第四話 演習2
第34人工大陸までの航路は快調とあらわす以外に言葉が見つからないほど順調であった。
「この霧を抜ければ第34人工大陸が見えるはずだ」
現在第56高速艦隊は霧の中を航海中であった。土星や木星、惑星連合皇国支配下にある天王星、海王星、冥王星などのガス状惑星ではしばし霧に覆われることがあった。今回は無害な霧であったがひどいときは毒性の霧が現れることもあり基本霧が現れた人工大陸は一時的に閉鎖され、霧のある航路を抜けるときは霧が船内に入ってこないようにしなければいけなかった。
やがて霧は晴れ高速艦隊の前には土星最大の人工大陸、第34人工大陸が姿を現した。高速艦隊のドックがある第58人工大陸と同じく大陸全土が軍事基地であるが規模はけた違いであった。ガス状惑星の中は惑星の周りをまわることはないためずっと固定されている。ここは惑星連合皇国が攻めてきた場合最前線となるため対宙兵器が数多く設置されておりよほどの大軍でも用意しなければ攻め落とすことはできないであろうと思われるほど強固な大陸となっていた。
その大陸は土星に駐留している艦隊が数多く停泊しており人工大陸が二回りも大きく見えるほどであった。
「さすがは第34人工大陸と言ったところか」
「対宙兵器だけでも土星全体の半分近くありますからね。それに加えて駐留している艦隊も含めればあの大陸だけで惑星一つに値しますよ」
高速艦隊所属重巡洋艦浅間艦長マグサ・ウエスギ航宙大佐は簡素な感想を言うが隣にいた副艦長は情報と持論を合わせて言ってくる。
「あそこにいるのは第31水雷戦隊ですね」
「あれは第13戦隊ですね。最新のエネルギータービンに換装されたそうですね」
暫く二人がそのように話し合っているとマグサは一つの艦隊に目がいった。副艦長はマグサの視線の先を追う。
「…第6航空艦隊ですか。最新鋭の空母を四隻備えた最強の航空艦隊ですね。それがどうかなされましたか?」
「…いや、何でもない。着艦用意」
マグサは直ぐに視線をそらしそのように指示を出していく。副艦長は疑問に思いつつも指示通りに行動するのであった。