十二話 告白
朝食を食べ終わり、俺は自分の部屋にユミナと一緒にいた。
普段は勉強を教えてもらうためだが、今日はダンジョンについての話がある。
「リュウ様。今日はどの教科をなさいますか?」
正直悩んでいる。ユミナとダンジョンに行けば、道に迷わずに次の層に行ける。
でも、俺が魔法をを明かさないともしもの時に後悔をする事になる。
「質問をしてもいい?」
「はい。いいですよ」
「ユミナ。今から話すことを家族を含めて誰にも言わないと誓えるか?」
「もちろんです。私の雇い主はロイ様ですが、今はリュウ様の専属なので、秘密は洩らしません」
正直。不安だが、いざとなったらレイと協力して、ユミナの記憶を消せばいい。
「今俺は、ダンジョン[嫉妬]を攻略しようとしている。しかし、次の層への階段の場所を探すのに時間が掛っている。そこで、ユミナの力を借りたいんだ」
「ダンジョンって、この近くにありましたっけ」
ここからが、正念場だ。自分の能力を他人に話すのは決意がいる。
「そのダンジョンは王都にある。移動は空間を司る精霊クウがやってくれる」
白い球。クウが俺の心臓あたりから出した。
「他の力の説明はダンジョンに行ってからやる。ついて行ってくれるか」
「リュウ様がやりたいようにどうぞ、でも、命の危険があった場合はすぐに帰ってくださいね」
ユミナが了承をした。俺が言うのはおかしいが、こんな変な事を信じていいのだろうか?
『クウ。俺たち二人を[嫉妬]の二層目の階段まで頼む』
『分かりました。《長距離転移》
明るい石の壁がある。ダンジョンに着いたみたいだ。
「え、さっきまで、リュウ様の家だったのに一瞬にして洞窟の中に移動しました」
ユミナが少しパニックを起こしている。
しかし、事前に伝えておいたので酷くは慌ててない。
「三層目まで行けるか?」
「スキル発動【最適ルート】。リュウ様。大丈夫です。ついて来てください」
ユミナが俺の前を進んで行く。俺はまだ隠している能力を説明していないのに、前を歩いてくれている。相当、俺のことを信用してくれているみたいだ。
俺は奇襲されないように【魔力感知】を使用しながらついて行った。
三分間、歩いた位にゴブリンが現れた。
「ここは任せろ」
俺はユミナの前に出た。そして、昨日の様にゴブリンの首を魔法で切った。ゴブリンから血が噴き出し、死んだ。
「リュウ様。今のはどうやったのでしょうか」
「今のは魔法というものだ。簡単に説明すれば、魔導を精霊なしで使う力だ」
はぐらかしても、良かったかもしれないが、自分のことを信用してくれている人に対して、嘘を言うのはクズのやることだ。
ユミナが口を押え何かを言いながら震えていた。どうしてだろうか。耳に意識を集中させ、《身体強化》を使い、聴力を上げて、ユミナが言っていることを聞いてみた。
「魔法って、私が若い頃にはもう廃れて、今はもう人間は使えないはずなのに、なんで、まだ、六歳のリュウ様が使えるの? しかも、無詠唱。赤ちゃんの時から見ていたから魔族の可能性も無い。もしかしたら、転生者なのかしら」
どうやら、ユミナにも隠しごとがあるみたいだ。このダンジョンは基本誰も来ないので、一気に聞いてみよう。俺に聞こえないであろう声でも、俺のことを様付けで呼んでいるので、敵対することはないだろう。
「ユミナ。どうしたんだ。確かに魔法は今の人間は使えない。しかし、昔、しかも、五百年前の人間ならどうだ」
「まさか、リュウ様は五百年前から来たとでも言うのですか」
「まあ、それに近いな」
相手の秘密を知るためには、まず、こちらから秘密を少し、打ち明けると相手の警戒が薄れスムーズに教えてくれる。
「勇者がいる世界から転生は聞いたことがあると思うが、俺は少し違うぞ」
「まさか、時代が違うだけの人が転生してくるとは、長い生の中でも初めて聞きますね」
だんだん。相手の警戒が薄くなっていっている。このまま、話してくれるとありがたいが、そうはいかないだろうな。少し話を変えよう。
「実を言うと五百年前から生きている俺の知り合いはいるぞ」
「そんな、人間なんていないはずです。五百年前と言えば、私のお父さんが最強と言われた勇者様と協力して、魔王を倒した時代じゃないですか」
かなり、情報を出してくれた。ユミナはどうやら、人族ではない様だ。そして、勇者の時、俺を助けてくれた仲間の一人の娘らしい。
「そう、慌てるなよ。そいつは、五百年前に賢者と言われた奴でな、ユミナのお父さんと一緒戦っていた人なんだ」
「もしかして、レイ・マーティン様ですか。そんな、あの方はお父さんより先に世間から消えたじゃないのですか」
正直、ここまで、食いついてくるとは思ってもいなかった。でも、そのおかげでヒートアップしてくれている。本題に入るか。
「俺は、勇者のパーティーの勇者以外とは仲が良かった。だから、ユミナのお父さんが、ジョン・ドランだと思ったんだが、合っているか?」
「はい。なんで、分かったのですか。それと勇者様のパーティーと仲良く出来た存在なんて、限られた人間しかいないはずです」
ユミナの秘密を知ることが出来たので、こちらの秘密も言おう。正直、言う必要はないだろうが、相手にだけ、明かさせて、自分は秘密にすることは、敵相手ならいいが、仲間になる相手にはしたくない。
「俺は、五百年前、勇者と言われた存在だったんだ」




