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箱舟旅団冒険記  作者: 月也青威
13/30

第一章:闖入者は悪辣を糾弾する

高級宝石店の無駄に豪奢な扉をバコンッと開いて飛び込んできたのは、凡そ店の雰囲気にそぐわない風体の少女だった。


ボブカットの明るい茶髪は活発そうで、橙色の瞳が勝ち気に店主達を見つめている。

その服装は貴族達のそれとは大幅に異なり、装飾の少ない…というよりは全くない、動きやすそうなものだ。


何より不釣り合いなのは、腰に帯びた二本の短剣と、胸元を守るなめし革のブレストプレートを着用している事か。

その風体はまさに冒険者と言えるもので、ボーイッシュな少女の姿を見た途端、店主は不快そうに顔を歪めた。


いきなり無遠慮に扉を開け放った上に、店主を悪徳商人呼ばわり。

これでは歓迎される筈もないが、バルトレッティは少女の態度とは別の事で不快になったらしい。

その顔には嫌悪が色濃く浮かんでいた。



「なんだ貴様は!?ここは貴様のような薄汚い冒険者風情が立ち入って良い店ではないぞ!?

とっとと出ていけ!!店の品格が損なわれるわ!!」


────いや、元から品格なんてもんないと思うけど。



というか真っ先に気にするところそこか、と盛大に呆れる。


冒険者という者達がエレオスでどのような役割を担っているかは解らないが、薄汚いなどと言われた冒険者少女は、片眉を吊り上げながらも鼻で嗤った。



「はっ!こんな見てくればっかり豪華な店に品格なんて、端っからあるわけないじゃん。

あるとすりゃ意地汚い金の奴隷の醜悪さだけだってーの。

んな事どーでも良いからさっさとこの人形を寄越しな。金ならくれてやるからさ」



図らずも同じ事を思っていたらしい。

己の内心を代弁してくれたのにはちょっと溜まったモヤモヤが晴れたが、どうにもこの少女の味方に回る気が起きない。


それは少女が持つ尊大さと傲慢さが、その言動から滲み出ているからか…。

その態度は完全にバルトレッティを見下しており、ともすればこれまでに見たどの貴族よりも傲慢だった。



────それにしても金の奴隷か。良い得て妙というかなんと言うか…。他にも言い方があったような…、何だっけ?



等と全く違う事で頭を悩ませているうちに、少女は大きめのウェストポーチから小袋を取り出す。

それをバルトレッティに差し出すと、中からジャラッと金属同士が重なり合う音が聞こえてきた。


まず間違いなく硬貨が入っているのだと理解出来るが、一応“世に二つとない美しい人形”に出すにしては少ない気がする。

もしかしたら金貨ばかり入っているのかも知れないが、エレオスの通貨を知らないノアにはそう感じてしまった。


が、どうやらノアが思った通りだったようで、小袋を見たバルトレッティはこれまで以上に顔を怒りで赤くした。



「貴様ぁっ!!薄汚く野蛮で下賤な冒険者の分際で、この大商人バルトレッティ様を愚弄するのか!

身の程を弁えろ小娘!!しかもそんな端金………ッ。私をバカにするのも大概にしろ!!」



癇癪とはこういう事を言う、と言える手本のような激昂っぷりに、ノアは内心でドン引きする。

相変わらず人形(うつわ)はピクリとも動かないが、動けていればその美しい顔が嫌悪に歪んでいた筈。

それ程までに良い歳(推定四十代後半くらい)した大人の癇癪は、醜いものだった。


むきーっ!なんて声が聞こえてきそうなバルトレッティの罵倒も、少女にはなんの効果も生まなかったらしい。

少女はよく言えば辛うじて美少女、悪く言えばまぁ整った方の平凡な顔に、侮蔑と嘲笑を浮かべていた。



「中身のない上っ面だけの奴に何と言われようが毛程も響かないね。

それに、あんたがあの冒険者たちに渡した金よりは多めに入ってる筈だよ」



ニヤニヤと堂に入った黒笑を浮かべながら小袋を揺らし、少女は挑発するように告げる。

その言葉を聞いたバルトレッティの躯が大袈裟なくらいびくつき、とりあえずみっともない癇癪は静まった。


一方で、これまで二人のやり取り(罵り合い?)を無感情に傍観していたマネージャーの眉も、ピクリと動く。

しかし、特にそれ以上の反応は返さす、相変わらず鉄面皮で事の成り行きを見守っていた。



「……何の話か私には解らんな」

「白の切り方ド下手すぎ。そんなんでよく大商人なんて自称出来たもんだよ。

あぁ、自称するだけなら猿でも出来るか。必要以上に偉ぶらないだけ猿族(えんぞく)の方がまだマシだね」

「こここ、小娘ぇ─────────ッ!!」



せっかく静まった癇癪が振り返す。

どうやら口では少女の方にかなり分があるようで、虚仮下ろされるばかりの主人の姿を見守るマネージャーの表情にも呆れが浮かんでいた。

それでも主に代わって少女の相手をする事はおろか、主を宥めもしない辺り忠誠心は皆無らしい。



「あたいは全部知ってんだよ。あんたらが影でこそこそあの冒険者達を見張ってた事も、あいつらからこの人形とお宝を端金で強引に買った事も、それがあんたがいつも使う手だって事もね!

で、そうやって手に入れた遺物を貴族に横流ししてんだろ?全部お見通しなんだよ!」



最後にそう言って、少女は犯人を追い詰めた探偵のようにビシィッとバルトレッティを指差した。

己の犯行手口をズバリ言われたバルトレッティも、罪を暴かれた犯人よろしく派手にびくついていた。



「うぐっ!!」



…などと言う呻き声と共に。



────おいおいおっさん。それじゃ自分がやったと暴露してるようなもんだぞ。



主の阿呆みたいに素直な反応に、背後に控えるマネージャーも明らかに呆れていた。

態度や表情で少女の言葉を肯定している主の姿を情けなく思うのは解るが、助け船も出さず弁明も弁解もしないのは、何とも冷たい事である。


一方の少女はというと、完全に優位に立ったと言わんばかりにしたり顔を浮かべる。

ギリギリと歯を食い縛るバルトレッティを見下すその顔は優越感に満ちており、まさに勝ち誇っていると言えた。


しかし、バルトレッティとてただ黙って糾弾されるばかりではない。

ギロリと少女を睨み付け、ふん、と鼻を鳴らした。



「ふん、何の事だか解らんな。人違いではないのかね?

大体、何故この私が汚らわしい冒険者などと関わらねばならんのだ?言いがかりも甚だしいぞ、小娘!」

「そんな言葉で言い逃れられると思ってんの?あたいはこの目で見てんだよ。そこの黒服が、女の冒険者からその人形を奪い取る所をね!!」



びっしぃ!!と音が聞こえそうな程勢いよく、少女はマネージャーを指差す。

不躾にも指を差されたにも関わらず、マネージャーはどこ吹く風と何の反応も表さない。

逆に店主の方が誰が見ても解るくらい動揺し、グギギギと呻いていた。


決定的な証拠を突きつけられた訳でもないのに、バルトレッティは『知られているなら仕方ない』とばかりに開き直る。

みっともなく言い逃れを続けるよりはマシだろうが、どのみち悪あがきでしかない。



「だったらどうだと言うのだ!?私があの冒険者共から不当に盗んだとでも言うのか!?

私は盗人冒険者から発掘品を守ったのだ。あんな薄汚い美的意識の欠片もないクズ共の手にあっては、遺産の価値が下がるだけだからな」



開き直りついでの棚上げ。非常に醜い。

当然のように、少女は店主の言い分を嘲笑った。



「守る!?金の奴隷がどの面下げてほざくのさ!

こんな下品な店に、つーかあんたみたいな強欲な上っ面野郎の元に置いとく方が、この人形の価値も美しさも損なわれるってもんさ!

そうなる前にさっさとあたいに寄越せ!!なんだったら、あんたが裏でやってる商売の事、洗いざらいある事ない事たんまり脚色つけて、この街の憲兵に話したって良いんだよ!?」

「きぃぃぃぃぃ!!図に乗るなよ、雌豚!!貴様のような一介の冒険者風情が何を言ったところで憲兵共が信じるものか!!

私には大商人としての実績とコネクションがあるのだ!!貴様のようなクズ虫一匹、すぐに日の下を歩めぬようにしてやる!!」

「獅子の頭に乗るドブネズミが偉そうに!クズ虫っつーのはあんたみたいな奴の事を言うのさ!!」



お互いに口汚く罵り合う様は、見ていて非常に気分が悪い。

正直どうでも良いし、どっちもどっちだと思うので、いい加減お開きにして欲しいものである。


ヒートアップしているのは当事者達だけで、周りは盛大に白けている事にも気付いていない。

……というより、マネージャーは関わりたくない、とばかりに空気になっているようだった。



「これ以上あんたと話してても時間の無駄だね、ホント」



埒が明かないと切り捨てると、少女は踵を返した。


彼女の視線の先にあるのは、美しく精巧にして儚げな印象の、白銀の人形…。


いい加減痺れを切らした少女は、バルトレッティがやったように無理矢理人形(ノア)を奪っていく事に決めたらしい。

それに盛大に慌てたのはノアが先だった。


確かにこのままこの冒険者少女に連れ出されれば、悪徳商人の金儲けの道具、という未来は回避される。

だからと言って、この少女の所有物になるのも、それはそれで嫌だった。


まず何よりも、この少女がここまで人形を欲しがる理由が解らないのだ。


貴族の御夫人方はなんとなく解る。

美しい物に目がないという彼女達にとってすれば、“この世に二つとない”美しい人形を持つ事で周りに対して箔が付く。

部屋に飾るとか、他の貴婦人に見せびらかすなど、言わばインテリアやアクセサリ感覚だろう。

無論そんな扱いも嫌だ。


だが、冒険者であるこの少女が人形を欲する理由が思い付かなかった。


冒険者という職業が想像通りのものならば、彼女は旅から旅の根無し草の筈。

その旅に乳幼児程もある大きな人形を抱えていくなど、まずあり得ないだろう。


アークの話からこの世界には魔物がいるのだと知れたし、武器を携帯している事からも戦いに携わる者だと理解出来る。

そんな状況で特に理由もなく人形を持ち歩くなど、邪魔以外の何者でもない。


そして何より、ノアが少女を嫌悪するのは、彼女から一種異様な狂気を感じ取ったからだった。


加えて、これまでにバルトレッティに向けて来た雑言と尊大な態度。

いくら相手が悪徳商人(あくにん)とはいえ、不躾にも程がある。


ノアは礼節のなっていない人は嫌いだった。



────だから君と一緒にいくのは絶対に嫌だ!!つーか近寄るな恍惚とした顔でこっち見んな怖いわ!!こっち来るなぁ!!



動けず聞こえないと解っていても、ノアは抗うように喚く。

すわ貞操の危機かと言わんばかりの恐怖を感じた直後、視界の端で黒服がわらっと出てくるのが見えた。



「ぎゃ─────────ッ!!ちょ、何すんだいこの変態共!!あたいに触んな!!っていたたたたたた!!痛いっつの!放せ、降ろせこらぁ!!」



少女の手が人形に触れる寸前、触るなとばかりに三人の黒服に捕まる。

そのまま腕を捻り上げて痛いと喚き暴れる少女を押さえ付けると、三人がかりでその躯を持ち上げてしまった。


一人は頭と延髄を、一人が腕を一纏めにして腰を、一人が足首を纏めて持ち、でかい丸太のように少女を担ぎあげた。


それは見事且つ鮮やかな手際で、彼らはそのまま少女を店外に放り投げてしまった。

それこそ文字通りに。



「この薄汚い冒険者風情が!!二度とその醜い姿を私の前に晒すな!!即刻この街から出て行けぇ!!」



文字通り投げ捨てられた少女が黙っている筈もないが、バルトレッティは言うだけ言って扉を閉めてしまったので、何も聞こえなかった。


それでも視界の端に、何かを喚きながら扉を叩く少女の姿が見え、めげないなぁと軽く引いた。


諦めの悪い少女に更に腹を立てたバルトレッティは、マネージャーから綺麗な小瓶を受け取る。

それは装飾過多な宝飾品に囲まれた店内で、初めて素直に綺麗だと思えるものだった。


淡い水色の水晶のような形の瓶の中には透明の液体が入っており、バルトレッティはその瓶の蓋を開けると同時に閉めた筈の扉を開けた。


まさか、と思うまもなくバルトレッティは瓶の中身を少女にぶちまけていた。



「ぎゃ──────ッ!!何すんのさこのクズ商人!!」

「やかましい!!一本5ルソもする教会製の聖水だ!!これで貴様のその腐りきった性根も浄化されるだろう!!

人形の代わりにそいつをくれてやる!とっとと失せろ!!」



凡そ女らしくない悲鳴をあげる少女に、最後の仕上げのように手にしていた小瓶を投げ付ける。

見た目の繊細さに反して頑丈だったようで、地面に当たる固い音はしたが割れた音はしなかった。


ルソ、というのがこの世界──あるいはこの国の──通貨なのだろうが、はっきり言って5ルソがいくらくらいに換算されるかは解らない。

強欲な人間が『も』と言っている辺り結構な値なのだろうか、見た限り小瓶も小さめだった気がする。


しかし水ではなく聖水をぶっかけるとは、余程少女の雑言に腹が据えかねたと見える。

…どちらにしろやり過ぎ且つ大人げないが…。


金切り声で怒鳴り付けて再び扉を閉めると、手早く鍵をかけてしまう。

その上でマネージャーに「閉めろ」と、怒鳴り散らした勢いのまま指示した。



「あぁ忌々しい!!今日は仕舞いだ!お前達!すぐに店内を聖水で清めておけ、土臭くてかなわん!!

お前はあの人形を地下に運んでおけ!!

あぁ、くそ、汚らわしい野良猫が!!あんな下劣な女が平然と歩いているなど、憲兵は何をしているのだ全く!!」


────ホント、何やってんでしょうね。こんな悪人が大手を振って商売してるんだから…。



己の悪行を棚上げして喚き散らす店主を余所に、マネージャーと黒服はてきぱきと動き出す。

店主の癇癪には安定のスルーだ。

いつもの事なのだと納得する程のスルースキルだった。



「あの娘をこのまま放っておくのも腹立たしいし、下手に裏の商売の事を喚かれても、揉み消せるが私の名に傷が付く。…………」



その後は無言だったが、雰囲気的に何を考えているかなど察しが付く。

貴族のような権力者をバックに持つ者が、邪魔者を排除するのによく使う“手”だろう。

やっぱこいつ根っからの悪人だ、と改めて確認した。


ぶつぶつと小さく呟きながら、バルトレッティは店の奥へと引っ込んでいく。

彼の姿が完全に見えなくなると、どっと疲れた、というような溜め息が店内に残る全員の口から漏れた。


緊張の糸が切れた、と言うよりは呆れから来るものに近い。

それは一切感情を表に出していなかったマネージャーも同様だった。



「店閉めちまっていいんですかい?まだ昼日中っすよ?」



高級店のガードマンとは思えない口調で、黒服の一人が店仕舞いを始めたマネージャーに問いかける。

その口調と立ち居振舞いからして、高級店で働く者としての教養はないと見た。



「あの不機嫌さで客の相手などさせてみろ、とばっちりが来るのはこちらだ。

店主の癇癪に巻き込まれたくなければ、口ではなく手を動かせ」



マネージャーの淡々とした言葉に、それだけは御免とばかりに作業に入る。

つまりは顧客の殆どが先程の御夫人方のようなタイプになるらしい。

今以上に怒りで暴れるのは目に見えていた。



「あの性格でよく貴族相手に商売できるぜ、全く」

「それだけ金儲けと金が好きなんだろ?ま、あのガキは確かに態度でかすぎだったけどよ」



黒服達は店内の掃除をしながら、口も動かし始める。

彼らの手には液体の入った霧吹きのようなものがあり、それをあの少女が立っていた場所を中心に吹き付けていく。

中身は恐らく少女にぶっかけたのと同じ聖水なのだろう。


一方のマネージャーは無言で、てきぱきと閉店後の作業を進めていく。

黒服達の無駄口も聞こえているだろうが、手は動かしているので特に注意しなかった。



「俺、あの女冒険者知ってるぜ。確かイルザっていったかな?」



非番の日に街中で彼女を見た事がある、と言い出した黒服の一人に視線が集中した。



イルザと言う少女は冒険者の間でも評判が悪く、その時も別の冒険者と揉めていたらしい。

揉め事の内容までは解らなかったが、最後には野次馬と化した市民にまで悪態を吐いて去っていったと言う。



「どう見ても柄の悪そうな奴らとつるんでいたり、恋人のいる男に言い寄っては相手の女と揉めたり。

詐欺紛いの事もやらかしたとかで、同業者からかなり嫌われてるって話だ」

「うっは、うちの主人みてぇ」

「バルトレッティ卿の小娘バージョンってか?あんな人種が他にもいるって最悪だな」

「って事は、あの口論は同族嫌悪もあったってーことかねぇ」

「違いねぇや」



さりげなく主の事をこき下ろしつつ、黒服達は楽しげに会話を進めていく。

しかし、会話が弾めばそれ以外が疎かになるのはよくある話であり、閉店後の作業を終えたマネージャーが彼らの背後に立った。



「…さて。お前達全員で卿のご機嫌取りに行ってもらおうか…」

「「「「す、すみません!!」」」」



地を這うような冷ややかな声と言葉に、固まっていた黒服達が一斉に店内に散っていく。

不機嫌度が限界突破したバルトレッティのご機嫌取りなど、この店でもっともやりたくない仕事になるのだろう。

その後は皆もくもくと、店内の掃除に勤しんでいた。


その様を見て呆れの溜め息を一つ雫すと、マネージャーは不快そうな眉を潜めた。



「…真剣に代わって欲しいんだがな…」



そう溜め息と共に吐き出された呟きには、多大な疲労が色濃く浮かんでいる。

恐ろしい程の鉄面皮すらこうなるのだから、どれ程気が滅入る仕事か考えたくもない。

確実に胃を病みそうである……。


もう一度、今度は先程よりも深く溜め息を吐くと、マネージャーはまっすぐこちらに歩いてきた。


そう言えば、どこかに運べと言われていた気がする。

うわ嫌だ運ばれる、何て事を考えて内心で拒否してもやはり聞いてもらえず、ノアの躯はひょいと持ち上げられてしまった。


赤ん坊を抱くような形で抱えられ、視界が変わる。

これまではっきりと見えていなかった店のウインドウ側が視界に入ったが、そこには外界を処断するように、厚手のカーテンが閉められている。

結局店の外を伺う事は出来なかった。


ノアを抱え、マネージャーは店の奥へと歩いていく。

遮られた外に繋がる扉や窓に気持ちの上で手を伸ばしつつ、「ひーとーさーらーい─────────」と呟く。


当然ながら、その声を聞いた者は誰一人存在しなかった。




金の奴隷=金の亡者


獅子の図に乗るネズミ=虎の威を借る狐



…というイメージです。



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