プロローグ
初投稿です。拙い文章ですがよろしくお願いします。
「本当にこれでよかったんだよな」
今、俺の目の前に一人の老人が背中に剣を生やし倒れている。
一見ただの老人に見えるが頭に禍々しい二本の角が生えてる。奴はこの世界では魔族と言われる種族。
それも魔王と言われる存在だ。
「勇者リュウ。お主はこれで魔族と他種族の戦いは終わると思うか?」
魔王は俺に問いながら目を閉じた。
俺はこの魔王を倒すために学校の帰り道で召喚された。元はどこにでもいた高校生だ。
この世界ではリュウと呼ばれている。
テンプレの様に成長補正やチートなスキルを転移したときにあり更に国からチートな聖剣も貰った。
今はここにいないが聖女、賢者、龍人、剣聖。四人の頼れる仲間もいてやっと魔王を倒せた。
魔王に聖剣を押し込む。手に生々しい感触が伝わり、魔王の赤い血が地面に広がる。
「戦争。終わるといいな魔王」
俺は哀れみと懺悔の感情を込めて聖剣の抜いた。
本当に魔王を倒す必要があったのか? 悩みながら魔王の死体がある部屋から出ていく。
魔王城から外へ移動をしようと出口のドアに向かう。
扉の前にある壁によりかかって一人の男が待っていた。
「リュウ。魔王を倒せたか」
今、話かけてきたのは剣聖のガイゼル・ローゼン。彼は白髪で白いコートを着ていおり、腰には柄も鞘も白い剣を付けている。全体的に白いがイケメンだ。
「ああ、かなり強かったが倒せた」
魔王が本気を出していたら俺の腕が軽く二、三本は吹っ飛んだだろう。
チートスキル【超高速再生】があれば腕は戻るから、三本目以降がある。
腕は一本も吹っ飛んでいない魔王は本当に甘く偉大な奴だった。来世で出会えたら友達になれるかもしれないな。
城を出ると目の前には砂漠が広がっていた。
魔族の町は魔王城とは運よく少し離れた所にあり一般人を巻き込むことは無い。
その砂漠に魔族の死体が一つ山の様にそびえ立っていた。
山の隣には一人の女の子がいた。
「リュウお疲れなのじゃ」
彼女はレイ・マーティン。黒髪で黒いとんがり帽子に黒いローブを羽織っている。手には魔法使いの杖を握っている。幼女だ。俗に言うのじゃロリというやつだ。
変わった語尾だが嫌いではない。
「そっちもお疲れ」
二人は俺が魔王と戦っていた時に邪魔が入らないように魔王城のドアの周辺を守ってくれていた。
『リュウ!』
頭に直接男のむさ苦しい声がした。
【念話】のスキルの特徴だ。そして、この【念話】を使えるのは俺以外だと龍だけだ。
俺は【対透明化】のスキルを発動させ空を見る。するとガラスで作られているような、西洋流のドラゴンが翼を振りながらゆっくり降下し着地した。
龍が一瞬光った。
光った後には、一人の男と一人の鎧を着た人が現れた。
「リュウ作戦終わったぞ。そろそろ帰ろうぜ」
男は疲れたているのを強調する。
こいつは龍人のジョン・ドラン。スキンヘットで茶色いローブを着ている。龍になるとクリスタルドラゴンという透明な龍になる。ちなみに龍はドラゴンの中でも上位の存在だ。
「リュウ君怪我していない?」
女性のような高い声の鎧が駆け寄ってきた。
鎧。いや、女の方は聖女のジュリア・ミラード。長い金髪で美女なのだが、護身用のフルプレートで顔まで覆っているので見れない。
二人には魔族の援軍を倒すためにある作戦をやってもらっていた。それは、とにかく特攻だ。クリスタルドラゴンの【透明化】をジョンに使わせ上にジュリアを乗せて魔族の援軍に突っ込む。
ジョンが傷ついたら、ジュリアが回復させる。
そして、何度も突進を続ける。
ジョンにとっては拷問みたいな作戦だが一番楽なのはこれだ。魔族は光の屈折やらを知らない。
敵は襲撃者を見ることができず混乱をするのを狙ってこの作戦を実行させた。
「大丈夫だ。よし、みんな無事だな、よし、王都に戻ろ――」
俺が王都へ帰ろうと言おうとした時。俺の足元に魔法陣が現れた。
「なんだ。これは?」
「敵か!」
ガイゼルとジョンは一瞬で戦闘態勢を取った。俺も少し焦ったがこの魔方陣には日本語で〈送還用〉と書かれていた。
「これは、元の世界に帰るための送還の魔法陣だ。だから慌てなくていい」
俺の頬が冷たくなる鎧がいきなり抱きついてきた。いや、ジュリアだ。
「嫌だよ。リュウ君ともっと一緒にいたいよ」
「それは無理だ。この魔方陣はもう止まらない」
ジュリアが二、三歩後ずさり座った。
もう、俺にはもう魔法陣を止められない。せめて最後ぐらいはかっこよく去りたい。
「みんな、今まで俺に付いてきてくれてありがとう。最後に頼みがある……もうお別れだ」
伝えたい事をすべて伝えると魔法陣の光が急に増した。
五年間もこの世界で命を懸けた戦いを何度も何度もした。家に帰ったらとりあえず、やわらかいベッドで何も警戒せずにぐっすり眠りたい。
そう願い、俺は目を強く閉じた。
――――――
目を開けるとそこは道路の真ん中にいた。
左側は森。右側にはガードレールがあり下は崖なのを示すためか注意をする看板が立っている。あと、もう一つ看板があった。それは自殺をやめるように書かれた看板だ。
俺はここを崖の近くだと認識した。
「とりあえず、人を探すか」
独り言をつぶやいた後、人を探すために道路を歩こうと後ろを向いた。すると、目の前には大型のトラックが走って来ていた。
俺は反応したが思ったように力が出ず一歩後ろに跳ぶことしかできなかった。
トラックと衝突した。
強い衝撃と共に体が宙を舞う。普通の人なら諦めるだろう。しかし、俺は、元はとはいえ命を懸けて勇者をやっていたんだ。
このぐらいの衝撃なら何回も体験した。
俺は、空中で丸くなり、一回転をする。そして、足から地面へ……着地が出来ない。
前には白いガードレールが見える。落ちた。
落ちていく中、確信した。
流石の俺でも自殺が出来るレベルの崖から落ちたら経験だけではどうしようもない。勇者だった時の肉体があれば例え二百メートル上空から落ちても無傷だった。
勇者の時の感覚が染みついてしまったみたいだ。この世界には魔法はない。さらに≪スキル≫も≪レベル≫も存在しない。
この世界はもう俺には合わなくなってしまった。
下を見ると崖が近づいてきた。トラックに轢かれたから、テンプレみたいに転生しないかな。
「次は特に使命が無い人生だと嬉しい」
俺はほんのちょっとの希望とベッドでぐっすり寝たかったというどうでもいい睡眠欲が心の大半を占める精神状態の中死んだ。