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十一話 帰宅そしてダンジョン

 俺とロイは一時間ほど銭湯の受付の近くにあるイスに座って女性陣を待った。俺たちも長風呂をした気がするがもっと長いらしい。


 体感で三十分が経ったときに、女性二人が出てきた。クレアとメイドだ。二人は楽しそうに会話しながら、歩いている。

 女性は話し出すと止まらない生き物だと俺は思っている。


「よし、みんな揃ったな帰ろう」


 俺たちは帰るために御者が指さしていた宿に向かった。俺たちが歩いて行っている間にメイドは小走りしながら、宿へ行っていた。


 俺たちが宿に着くと宿の前に馬車があった。どうやら、メイドが伝えていたみたいだ。そのまま、俺たちは馬車に乗った。


 帰る時には太陽が赤くなっていた。正直、ここまで濃厚な一日になるとは思ってもいなかった。でも、どれも苦痛ではなく、楽しいの部類に入るタイプの出来事だった。


 ――――――


「リュウ。起きろ、もう家だぞ」


 ロイの声がする。目を開けるともう家に着いていた。疲れがあるせいか寝てしまっていたみたいだ。外はもう暗い。


 俺たちは馬車を降り、家の中に入った。俺は自分の部屋に戻った。いつもなら、もう寝てもいい時間だが一度目が覚めるとなかなか、寝られなくなってしまう。


 明日あたりに行こうと予定していたが、今からダンジョンに行こうと思う。ここから王都まで結構距離があるが今の俺にはクウがいる。


 『クウ。[嫉妬ジェラシー]の二層目への階段の近くまで行けるか』

 『はい。行けますが、今日の疲労が残っている状態で行くのですか』


 クウが心配してくれているが、俺が勇者だった時は、一日中戦ってから一時間しか寝ずにまた戦うなんて、日常茶飯事だったので、今日の疲労なんて、そこまで酷くはない。


 『馬車の中で睡眠をして、大体体力は回復しているから大丈夫だ』

 『リュウが行きたければ僕は止める気は無いですけどね。それでは飛ばします。《長距離転移ロングワープ》』


 俺は一瞬にして、明るい洞窟の中に到着していた。[嫉妬ジェラシー]の中だ。精霊が多数いるよりクウ一体がいたほうが便利だし、頼りになる。


「よし、十層目まで行ってきますか」


 ここからは誰も見ていないので魔法を使っていこう。剣を使ってもいいが、普通の剣は使いすぎるとすぐに刃こぼれを起こしそうなので、使わない。


 二層目への階段を降り。少し歩くと、緑色の肌をした子供ぐらいの大きさのゴブリンが錆びた短剣を持って立っていた。こいつも五百年前と変わっていない。


 ゴブリンの首に鋭い風が吹くイメージをする。


「《風刃ウインドカッター》」


 俺が詠唱をした瞬間。ゴブリンの首から濃い緑色の血が吹き出てきた。この世界に来て、初めて切った時は返り血を浴びてしまったが今回は浴びずに済んだ。


 ゴブリンは二十秒ほど苦しむ素振りを見せてから、地面に吸い込まれるように消えた。ゴブリンのいたところにはゴブリンの持っていた錆びた短剣が置いてあった。


 【アイテムボックス】の中に短剣を入れておいた。必要ではないが、いつか役に立つかも知れないので一応持っておく。


 ダンジョンの魔物は剝ぎ取らなくていい。勝手に消えてアイテムをドロップしてくれる。昔に比べたら、楽だ。


 この後、探索をしながらゴブリンを五体ほど倒した。すると、体が温かくなった。この感覚はレベルが上がった時の感覚だ。俺はステータスカードを見た。


 ≪レベル≫ 二


 ≪体力≫ 二五〇

 ≪魔力≫ 一〇〇五〇


 予想通りレベルが上がっていた。体力も魔力も五〇ほど上がっている。ちなみにレベルは上に行くほど上げ難くなるが、その分ステータスが上がり幅が大きくなる。


 一時間ほどの探索では、三層目への階段は見つからなかった。しかし、レベルアップをしてキリが良いのでもう帰る。


 今回の探索の反省は俺がダンジョンの道を知らなかった事だろう。でも、どうしたら、道を知ることが出来るのだろうか。

 

 ダンジョンの中で考えごとをするのは不意打ちをされる可能性もあるので止めておいた。


 『クウ。帰りを頼む』

 『分かりました《長距離転移ロングワープ》』


 俺はまた一瞬にして自分の部屋に転移をしていた。俺はすぐさまベットに飛び込んで横たわった。ベットは高級なのか柔らかく気持ちいい。


 目を瞑ってダンジョンの解決策を考える。


「ロイについて行って貰いたいが忙しいだろうな」


 領地を持っていないとは言え、貴族としての仕事があるみたいだ。ちなみに俺は貴族になる予定は無いのでどんな仕事をしているかは知らない。 


「ルートが分かるスキルがあればいいのにな」


 ダンジョンに関連するスキルなんて、俺は知らないので習得のしようがない。誰か俺の魔法を見ても秘密に出来る人で相談できる人はいないものかと思う。


 結局、いい考えが思いつかないまま俺は眠りについた。


 ――――――


「リュウ様起きて下さい。朝食の時間です」


 ユミナの声がして、目が覚めた。いつもは起こされる前に自分で起きているが疲れているせいか寝坊をしてしまったらしい。


「ありがとうユミナ。すぐに着替えて行かないと」


 俺が服を着替えようとクローゼットに向かおうと体を起こした時。


「お着替えはこちらにあります。どうぞ」


 ユミナが服を渡してくれた。いつもは俺が勝手に着替えているのにこんなに気が使えるなんて、思ってもいなかった。


「ありがとう」

「早く着替えて、行きましょう」


 俺はベットの上で服を脱ぎ、ユミナに渡された服を着た。何故かは分からないが、俺が着たいと思える服だった。


「ユミナはダンジョンに関するスキル持っている?」

「一応、道案内専用の【最適ルート】を持っていますが、どうしましたか」


 ダメ元で聞いてみたが、本当に持っているとは思わなかった。


「朝食を食べ終わったらここの部屋に来て貰ってもいいかな」

「もちろんです。私はリュウ様の専属メイドですから」


  今は時間が無いので後で話そう。


「丁度いい機会なので、私のスキルで食堂まで行きましょう。スキル発動【最適ルート】。リュウ様ついて来てください」


 どうやら、日常生活でも使えるスキルらしい。寄り道をしない場合の道を通って、食堂に着いた。


「それではどうぞ」


 ユミナがドアを開けてくれたので、俺はそのまま部屋の中に入った。


「リュウ今日も寝坊か、疲れているとはいえ、生活リズムを崩すと冒険者になれないぞ」


 昨日とは理由が違うが確かに生活リズムが崩れていることは確かだ」

 

「ご指摘。ありがとうございます。以後気を付け――」

「そんなことより、早く食べましょうよ」


 シュウが待ちきれないと言って来た。せめて、「ます」というまで待って欲しかった。


「確かにな、もう食べようか、いただきます」

 

 みんなが食べて始めた。俺も朝食を食べようと箸を持った。しかし俺は料理に手を付けることが出来なかった。


「兄さん。ステータスどうだったの」


 シュウが質問をしてきた。この国では相手のステータスを聞くのはあまりいいとされていないが、知らない相手には通用しそうにない。あやふやに返しておくか。


「そうだな、俺のステータスのスキルの個数は五つだったな。後、精霊数は一体だけだった」

 

 スキルの数はこの時代の平均の個数を言っておいた。俺は家族であってもなるべく手の内を晒したくない。


「兄さまは精霊の数が一体だけなのですね。でも、スキルがすごいのでしょう。教えてくださいませんか?」


 次はシーが食いついてきた。

 嘘を言ってもいいが、この時代にあるスキルがよく分からない。無いスキルを言うと後でばれる可能性がある。


「そこまでは言えないな。知りたかったら、模擬戦で使わしてみろ」


 シュウ相手だとスキルを使うことはないので、教える事は無いだろう。あと、シーはあまり模擬戦が好きではないらしい。

 結局、俺は何も教えなくてもいい。


「よし、俺が兄さんにスキルを使わせるまで強くなってやる。でも、今日は書斎で勉強をしないといけないんだった」 

 

 この家は三日に一度は勉強の日がある。ちなみに家庭教師などは居らず、分からないところは専属メイドに聞きながら勉強をする。


 質問も終わったようで、静かになった。俺はやっと料理を食べることができた。


 シュウたちが勉強ということは、俺も、勉強をする日だな。



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