十三話 証明
俺は、ユミナに自分が五百年前の勇者だと明かした。
「リュウ様は確かにお強いですが、流石にあの勇者様と言われても信じられません」
疑われるのは、分かっていた。後は証明して、信じてもらおう。
でも、どうやって証明しようか決めていない。
「どうしたら、信じてくれるのか」
勝手に変なことをするよりは、相手に提示された条件をやったほうがいい。
「そうですね。リュウ様が読んだことのある絵本で『勇者は仲間が出来ることは基本出来る化け物』と書いてありました。出来る限りでもいいので、やって欲しいです」
俺が濡らしまくった一言多い絵本のマネをしろというわけか。魔法系は大体できるがチートなスキルが必要になる技は出来ない。
しかし、魔法に関することなら、大抵できる。
「分かった。じゃあ、まずは青い火を出そう」
青い火は、賢者が使えた力と書いてあった。正直、原理を知っていて、魔力の操作が上手ければ誰にでも出すことが出来る。
やり方は簡単だ。火魔法で火を出し、風魔法で酸素を投入する。これだけだ。今回は《火球》に酸素を入れて魔法にする。
「《青火球》」
俺の目の前に青い火の玉が現れ、ダンジョンの通路を進み、地面に当たり弾けた。地面は石で出来ているにも関わらず、少しだけ溶けていた。
この魔法の名前はレイと意見を出し合い、新しく作った。
「ダンジョンの地面が溶けています。まさか、ここまでの威力だとは驚きです」
どうやら、驚いてくれたみたいだ。でも、俺の本気はこんなものではない。
「次に行こうか。次はこの場から、消えてみよう」
消えるといっても、見えなくなるだけだ。これは、ユミナのお父さんのジョンが使っていた力だ。今回も原理は簡単だ。反射する光を捻じ曲げるだけだ。
「《透明化》」
これで、俺は消えられたはずだ。俺から見ても変わっていることが分からない。聞いてみよう。
「ユミナ。俺のこと見えるか」
「いいえ、いきなり、消えました」
よし、消えられたみたいだ。この魔法は魔力を多く消費するので、長時間は維持できない。しかし、折角なので、ユミナの横腹を突こう。
子供みたいな、いたずらだが、今の俺の肉体年齢は六歳だから、子供らしくても何も問題は無い。
ユミナにこっそりと近づいて、横腹を突いた。俺の指に硬いものが当たる感触がした瞬間、俺はダンジョンの壁に思い切り背中を打っていた。
口から、血が出てきた。内臓にダメージが入っているみたいだ。
「げほ。な、何が起こったんだ」
「すみません。リュウ様。私が殴ってしまいました」
ユミナが駆け寄ってきた。どうやら、俺は殴られたみたいだ。
「私の横腹には鱗があるんです。いつもそこを触られないように敏感にしていて、すいませんでした」
確かに龍人族は五百年前でも数が少なく、欲深い人間にバレてしまうと誘拐され、どんなことをされるか、分からない。だから、龍人族である証の鱗を触られると困るな。
泣きそうになりながら謝っているが、今回は俺が九割以上悪い。本来、先に謝るべきなのは俺だ。
「こちらこそ、すまなかった。丁度いい。回復魔法を使おう」
口から、血が出てくるほど、ダメージを受けた。ついでに回復しよう。でも、勇者の時は【超高速再生】があったので、自分に使ったことが無い。
細胞が、傷口を塞ぐ所を頭の中でイメージをする。
「《回復》」
体から、白い光が立ち込めると同時に体が楽になっていく、さっきまで体のいろんな所が痛かったが嘘みたいに消えた。
後は剣聖ガイゼルの力に似た能力を見せないといけないな。
「次は剣聖の—―」
「もう、十分です! 剣聖ガイゼル様の力はもう、見させてもらっています」
岩を手刀で切ったり、湖を剣で真っ二つにしたことは転生してから、一度も無いが、いいのだろうか。
「リュウ様が三歳の時から、今の剣聖ロイ様と模擬戦していた所を見ています。ロイ様は変な腕輪を着けて弱体化なさっても、剣聖と言われるだけの剣術があります。それなのに、毎回スキルを使ってリュウ様に勝っています」
どうやら、手刀で岩を切らなくてもいいようだ。勇者の時なら岩の大きさにもよるが簡単に出来たが、今の体だと、後で手が痛くなりそうだった。
「良かった。なら、俺が勇者だったことを認めてくれるか」
「認めます。でも、両親にも喋っていないのになんで、私に喋ったんですか? 」
転生者であることですら珍しいのに、更に五百年前にいた。最強と言われた勇者についてだ。そういえばクウにすら言っていなかったな。
「ユミルの秘密を知ったんだ。俺の秘密や力を明かすのも当然の対価だし、ジョンの娘に出会えたんだ。俺が元の世界に帰還してから、どんなことをしていたかも気になるからな」
「そうなのですね。あと、質問いいですか」
なんの質問だろうか。赤ん坊での出来事以外は答えよう。あの抱きつきは呼吸は苦しかったが、男としてはなかなか出来ない体験だった。
「いいよ。俺に答えられる範囲なら答える」
「ありがとうございます。最近は他種族を差別する風潮がありますが、リュウ様は私を差別しますか?」
何を聞いてくるかと思ったら、そんなことか、いや、そんなことではないな。今の時代の人たちにとっては大切なことか。
「俺は他種族を差別はする気はない。例え魔族であってもな。しかし、クズばっかりの種族がいれば別だ」
「分かりました。では、今まで通り私はリュウ様の専属メイドのユミナとして働きます」
お互いの表の立場は変わらないが秘密を知った同士なので、仲良く出来そうだ。
「これからもよろしくなユミナ」
「はい。リュウ様」
俺とユミナはダンジョンの中でお互いを知り、理解する。
立場は変わりないが、より信頼を築けたと感じた。




