っているはずです」


 良かった。これで、全員殺しても大丈夫そうだ。


「最後だ。命令されていると言ったが、人質がいるのか」

「いや、そんなことは無いです」


 良かった。人質がいて、しょうがなくなら、少し躊躇ってしまいそうだった。


「よし、アジトへ案内しろ」

「はい。分かりました」


 槍は、【アイテムボックス】の中に入れ、槍男に歩かせる。

 歩き続けて、約六分ほどだろうか。男どものうるさい声が聞こえてきた。


「あの人たちの奥にアジトがあります。言われたことはやったんで命だけは」

「分かった。アジトを潰したら――」

「今まで舐めたマネしてくれたな。おーい!ここにガキと美人の女がいるぞ」


 槍男が走り出した。

 まあ、こうなるのは予め、分かっていた。


 逃げる男に向かって、斧を投げた。


「ぐは」


 斧が槍男の背中に刺さり、苦しそうにしている。斧を抜き取り、首に向かって下ろした。


 叫んでくれたお陰で、俺たちの目の前にはすでに男たちが群がっていた。


「あいつだ。俺たちに喧嘩を売ったガキは」


 あのリーダー格の男がいた。俺たち()喧嘩を売っただと。ふざけるな!

 俺は冤罪うそを掛けられるのは大嫌いだ。


 とりあえず、挑発も兼ねて、斧男と槍男の死体を【アイテムボックス】から出して、投げつけた。


「この顔は、俺の仲間じゃないか。クソ。みんなで掛かればあんなガキ程度」

「おい。早く行こうぜ。あのガキさえ殺せば女が手に入るんだろう」

「はい。でも、あのガキは殺さずに俺にくれませんか」


 小さい声で会話をしているようだが俺には聞こえている。こいつらは確かにクズらしい。

 三人の中で、リーダーの奴は集団になると下っ端みたいだ。いい気味だな。


「ユミナ。この人数相手は、俺一人だとレベル的に厳しいから、一緒に戦ってくれ」

「了解しました。私もあんなクズどもにはもう見られたくありません」


 ここに来るまでにあまり魔物を倒していないので、レベルが上がっていない。

 今回で大幅に上がりそうだ。


 俺たちは盗賊とは会話を一切せずに攻めていった。


 ――――――


 何分が経っただろうか。久しぶりに対集団戦で暴れたので集中してしまった。


「ひい! 近づくな。化け物」


 今日はよく化け物と言われてしまうな。何とも思わないが、別に俺に心が無いわけではない。


 ただ、相手がクズなので、心が痛まないだけだ。


 命乞いをした奴を殺し、周りを見た。ダンジョンの床には死体が散らばっていたが、血はダンジョンの壁には残っていない。


 今、立っているのは俺とユミナだけだ。


「死体はどうしましょうか」

「死体は要らない。捨てておこう。でも、武器は回収をしよう」


 死体を持っていても、しょうがないので、武器だけを貰っておく。


 武器を回収しているときに、面白い光景を見た。死体がダンジョンに吸い込まれるように消えた。後片付けが楽だ。


 武器も回収し、アジトへ向かった。


 アジトらしき所にはテントがいくつも張られていた。しかし、人気は全然ない。俺たちが倒した分が全員だったのだろう。


「冒険者ですけど。誰かいませんかー」


 おびき寄せるために声を出してみたが、誰も反応しない。一応、《身体能力強化》を耳に発動させ、聴覚を強化したが誰もいないみたいだ。


「誰もいないな」

「はい。いないようですね」


 誰もいないと確認したので、俺はステータスカードのレベルを見た。


 《レベル》十二


 まあまあだと思う。正直、もっと上がるかと思ったが予想より、少なかった。


「リュウ様。ダンジョン攻略はどうなさいますか」


 このまま、探索を続けてもいいが、疲れたので休もう。


「いや、帰ろう。血が服の染みにならないうちに帰ろう」

「分かりました」


 クウに頼んで、移動をした。


「私もこの移動には慣れてきました」


 ユミナもこの移動に慣れたらしい。前まではかなり酔っていたが慣れたみたいだ。


「服を洗濯してきます。リュウ様服を着替えてください」


 言われた通りに服を着替えた。


「あ、俺も洗濯を手伝うよ」


 仲間であっても頼りすぎはよくないと思うので、洗濯ぐらいは手伝おうと思う。


「ありがとうございます。では、ついて来てください」


 俺はユミナに連れられて、部屋を移動した。


「着替えますので、別の方を向いてくださると」


 ここは更衣室らしい。実はすごい心の中では慌てているが、平穏を装うのは大変だ。見た目は六歳児なので堂々としたほうがいい。


「もう着替えたのでいいですよ」


 着替えが早い気もするがまあ、いいだろう。

 

 俺とユミナは今日、現れた盗賊の話をしながら、血で汚れた服を洗った。



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