第八話 演習6
敵機の猛攻を振り切った強襲偵察艦隊はそのまま敵空母機動艦隊がいるであろう方向に向けて進んでいた。その間にも味方からの通信が入っており、第一次攻撃隊は既に帰還し始めており、第二次攻撃隊が襲来しようとしていた。
「艦長、敵攻撃隊は来た方角とは別の方向に逃げたそうです」
「だろうな」
「……敵空母もそちらにいるのでは?」
帰還する戦闘機が向かう方向に敵空母がいる。副艦長はそう推測したがマグサの読みは違っていた。
「第二次攻撃隊と第一次攻撃隊は同じ方向から来た。にも拘わらず第一次攻撃隊はあらぬ方向に飛んで行った。だがな、あらぬ方向じゃないんだよ。宙域地図をよくみてみろ」
そう言ってマグサは艦長席に備え付けられていたタブレットを取り出して副艦長に見せた。そこには周辺の宙域地図が書かれており、第一次攻撃隊の予測帰還進路が表示されていた。そしてその先にあったものを見て副艦長は声を上げた。
「こ、これは! 短距離用の宇宙ポータル!」
「そう、広大にして多数存在する人工大陸を楽に行き来できるように複数個所に設置されているポータルの一つだ」
宙域地図には小さくだがポータルを示すリングが二つ表示されており、今回の演習宙域に辛うじて入っていた。
「見ての通り通行用のポータルは演習宙域圏内だ。そこからやってくる事は不可能でも入っていく事は出来る」
「で、ではこの先に……」
「空母機動艦隊がいるだろうな」
何でもないように言うが副艦長は慌てたように言った。
「ならばなぜ向かわないのですか!? ここに飛び込めば敵の位置や数を知れますし何より奇襲ができるのですよ!?」
「それを相手が分かっていないと思っているのか? 確実にポータルから出た瞬間に集中砲火を浴びるぞ。場合によっては旗艦に通信する暇なくな」
「それは……、確かにそうですね」
「だからこそこうして第一次攻撃隊が来た方向に向かっているんじゃないか。まぁ、安心しろ。ここから探し出す策はきちんとあるからな」
そう言ってマグサは不敵に笑った。