10 自身の能力を把握しましょう
さてさて、旅立ちの前に、クォーツ先生のスキル解説のお時間です!
私の断片を手に入れていたあの大蜘蛛さんは、元が非常に弱い種族グラッジスパイダーだったために、ガイコツ時代の私でも倒せました。
しかし、もし元々強い方が私の力を手にすれば、もしかすると今の私よりも遙かに格上の存在に進化する可能性があります。
そんな相手でも、私が完全復活するためには倒さなくてはなりません。
そこで、私たちの現在の能力を把握しておきましょう、ということになりました。
自分に何が出来るのか、それが分かっていなければ当然勝てる相手にも勝てません。
蜘蛛さんを消費すること一週間、その間クォーツと共にスキルの解析と研究をしました!
その結果を、ここで発表していきたいと思います!
最初は私、悪魔神タナトスからです。
まずは悪魔神たる私を象徴するスキル、『悪魔召喚lv,9』です。
この世界のスキルのレベルの最大値は十、よって、私はこの能力をほとんど習熟しているみたいです。
幼い頃の私って凄かったんですね。
このスキル、名の知れた大悪魔以外の悪魔を任意で召喚、隷属できる能力があります。
召喚と解放を繰り返しまくった結果判明しました。
大悪魔ほど多くの魔力を必要とするみたいですが、圧倒的魔力量を誇る私にとっては些細なことです。
本来は悪魔を召喚するだけのスキルなのですが、後述するとあるスキルの効果で代償なく悪魔を使役できるぶっ壊れた性能になっているみたいです。
次に『闇属性魔法lv,10』。
カンストしてます。
まあ、幻覚を見せたり洗脳したりといった地味な魔法ですし、カンストしているからといってどうということはないでしょう。
クォーツ曰くかなり高度で危険な魔法みたいですが、私にはその理由が分かりません。
幼女の私がマスター出来る魔法が高度で危険な訳がないでしょう。
もっとも、悪魔はもともと闇魔法に耐性を持つので、魔界では全然使えなかったという過去を顧みるに他種族に対しては少しは使えるのでは、とも思っているんですけどね。
続いて『剣術lv,4』『元素魔法lv,4』『結界術lv,2』。
文字通りの技術に関するスキルです。
元素魔法は木・火・土・金・水を司る魔法です。
個人的には土と金って分ける必要があるのかと疑問に思いますが、クォーツによると五行という考えに基づいたものみたいでこういうものみたいです。
その五行についての説明もしてくれたのですが、面倒だったのですべて聞き流しました。
使えれば理解する必要はないと思うんですよ、私。
こんなことを考えているなんて知れたら、姉様に叱られてしまいますけど。
『超感覚lv,8』は感覚の強化、『痛覚無効』は相変わらず仕事をしない、『全属性耐性lv,5』は様々な属性に対する身体の耐性です。
『痛覚無効』以外は言葉通りのスキルですね。
『痛覚無効』、いつになったら働くのでしょうか?
『再生lv,2』は部位欠損を修復するスキルで、その際魔力を消費します。
腕の肘から先ほどなら半日で回復、魔力の消費はそこそこといったところです。
嫌がる私の腕をクォーツが切断するという荒技で検証したので間違いないです。
超痛かったです。
『魔改造』に『大罪付与』。
これは、他人のスキルを改変するスキルと、大罪系スキルを付与するスキルです。
試したわけではありませんが、解析によると対象の了承がない場合は発動出来ないそうです。
ただ、使い方によってはどちらも味方にチート級スキルを、それも無制限に付けることが出来るのでかなり有能なスキルですね。
『魔人創造lv,3』は、新たな魔人を作り出すスキルです。
魔力を込めればそれだけ強力な魔人を作ることが出来るみたいです。
完全に解析しきれていないので、今後いろいろと試してみたいですね。
『反魂lv,9』『徴発lv,9』。
この二つは良く分かりませんでした。
謎のスキルです。
反魂はおそらく蘇生魔法でしょうが、徴発はどのようなスキルなのでしょうか?
試してみるのは、怖かったのでやめておきました。
これらも今後の研究課題です。
『魔人創造lv,3』は、
最後に『悪魔神』。
効果は、悪魔種の無条件での使役、聖属性以外の攻撃に対する不死性、聖属性への脆弱性付与。
つまり、全悪魔を使役出来て、聖属性以外では死ななくなって、聖属性に弱くなるスキルです。
結論からいうと、私のスキル性能はおかしいです。
もしこの世界がゲームだったら、バランス崩壊もいいところ。
こんなキャラ使っても楽しくなさそうです。
困難あってこそゲームは楽しくなるってものですから。
これに加えて、化け物のような身体能力と魔力量が私にはあります。
思わず慢心してしまうほど、私は強かったです。
クォーツの能力に移りましょう。
『叡知』『全知』『解析lv,7』『思考加速lv,1』『演算処理lv,1』。
これらは叡知の水晶自体の能力です。
組み合わせることで、魔力を消費してありとあらゆる知識を得られるそうです。
なかなか優秀なスキルです。
『悪魔神の加護』。
このスキルは、私の配下であることの証で他者から精神干渉を受けなくなる能力があります。
別に庇護した覚えはないのですが、いつの間にかそういうことになっていたみたいです。
どちらかというと、私がクォーツに守られていたような気がしますが。
最後に大罪系スキル、『嫉妬』。
これは、自らの心の中の嫉妬心を増幅させ魔力へと変換するスキルです。
簡単に言うと、嫉妬心による無限に増える魔力炉ってことですかね。
効果が発揮されると、溢れ出す魔力で体毛が黒く染まるみたい。
副作用として、保有しているだけで嫉妬心が増大していくらしいです。
クォーツ本人は上位魔人としての力を持っていますし、スキルも合わさってかなり強力な戦闘力を有していると言えるでしょう。
ちなみに、彼女はレベルアップの際に確認こそされたものの、容姿の変化についての警告はなかったみたいです。
スキルの性能を調べた結果、私は誰にも負ける気がしなくなりました。
慢心でしょうか、いいえ、正しい現状把握です。
慢心ではないです。
慢心ではありません。
慢心、かなぁ?
ま、まあ多少油断していても、私は不死性を持つので大概のことは平気でしょう。
偉い人は言いました、慢心せずして何が王か、と。
私はこれでも神なので、王以上に慢心しまくってもいいと思うんです。
「あまり驕らない方がよいですよ、|《所有者様》(マスター)」
窘められてしまいました。
いやいや、何をおっしゃるクォーツさん。
あなたは謙虚過ぎますよ。
謙虚すぎて嫌みったらしいです。
まあ、そんなこんなで。
解析と研究の結果を確認した晩、遂に蜘蛛の最後の部位がお腹に収まりました。
もはやここに留まる理由もないので、話し合いの末明日の朝この洞窟を抜けることになりました。
私が眠っている間に、クォーツが出口を見つけてくれていたみたいなので、そこは問題ありません。
え?
悪魔なのに寝るのかって?
もちろんですよ、今の私は悪魔である以前に稚児なんですから。
子どもは遊んで寝ることが仕事と聞いたことがあったので、実践しているのです。
もっとも、実際の私の幼少期は仕事漬けの日々でしたが。
では、私は明日に向けて眠ろうと思います。
皆さん、おやすみなさい。