第1話
昔から人を信じることができなかった。小学校の頃軽いイジメを受けていた。それが原因で友人ができても心のどこかでは裏があるに違いないと思っていた。そのせいで友人は小・中・高と上がるにつれ、減っていったが、その事を気にしてはいなかった。別に友人が欲しいとは思わなかったし、他の奴もこんな奴とは付き合いたくないだろう。
そんな訳で高校生活を一人で過ごし、冬休みに入ろうとしていた12月の下旬。周囲の人間はクリスマスの話題で騒がしくなり、迷惑であった。だが良い意味でも悪い意味でも関係を希薄にしておきたかった俺は、特に誰かに何を言うでもなく一人静かに自席に座っていた。そんな静寂は、一人の女子によって破られた。
「退屈そうだね?」
はじめ、自分に話しかけられているとは思わず無視していたのだが、二度目に名指しで声をかけられたため、気づかない訳にはいかなかった。
俺に話しかけてきた女、朝夷舞は元気そうな瞳をしていて身長が低いため、一見高校生には見えず、彼女自信もその事を教室で嘆いていた。だが外見は客観的に見て可愛く、道ですれ違ったら10人中8人は振り向であろう可愛さだった。そんな彼女が再び、
「毎日一人でいるけど退屈じゃないの?」
と言った。前述のとおりできるだけ関係を持ちたくなかったため、不機嫌そうに
「別に、そんなことはない。」
と言い放った。大抵の奴はこれで「そう…」と気まずげに去っていく。だが今回は勝手が違った、つまり彼女が
「嘘だね、見たら分かるもん。」
と言うので、仕方なく会話を続ける。
「俺が暇だろうとそうでなかろうとお
前には関係ないだろ。」
「関係なくないよ。暇なら付き合って欲しい事があるんだ。」
「そうか、じゃあ俺は暇じゃないね。悪かったな。」
「そう…て、今『じゃあ』って言ったじゃん!暇なのね?」
バレてしまった。流石にそこまで馬鹿ではないらしい。
「ああ、確かに暇だ。で、俺はお前の何に付き合えば良いんだ?」
厄介事を避けるのに失敗したら次はいかに早く終えてしまうかだ。
「実は私アニメが好きでさ。」
そう言って彼女は話し始めた。
「今度秋葉で好きなアニメのイベントがあるんだけど…」
秋葉といえばオタク文化が発展していることで有名な街だ。なるほどそこでならアニメのイベントも開催されるだろう。
「それと俺を誘うことに何の関係があるんだ。」
「ほら、普段遊んでる友達とは行けないじゃん。バレたくないし。でも行ってくれそうな人はみんな予定があるって言うし。その点あなたは暇そうじゃん。」
なんとも失礼極まりないがそのとおりなので反論のしようがない。だが…
「だったら一人で行けばいいだろ。」
「いや、一人はちょっと…女一人だけで秋葉に行くのってちょっとあれじゃん。」
「わかったよ。ようするにお前はアニメが好きなのを友達にバレたくないが一人で現地に行くのは嫌だから着いてこいと、そう言ってるんだな?」
「そのとおり!ということで25日の6時に奏駅に集合ね。遅れないでよ!」
それだけ言うと朝夷は他の友人の輪に戻っていった。まったく、俺もお人好しになったものだと呟いても、もちろんその声を聞いたものはこの教室にはいなかった。
今までより真面目に書いてみました(今までが手抜きだったわけではないよ)。あらすじもちゃんと考えた(今までが略)。続ける気満々なのでお待ち下さい。感想、アドバイス等いただけると嬉しいです。2話は近いうちに書き上げます。