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2 名前をつけてあげましょう

仄かに青みがかった銀髪が、卵形の頭からスッと伸びています。

気の強そうな眼差し、そこから生えるのは曲線が美しい長い睫毛。

私よりも頭一つ小さい体躯の関節は、ビスクドールに用いられるような球体関節になっています。


どこからどう見ても美少女。

私の処女作にして最高傑作です。

残る魔力のほとんどを注ぎ込んだだけはありますね。


男でなく女にした理由は、私が女の子を好きだからです。

悪魔は性別の定義が曖昧らしいので、同性を性的に好むことは珍しくないと姉様が言っていました。

姉様も女の子が好きだったりするのでしょうか?


しかし、なんともまあ無表情。

可愛らしいのに本当にもったいないですね。

こういう無表情な子がクールでステキだ、という方もいるでしょうが、女の子はやっぱり表情豊かな方がいいと私は思うんですよ。


そこで登場するのが大罪付与。

なんとこのスキル、対象に大罪系の能力を授けるというものみたいです。


この大罪系スキル、能力と引き替えにその罪に魂が浸食されるというものみたいです。

逆にいうと、傲慢なら傲慢な性格に、怠惰なら怠惰な性格に寄っていくってことですよね。

これを使って、水晶さんに感情を植え付けてしまいましょう!


「うむむ……」


しかし、どの大罪を授けるべきでしょうか。

能力に関しては、私が後々力を付けていくのでどうでもいいです。

今重要なのは、性格の方ですね。


七つの大罪。

傲慢、憤怒、色欲、嫉妬、怠惰、強欲、暴食。

これらのどの性格が、彼女に相応しいでしょうか。


まず色欲は駄目ですね。

淫乱な子も嫌いではないのですが、淑女たるもの貞操観念はしっかりとしていてほしいです。


怠惰も駄目ですね。

誰かを養えるような甲斐性、私にはありません。

怠けているような子はうちにはいりません。


暴食も勘弁してほしいです。

女の子が嬉しそうに何かを食べる様子は見ていて微笑ましいものがありますが、限度があります。


憤怒も厳しいですね。

私自身怒られるのは嫌いですし、誰かが怒られているのを見るのもあまり気分の良いものではありませんし。

気楽に生きてほしいです。


残るは傲慢に嫉妬、強欲ですか。

うーん、悩みますね。


そうだ、水晶さんが自分で決めてしまえばいいのではないでしょうか。

ザ、丸投げ。

私は十分頑張りましたもの、決して面倒くさくなったからとかそういうことではありませんよ。


「水晶さん、あなたはどのような性格になりたいですか?」


水晶さんは、小さな桜色の唇を開きました。


「質問の真意が判断できません」


おおう。

そういえば水晶さんには自我というものがまだありませんでした。

そりゃあ自我もないのにこんなこと聞かれても答えられませんよね。


もう適当に決めちゃっていいよね?


嫉妬でいいや。

嫉妬深い女の子は可愛らしいですものね。

嫉妬の対象にはご愁傷様と言っておきます。


水晶さんに向けて、大罪付与を発動させます。

一瞬彼女の身体が黒く煌めきました、成功したのでしょうか。


「水晶さん、今どんな感じですか?」


「???」


とまどったような表情できょろきょろとする水晶さん。

んー、ラブリー。

抱きしめたい衝動が私を襲いますが、ここは我慢です。


おそらく今、水晶さんは突然自我が目覚めたために混乱しているでしょう。

そこを私が無理矢理抱きしめたりしたならば、怯えられてしまったり嫌われてしまう可能性が高いです。

ここは彼女が落ちつくのを待つべきですね。


では、待っている間に水晶さんの名前でも考えましょうか。

人型なのに水晶さん、ではなんだかおかしいですものね。

それらしい名前を付けてあげなくてはなりません、肉体と自我を作り出した者の責務です。


うーむ、水晶、水晶……

クォーツというのはどうでしょうか。

地球で使われていた水晶の呼称の一つです。


うん、いい感じですね。

地球のネーミングセンスはすばらしいです、今後何かに名付ける時にも参考にしましょう。


彼女が落ちつくのを待ってから呼びかけます。


「水晶さん、あなたの名前を考えてみました。クォーツ、というものです。いかがでしょうか?」


気に入ってもらえるでしょうか?

ドキドキしますね。


「クォーツ、ですか。私の、名前……はい、私はクォーツです。よろしくお願いします、|《所有者様》(マスター)」


気に入ってもらえたみたいです。

それと、いつの間にかマスターになっていたみたいです。

マスター……いい響きですね、悪い気はしません。


名実共に、私はクォーツを手に入れたということですね。


さて、そこらの弱い魔物でも狩りに行きましょうか。

そう思ったのですが、突然もの凄い疲労感が私に襲いかかってきました。


魔力の使いすぎです。


どうやら大罪付与は、もの凄い量の魔力を消費するみたいです。

魔力量が残り僅かとなった私の身体は休息を求めています。


まずいです、超眠いです。

もしここに魔物が到来したら、私の冒険が終わりを告げてしまいます。


おぉ悪魔神よ、しんでしまうとはなさけない!


その事態を避けるべく、私は最後の力を振り絞ります。


「……クォーツ、私は今使った魔力を回復させなければなりません」


「はい」


「私の身体の安全は……任せました……」


「了解しました、|《所有者様》(マスター)」


その言葉を聞き終え、私は意識を手放しました。

魔人クォーツ lv,1

スキル 『叡知』『全知』『解析lv,7』『思考加速lv,1』『演算処理lv,1』『悪魔神の加護』『嫉妬』

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