1 私の現状を把握しましょう
説明回?です
そういえば、今の私はどんな状態なのでしょう?
見た目はガイコツになってしまっていますね。
これは別にいいんです、悪魔にとっては見た目なんてさほど重要なことではありませんし。
力のある悪魔なら容姿を好きなように変化させることすらできるのですから。
生憎私はその技術が未熟なので、容姿を変えることは出来ませんけど。
叡知の水晶に問いかけます。
「水晶さん、今の私は魔界にいた頃と比べて、なにか変化したことはありますか?」
『はい。個体名タナトスは次元の狭間での影響によってほとんどの能力を失っています』
なんですと。
次元の狭間、というと空間魔法で開けた次元の穴の中のことでしょうか。その中でなんらかの影響を受けて、私は力のほとんどを失ってしまった、と。
これはまずいです。
悪魔神の力を使ってなにか面白いことをしようかと思っていたのに計画がおじゃんになってしまいました。
それだけではなく、ここの近くに私より強い生物がいるかもしれません。
早速命の危機に陥るかもしれません。
「あのー、具体的にはどれくらいの力が今の私に残されているのでしょうか?」
『この世界の神が定めた基準に従い表記すると、このようになります。なお、魔力量は上位の悪魔種と同等です』
悪魔神タナトス lv.1
スキル 『悪魔召喚lv,1』『闇属性魔法lv,1』『超感覚lv,1』『反魂lv,1』『徴発lv,1』『魔人創造lv,1』『痛覚無効』『全属性耐性lv,1』『再生lv,1』『魔改造』『大罪付与』『悪魔神』
おお、頭の中に情報が流れ込んできました!
便利ですね、この水晶。
姉様に返したくなくなってきました。
それはともかく、この表記の仕方。
レベルにスキル。
どこかで見覚えが……そうです、仕事をサボって眺めていた世界のゲームとかいう娯楽にこんな風なことがかかれていた気がします。
そのゲームに比べると、この表記はいささか簡潔過ぎる気がしますが。
それと、神ですか。
この世界を統治する神がいるのですね。
こんな不思議な表記を使うなんて、なかなかいい趣味しています。
その神の所に遊びにいってみたいな。
さて、私の能力です。
まず魔力量。
この魔力量は、魔族にとっての個体の強さ、その大まかな目安になります。
上位悪魔種ほどしかないとは、ずいぶん力が落ち込みましたね私。
上位悪魔種は魔族のなかでも魔力が多い種族です。
しかし、わたしも若輩ながら神の一柱、そこらの悪魔が何万と束になろうと敵わないほどの魔力を持っていたはず。
参考までに、私が次元の穴を開けた空間魔法は本来上位悪魔種が何百体と集まり、何日もかけて発動する高等魔法です。
そう考えると、わたしはかなり弱っちくなってしまったことが分かります。
次にスキルとかいうもの。
これは、その個体が使える能力の様な物でしょうか?
ゲームとやらをもっと真剣に学んでおくべきだったかも……
ほとんどマスターしていた魔法は悪魔を召喚する術と闇魔法、反魂法だけになってしまっています。
元が把握出来ていないので確かなことは言えませんが、その他の能力もほとんど失われてしまっていそうですね。
徴発や大罪付与なんてものは心当たりがないのですが、隠れていた私の才能でしょうか?
後で具体的な力を水晶さんに聞いてみましょうか。
最後にレベル。
これはたしか、強さや習熟度を表すものだったはずです。
私は本体スキル共に、全てレベル1。
なにか、弱いとか未熟だとか言われているようでむかつきますね。
実際弱くなってしまっているので反論は出来ませんけど。
結論として、私は凄く弱くなってしまっているようです。
おそらくですが、このガイコツのような姿は力を失ったことによって私の体が休眠状態になってしまい元の姿から変化したものだと思われます。
ううむ、困りました
これでは本当にこの世界の生物に殺されかねません。
基本的に魔獣や魔族は、強い者に従い弱い者を虐げます。
いまのか弱いガイコツであるわたしは、そんな野蛮な奴らにはとても敵いません。
では、私はどうすれば生き残ることが出来るのか。
強くなるしかないですね。
もともと、悪魔には殺した相手の魂を吸収する力が備わっています。
当然私にもそれがあるので、自分より弱い相手を殺し続ければいつかは元の私と同じくらいの強さを手に入れられるはず。
当面の目標は、強くなることで決まりですね。
私たちの戦いはこれからです!
その後、水晶さんにこの世界について色々と聞いてみました。
地形、気候、知的生命体の有無、それらの文化や言語など様々なことを聞きました。
魔力をいっぱい吸われました。
中でも特に私が興味を持ったのが知的生命の活動です。
どうやらこの世界では、人類や魔族等、様々な種族が活動しているみたいでした。
しかし、なにやら人類が他の知的な種族を根絶しようと活動しているみたいなのです。
人類は本来今の私より弱っちい生物だったと思うのですが、なぜか他の種族よりも強力な武力をもっているようです。
水晶さん曰く、このままではこの世界は人類に支配されるとのこと。
非常に面白そうですね!
今の私では力がないので無理ですが、強くなり次第ちょっかいを出して場を混乱させてみるのもいいかもしれません。
楽しみが出来ました。
早く力を取り戻さなくては、うふふふふふふ。
ですが、水晶さんを持ったまま戦うのは得策ではありませんよね。
どうしましょうか……
そうです!
「水晶さん。あなた、身体を欲しくはありませんか?」
持つのがいやなら水晶さんに歩いてもらえばいいじゃない。
魔人創造の能力で肉体を作り、そこに核として水晶さんを入れれば私が水晶さんを持たなくてすみますね!
人型の話し相手も出来ます。
思うに、水晶に話しかけるガイコツよりも人に話しかけるガイコツのほうが、いくらかましな気がするのです。
後で持ち主である姉様に怒られそうですが、多少小言が増えるくらい今更ですしかまわないでしょう。
さあ、どうでしょう水晶さん!?
『名称叡知の水晶は物質として存在しています。故に身体は既に保有しております』
むむ、言いたいことが上手く伝わっていませんね。
思えば、私には友人と呼べる者がいなかった気がします。
私ってもしかしたらコミュニケーションが下手なのではないでしょうか?
言葉が足りなかったりしたのかもしれません、もう一度聞いてみましょう。
「水晶さん、人間のような身体は欲しくありませんか?」
『必要ない、と判断します』
むむむ……
困りました、凄く困りましたよ。
想定外です。
身体が必要ないみたいです。
どうしましょう、水晶さんって意外と重いから持ちたくないんですよね。
……もう問答無用で人型に変えてしまっていいんじゃないかな。
そもそも私は気が短い方です。
考えるより行動したい人でもあります、人ではないですが。
了承を取ろうと十分私は頑張りました、ええ頑張りましたとも。
だから、実力行使してもいいんじゃないでしょうか?
数分後、水晶さんは人型になりました。
次あたりから本編です