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第2話

数日後。人付き合いが嫌いとはいえ、一応男として待ち合わせで女子より遅くなる訳にはいかない。そのため相手が早く来ることも考えて、俺は30分前に駅前に着いた。

俺が住んでいる奏町は特に何もない静かな町だが中心部にある奏駅は多くの路線が通っているため人口は多く、住宅街となっている。


しばらく待っていると、朝夷がやって来た。端的に言って可愛い。元々の質が良いのだが、彼女の幼いイメージと大人びた服装とのギャップがこれまた可愛い。


「遅くなってごめんねー。それにしても私より早く来るなんて実はやる気あるんじゃないの?」


「そんな訳あるか。男の役目ってだけだ。」


「わかってるよー。そんなに怒らなくてもいいじゃん。」


俺は特に怒っているつもりはないが彼女にはそう聞こえるらしい。そこらへんも俺に友達ができない原因になっているのだろう。


「じゃあ行こうか。」


彼女の言葉で俺たちは歩き始めた。同じイベントに行くのか、早朝にも関わらず電車には人が多くいた。


「これから行くイベントはかなり人気なのか?」


「そうだね。アニメ好きの人なら一度は行きたいイベントだからかなりたくさんの人が集まるよ。」


俺はアニメについては詳しくないが、日本のサブカルはそこまで進歩していたのか。軽く衝撃を受ける。

秋葉駅に着いた俺たちは人の波に流されるように電車を降りる。本来なら一息つきたい場面ではあるのだが…


「うわー…遅かったか。」


彼女の言うとおり、駅を出ると既に果てしない長さのぎょうれつができていた。改めて日本のオタク人口の多さに驚かされる。


「ところで開場は何時なんだ?」


「11時からだけど?」


開場までまだ4時間以上あるのにこの行列とは。


「本当は徹夜したいんだけど流石に親が許してくれないから。」


「もし徹夜できたら俺もお前に付き合って徹夜するはずだったのか?」


「え?当たり前じゃん。」


こいつ素で言ってきやがる。オタクでもないのにこんな行列に付き合わされる身にもなってみろ。

そうこうしているうちに開場時間の11時になった。てっきりオタクたちは開場になだれ込むのだと思っていた俺は、列をつくって入り口まで並ぶ人たちをを見て考えを改めた。…会場に入るまでは。


毎年大勢の人で賑わうこのイベントはかなり大きな会場が使われている。にもかかわらず見渡す限りの人の群れ。そこにいる人々は、誰もが周囲には気を使いつつも狙った獲物は逃がさない獣の目をしていた。無論、俺の隣にいるやつも例外ではない。

そこでは平和な争いが展開されていた。



数時間後。両手に大量の荷物を提げた俺と超満足そうな顔の朝夷が電車に乗っていた。


「いやー、大量大量。いい買い物ができたわー。家に帰ったら戦利品の吟味しなきゃ。」


「その戦利品は全て俺が持ってるんだが…」


「いいじゃん、男なんだし。だいたい誘われた時点で何となくわかってたでしょ?」


仰るとおりで。


「まあでも付き合ってもらって荷物持ちまでしてもらって何も無しじゃ流石にひどいからね。一つぐらい言うこと聞いてあげるよ。ただし俺に関わるな以外でね。」


「第一候補潰してくるなよ。」


「だってこれからも付き合ってもらうから。だいたいここまで来たらこんなこと頼めるのあんたぐらいだし。」


さいですか。


「だったら次どっか行くときは自分で荷物持てよ。男とはいえこんだけ持つのは大変だから。」


「男が持って大変なものを女に持たせる気?」


「だったら買わなければいいだろ。」


「それは無理。とにかく荷物は今後も持ってもらうから。あ、その代わりにあんたが行きたそうな場所に連れてってあげる。」


「俺が行きたい場所なんかない。」


「いや、絶対あるから。こうなったら意地でもテンション上げさせてやる!」


「ああ、やってみやがれ。」


そんなことを話しているうちに電車は奏駅に到着した。


「じゃあ、俺はこっちだから。」


それだけ言って俺は朝夷に背を向けて歩き出す。


「今日はありがとね!」


そんな声が聞こえたが俺はもちろん振り返らずに歩く。

歩きながらふと考える。誰かと出掛けたのはいつぶりだろうか、と。そして、悪くない一日だったと思っている自分に気づいた。

サブタイトルを何も考えずにボーイ・~・オタクにしたから次回から考えるのに苦労しそうです。例のごとく感想くれると喜びます。

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