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6 復讐蜘蛛の長に遭遇しました

ううー、くっさいです。

蜘蛛さんの体液で、全身がネトネトします。

今後粘液まみれの女の子には一切触れないと誓いました。

お風呂に入りたいです。


今の私はガイコツなので、お風呂に入ると出汁がとれます。

今なら蜘蛛さんのエキスも混じって、混沌としたスープが出来上がりそうです。

ゲテモノ好きの方は、今一度ご賞味あれ!

湯船につかる前には体を洗うので、蜘蛛のエキスが私の出汁に混ざることはないんですけどね。


「|《所有者様》(マスター)がくだらないことを考えている気がするのですが、気のせいでしょうか?」


「気のせいです」


勘がいいですね、クォーツ。

どうして私の髑髏しゃれこうべの如き表情から、私の考えが読み取れるのでしょうか?

これじゃあおちおち呆けてもいられません。


しかし、広いですよねこの洞窟。

蜘蛛の群れを(クォーツが)撃退してからかれこれ二時間ほど経ちますよ。

天井も高く道幅も広いです。

途中、細い道が何本か分かれていたのですが、少し進むとどの道もすぐに行き止まりが来てしまいました。


もしかして、ここってクリスタルの採掘場だったりするのでしょうか?

魔物が住み着いているので、もしそうだとしたら跡地ってことになりますね。

鉄骨や木材で道が補強されていないので、魔物が住処として造った洞窟という線も捨てきれませんが。


まあそんなことはどうでもいいです。


私は、自分の前を数歩先行するクォーツをじっと見つめます。

先ほどの豹変ぶりとは打って変わって、始めに私が感じた印象通りのクールな美少女です。

可愛らしいのに凜としている横顔が、とても美しいです。


もしかして、嫉妬のスキルは効果が発動している間性格にも影響を与えるのでしょうか?

それとも、クォーツが今猫を被っていて、本来の彼女は獰猛で残忍な性格をしているとか?


どちらにしても、嫌ですね。


ふと、先ほどの戦闘の件で思い出したことがあったので、聞いてみます。


「クォーツ、そういえば先ほどの戦闘であなたのレベルは上がりましたか?」


「レベル、ですか。お待ちください、今確認します」


そう、レベルです。


ゲーム等では、経験を積めばレベルが上がります。

訓練や戦闘だけでなく、中には生産系の行動でもレベルが上昇したりするものもあるとか。


これを上げれば、もしかしたら私もクォーツに守られるだけのお荷物にならずにすむかもしれません。

ならば、上げるしかないです。

差し当たっては参考までに、クォーツが先ほどの戦闘でどれくらいレベルが上がったのか確認しておきたい、と思ったのです。


さあ、あの蜘蛛さんの群れを倒したあなたはどれくらい強くなっているのか教えてくださいクォーツ!


「解析が終了しました。現在の私のステータスはこのようになっています」


魔人クォーツ lv,3

スキル 『叡知』『全知』『解析lv,7』『思考加速lv,1』『演算処理lv,1』『悪魔神の加護』『嫉妬』


ほうほう、なかなか便利そうなスキルをいっぱい持っていますね。


って、レベル3!?

あれだけの量の蜘蛛を倒してレベル3ですか!?


「え、えぇっと、クォーツ? レベルの数値、間違っていないのですよね?」


「はい。私の現在のレベルは3です」


え、ええー……

レベルって、こんなにも上がりにくいものなのでしょうか……?


「……おそらく、強力な個体であればあるほどレベルアップに必要な経験の量が多いのだと思われます」


私が首をひねっていると、クォーツが疑問に答えてくれました。

気が利くいい子ですね、親の育て方が良いのでしょう。

まあ、彼女の自我の親である私がしたことといえば、嫉妬心を植え付けたことと醜態を晒したことくらいですね。

……ロクなことしていませんね。

これは私が反面教師になったってことでしょうか。


そういえば、私ってば今クォーツの後についてきているのですが、一体何処へ向かっているのでしょうか?


「|《所有者様》(マスター)、着きました」


そんなことを考えていると、タイミング良くクォーツが答えてくれました。

読心術等のスキルはなかったはずですが、心を読まれているとしか思えない受け答えです。

少しだけ、クォーツが怖いです。


「何処に着いたんですか? 出口ですか?」


私の前方のクォーツ、その更に先は道がほんの少し広くなっていました。

前方を見ても、太陽の光は見えません、夜なのでしょうか。

そこにはただ、大きな蜘蛛さんがデン、と鎮座しておられるだけです。


って、くくく、蜘蛛ーっ!?


「では|《所有者様》(マスター)、あれを倒してください。そうすれば、この辺りの種族には負けない力が手に入りますよ」


微笑みながら、私にそう告げるクォーツ。


どうやら、彼女は私を強くするためにここに連れてきたみたいです。


「私が?」


「そうです」


「あの蜘蛛を?」


「ええ」


「一人で?」


「そうなります」


「クォーツは?」


「のんびり観戦でもしていようかと思います」


無理です。

私、死んでしまいます。

というか、先ほど私がのんびりと観戦していたのに思うところがあったんですね。

意外と根に持つタイプみたいです。


「安心してください、この周辺には他の魔物はいません。グラッジスパイダーは先ほど全滅させましたし、その他の魔物はこの洞窟に住んでおりませんから」


さらっと凄いことを言いましたよこの子。

先の蜘蛛さん、どうやらこの洞窟の全勢力だったみたいです。

道理で先ほどから魔物に遭遇しないわけですよ。


「ちょ、ちょっと待ってください! ということはあれですか? あの大蜘蛛さんは、さっきの蜘蛛の親玉ってことですか!?」


「その通りです。あの個体はアークグラッジスパイダーと呼ばれる、グラッジスパイダーの上位種族です。故に下位種族の個体よりも非常に強力です」


「勝てるわけないですよ!」


「大丈夫です、あの個体よりも|《所有者様》(マスター)のほうが強いですから」


クォーツに背中を押され、大蜘蛛さんの前に出てしまう私。


体長十メートルほどの大蜘蛛さんが、八つの目をこちらに向けてきます。

口元から、シュウシュウと煙と音を立てる唾液が零れ、地面を溶かしています。


怖いです!

超怖いです!


涙目になり後ろを振り返ると、クォーツは正座をして観戦する体勢になっていました。

助けてくれる気はないみたいです。

そして、なんで正座?


「ギチギチギチギチッ!」


大顎を鳴らしながらこちらに走ってくる大蜘蛛さん。

ちょ、速っ!?

小さい蜘蛛さんよりも重そうな体をしているのに動きが超速いです!


ええい、もう覚悟を決めるしかありません!

悪魔神に楯突いたことを後悔させてあげますよ!


テリトリーを侵したのは私たちの方だ、なんて言ってはいけませんよ?


アークグラッジスパイダー

スキル 『蜘蛛糸lv,8』『蜘蛛毒lv,7』『追跡lv,6』『統率lv,3』

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