第5話
サブタイトルは諦めました。私のボキャブラリーでは無理ですごめんなさい何でもします(何でもするとは言ってない)。
俺たちが向かったのは、奏町の中で一番大きな駅前の本屋だ。ここにはどこの本屋にでもある絵本や人気小説、雑誌の他にも専門的な参考書など、多種多様な本が揃えられており、店内にカフェまであるという超万能書店である。親の出張が多い俺は自分で料理をすることが多く、少し前まではここで買った料理に関する本を手放せなかったほどだ。もちろん今も頻繁に利用していることは言うまでもない。
俺は本屋に着いてすぐに、朝夷と別行動を始める。当たり前だ。誰がすき好んであいつと本屋を回るんだ。いや、普通の人ならそうするんだろうが少なくとも俺はそんなことは爪の先程も思わない。幸い朝夷も自分の読みたい本を探しているため、俺は自分一人の時間を満喫していた。
気がつくと時計の針は12時を回っていた。なかなか長い時間一人の時間を満喫していたようだ。そろそろ家に帰ろうかと考え、そういえばと朝夷の存在を思い出す。別に黙って帰っても良いのだが一声掛けないと後で面倒なことになりそうだ。
俺が朝夷を探し始めようとした、まさにその時。
「あれ?ヒロタカじゃん。久しぶりだね。」
俺は突然声をかけられた。聞いたことのある声だ。
「よう、宇津見。」
宇津見愛美。俺が人間不信に陥る原因になった女だ。件のいじめはこいつから始まった。そんなわけで俺はこいつが苦手であり嫌いだ。
「ねえ、中学卒業して以来じゃない?こんなとこで何してんの?」
「いや、友達と一緒に来たんだがそいつが勝手にどっかに行っちまって。」
「へー、てかあんた友達たんだ。ぼっちのイメージだったんだけど。ホント中学の頃友達いなかったよね。小学校の頃はそこまで酷くなかったと思うんだけど。」
誰のせいだと思ってんだ。
「中学に入ったときに友達作りに失敗してな。」
「ふーん、それで今は友達がいるんだ。高校デビューは成功したってこと?それとも今待ってるのは奇跡的にできた友達一号?」
「いや、今日のやつは……。」
「おまたせー。あれ、その子は?」
俺が愛美の質問攻めに困っていると、朝夷が戻ってきた。こればかりはこいつに助けられた。こいつに感謝する日が来るとは思わなかった。
「こいつは俺の小中の友達の宇津見だ。」
「へー。始めまして、タカヒロの高校の友達の朝夷舞です。」
「舞さんね、よろしく。それにしても、ヒロタカに女友達ねえ……。」
「ん、何か言いました?」
「いや、何でもないよ。じゃあ私はそろそろ帰るね。舞さん、ヒロタカと仲良くしてあげてね。」
「あ、はい、もちろんです。」
俺は宇津見が立ち去る一瞬、微笑んだのを見逃さなかった。
「すごくいい人そうだったね、さっきの子。」
「……そうだな。少なくとも外面は完璧だと思うよ。」
「え、なんだって?」
「独り言だ。それより目当ての物は見つかったのか?」
「うん、見つかったよ。わざわざ付き合ってくれてありがとね。」
「気にするな、俺も買いたい本があったから……。」
……買うの忘れてたな。
久しぶりに書いたので前半と後半で書き方が変わってるかも。愛美の名前を考えるのに半年かかりました。