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九十話 敗北

 自由を求めて行動するためには自分が不自由じゃないといけない。


 そもそも、自由過ぎるということは『暇』と変わりがない。

 こんな単純な事に気づけなかったとは。


 弟子を作った事により、完全な自由が無い生活を二か月続いた。

 あいつらは何かあるたびに俺や仲間達に報告、相談をしてきて気が休まる時は少なかった。


 この二か月はそれなりに楽しい生活だった。

 まるで、親友と話している時の気分にそっくりで生活に色が入っていた。


「じゃあ、各自送るぞ」


 今、湖の前に弟子と仲間が集まっている。

 

 弟子たちは前に着ていた汚れている服ではなく、複数の魔物の素材を合成して作られた俺でも容易に貫通が出来ないような生地で作られた服を着ている。

 核爆弾を受けても傷一つ付かない服は各自でデザインしているためそれぞれ個性があって面白い。


 可愛さは弟子たちは元から持っているため、服は飾りに近い。


 それにしても、弟子たちの目は綺麗に輝いている。初めて出会った時はかなり汚れていた目がここまで変わると育てた自分たちまで嬉しくなる。


 弟子たちを一斉に各種族の集落に送った。


 賑やかな七人が消えていった。これでしばらくはのんびり出来るだろう。

 いや、まだやらないといけない事がある。


「ソーフスさん。復讐に行きましょう」


 元奴隷商人のソーフスさん。彼は弟子たちに商売に関することを伝えてくれた。

 恩には恩で返す事は人間としての意識だろう。


「ありがとうございます」


 転移でとある場所に移動する。


 ――――――


 光が一切通らない部屋に到着した。

 魔法で光を発生させ、部屋全体を明るくする。


「お前は誰だ! 僕にこんな事をしてただで……」

「黙ろうか」


 椅子に縛られた男を黙らせつつ、ソーフスさんの顔を見る。


「これが私の復讐相手ですね」


 こいつが誰か覚えていてくれて良かった。

 大体、二か月にソーフスさんの家族を殺し、本人を拷問しようとした頭がおかしい奴。


「じゃあ、あとは自由にやって下さい」

「ありがとうございます。それでは……」


 彼は男を殺した後に虚しさで自殺するだろう。

 もし、死ななくともソーフスさんクラスの商人ならすぐに次の人生を歩める。


 これで優秀な商人との関係は終わった。

 ケジメを付けないといけないことがまだ残っている。


 転移で屋敷まで移動する。

 久しぶりに戻って来たが、親には賢者の元で修行していると納得して貰っているため、関係は前ほどは悪く無い。むしろ、応援してくれる程だ。


 屋敷の庭を見れば、笑顔で見つめてくる弟がいた。

 笑顔から見える気持ちは今からの戦闘に対する興奮や嬉しさ。


 二か月前と比べて、かなり成長している。


「兄さん。やっと来てくれたね」

「ああ、見ただけでも、どんなに強くなったか分かるぞ」


 二か月の間、見ていなかっただけで強くなっている。

 今までとは根本から違う。肉体的な面だけではなく、精神面の成長も激しい。


「僕は人間を辞めた」

「なんて返されたかったのか? 絶対に反応しないからな」

「見てよこれ」


 シュウが服を脱ぐと天使と悪魔の翼が二対に広がった。

 あれは前に戦った時にスキルで発生していた物。スキルを発動した様子もなく出てきたということは元から生えていた可能性が高い。


「今の僕は人族ではなく魔天(まてん)族なんだ」

「さて、どれだけ強くなったか試してやる」


 根本から変わった事は感じ取っていたが、種族の違いとは分からなかった。


「来い。()()()()オーデウス」

「渾沌魔剣ボールト。魔天族とやらの力を見せて貰うか」


 魔剣の色が前は虹色の剣だったのに灰色の魔剣に代わっていた。

 色は大人しくなったのにも関わらず、威圧は前よりも格段に上がっている。


「行くよ!『序章(プロローグ)』」


 踏み込みと翼を(たく)みに使った加速で迫ってくる。

 迷いのない行動だが、行動が簡単に読めてしまう。


 剣を躱し、シュウの腕に剣を刺す。右腕は義手ではないただの腕。

 豆腐を切るように簡単に切断した。


 しかし、腕を代償に俺の肩に傷を付けてきた。


「『一章 時間』」


 シュウが叫んだ瞬間。頭の中に機械的な声が聞こえた。

『公平にある有限の時間』


 声の後に時計のような物が視界に現れた。

 針が動くのを見ながら何の能力かを考える。


「隙が出来ているよ」

「やるな」


 謎の能力に気を取られている時に行動をしてきた。


 翼を上手く使い背中から攻撃を仕掛けてくる。

 精密な体操作が可能になっている。前みたいに暴走している様子もなく厄介な事になりそうだ。


 肩に剣が当たる。


「『第二章 天秤』」


 今度もシュウが技を言った瞬間に機械音が脳に響く。

『傾いた公平は身を亡ぼす』


 次の瞬間。体が百倍に重たくなった。

 切られた箇所だけが加重されたのでバランスが取りにくい。


 更に時計の針の動きが加速した。一体、これは何だろうか?


 体勢が崩れた時を狙って攻撃をして来た。首に当たる事は何とか回避したがまた傷を負ってしまった。


「『第三章 加速』」


『終わりへと進んでいく』

 時計の針が更に早く動き始めた。なぜかは分からないが急がないといけない気がする。


「【龍纏(ドラゴンオーラ)】」


 スキルを発動させながら切られた場所をボールトで切る。

 嫉妬の能力が発動し、重力のみが無効化された。しかし、時計は未だに進んでいる。


「あと、十秒で決着だよ兄さん」

「舐めるなよ」


 魔法を新たに作り出す。すべてを消し去るイメージを浮かべる。


「《終焉の花園(エンドガーデン)》」


 地面から無数の白い彼岸花が現れる。

 勿論ただの花ではない。一つひとつが人間を殺す能力を持っている。


 花々が世界の光を吸収を始めた。次第に空が暗くなる。


「さあ、耐えてみろ」

「『最終章 時は天秤に掛けられ加速する』!」


 視界。いや世界そのものが白黒に変化した。

 だが、俺の魔法は発動している。もう止める手段は無いに等しい。


 極光に抱かれて倒れろ。

 ……。おかしい。魔法が一向に発動しない。それ以前に体が一切動かない。


「魔天族の力を見せてあげるよ」


 シュウが翼を大きく広げた。動けない原因が分からずに全力で抵抗する。

 ふと、視界の端っこにある時計を見る。さっきまで動いていた方向とは逆の向きに進んでいた。


 更に驚くことに切断したはずのシュウの腕が再生していた。高速再生持ちの種族か。


「僕の勝ちだよ」


 四肢に切れ込みが入った。意識はあるが痛みは感じない。

 早すぎて全く剣が見えなかった。これがシュウの本気か。


 色が戻って行くのを感じながら発動途中の魔法を改造する。

 時間が戻ると同時に視界が傾いた。俺の完全敗北だろう。


「はあ。久しぶりに負けたな」


 手足を失ったため地面に転がる。魔法で生やした彼岸花に受け止められた。

 シュウが俺を見下ろすように移動した。


「今回は俺の負けだな。覚悟も意志も桁違いに成長したな」

「兄さん」

「俺の弟子と剣聖の座を争うにはいいライバルになるな。じゃあ、俺は帰らせて貰う」


 《終焉の花園(エンドガーデン)》の想定していた能力は光を吸収し、一斉に上空に放出する。

 今回は威力を弱めて目を塞いでしまうほどの光に留めた。


 最後に転移をすれば、いつの間にかいなくなった状態が完成する。

 腕も転移した先ですぐに再生した。


 完全回復した訳のは問題は無い。しかし、ここは何処だろうか?


 背景は真っ暗なのに家が並んでいるのだけは見える。

 それにあの家は竜人の里に居た時に同じような物が無数に立っていた。


 周りを見ても誰もいない。


『クウ。居るか?』


 無反応だった。

 直感で分かる。これから面倒臭い事になりそうだ。


 折角、しばらくのんびりすることが出来ると思ったのにこんな事態になるなんてな。

 魔力が徐々に減少をしている。この謎の空間に仕掛けがあるのだろう。


 直感を頼りに歩き始めた。



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