第九十九話 風呂
北野 武 新選組 局長の仕事と、斎藤さんの働き掛けで、新選組の屯所の風呂に、少なくても京の都初の ガスで沸かす風呂が、出来ようとします。
時代は幕末、良くも悪くも 武士の世も、200年以上続いた平和な時代も、終わろうとしていた。年長者や家老など、歳上の者の方が偉いというルールも変革の時を迎え、のちに幕末の志士と呼ばれる 若者たちの手に、時代を創り動かすバトンが渡されていく。欧米列強からは、日本も新しいターゲットとされ、残念ながら 長らく鎖国政策をしていた徳川幕府には、欧米列強に抗う武力はなかった。そんな中、最後まで侍として、歴史と伝統を重んじ、徳川幕府と会津地方に味方をする、侍の集団が、俺たち 新選組だった。
俺 土方歳三の宝物 で、全ての人生通しての宝物でもあるピノコ・ナディア・哀姫が、新選組の玄関に居た俺に、逢いに来てくれた。朝からだったので、新選組の屯所にて、朝食を一緒に食べた。そして、哀姫がご機嫌な様子で、八番隊 隊長 安藤優子さんの手伝いをする中、新選組 馬鹿局長 北野 武君は、風呂にガス管を設置するため、一番隊 隊長 斎藤一の元へと向かった。斎藤さんは、俺が京の都に住む前から、新選組が組織される前から、京にてビジネスをしていたので、新しいモノを作る時には、頼れる存在だ。
「馬鹿トチーヤイ!安藤優子りんの、お手伝い終わったヤイよ」と哀姫は言い、俺の右隣りに、座る。この年齢が6歳で固定されている少女は、大切に取り扱わないと壊れてしまう。その分、大事にすると周りを笑顔にする、明るく無邪気な女の子だ。
「お手伝いが出来るなんて、お利口さんヤイね。ちゃんと、出汁の入っていない味噌汁はともかく、牛乳と源爺特製の牛肉料理を食べたかい?」と俺。
「モリモリ食べもした。しゅげえ、おいちかったヤイ」と哀姫。
「じゃあ 馬鹿局長が、新選組の屯所の風呂を、ガスで沸かそうと頑張っているから、新選組の玄関に置いてある座椅子にて、様子を見守ろう。斎藤さんも、一番隊の任務以外でも、姿を見せるだろうしね」と俺。
「馬鹿トチーヤイと一緒に居られるなら、何でもいいヤイ。馬鹿トチーヤイの親友の馬鹿オダギリにも、会えるなんて最高ヤイ」と哀姫。
俺と哀姫は、いつもの定位置 、新選組の玄関に置いてある座椅子に移動する。
座椅子にて、「馬鹿トチーヤイを、占領したヤイ」と、俺の腹の上で はしゃぐ哀姫を、「このガキンチョが!」と、俺がくすぐっていると、ぞろぞろと人を連れて、馬鹿局長と斎藤さんが、やって来た。
「おうっ、トシ坊!江戸には、ガスが使われているところもあって、斎藤さんに頼めば、新選組の屯所の風呂にも、ガスを通す事は出来るみたいだ」と、北野 武局長。
「江戸が、先かぁ…。日本史上初の、ガスで沸かす風呂が良かったんだけどなぁ」と俺。
「副長、ガス管を設置して 電気も灯して、24時間365日いつでも風呂に入れるようにすれば、日本史上初です」と斎藤さん。
「事故やガス大爆発は、起きないのか?」と俺。
「おうっ、それがトシ坊。ガス自体は、無味無臭なんだ。だからガスが漏れないように、設置をしっかりしなきゃな。大体 ガス漏れは、音で分かるらしい」と北野 武局長。
「音だけじゃ駄目だろ。ガス自体が無味無臭なら、臭いをつければいいんだよ。嫌な臭い、オナラのような臭いとか、卵の腐った時のような臭いをね。その試みを、まずは京の都で始めて、日本 世界と広めればいい」と俺。
「そうか!ガス自体に、最初から臭いを付けとけばいいのか!それなら、ガス漏れが臭いで分かる。さすが、新選組 副長、土方殿だ!」と、答えが分かった ガスの設置の為に連れて来られた者から、歓声が湧く。
「じゃあ もともと新選組の屯所の風呂は、ガスで沸かすように設計されて造ってあるから、あとは よろしく。電気も通して電球を付けるなら、感電にも気をつけて。俺は、俺の宝物 哀姫と遊んでるから」と俺。
「じゃあ 副長は、哀姫様のお守りを、よろしくお願いします。よしっ、今日中にガスで沸かす風呂を、作るぞ!」と斎藤さん。
それからは、「臭いだ」「電球だ」「既に、ガス管がある」と、新選組の屯所の風呂周りは、ガヤガヤとし出す。そんな中でも、四番隊は 御用改めへ出向き、生きて帰って来る。八番隊は、将来 日本中で ガス管の設置作業をするであろう者たちに、炊き出しをしていく。
決まった事は、当面はガスの鉄製の入れ物を小分けして、そのガスで風呂を沸かす。安全と利便性が確かめられたら、新選組の屯所をモデルケースに、京の都や日本中で、厨房も風呂も ガスで沸かせることにするとのこと。電球も、技術を確立したら ちゃんと付ける事となった。
「じゃあ、馬鹿局長も 斎藤さんも 序でに業者の人たちも、お疲れ様。厨房用のガスは全開でいいけど、風呂のガスは温度調節ができるようにね。街として都市ガスを整備するのも、京もそうだし 江戸 大阪など、大都市圏から始めてくれ。ガス管の整備費用や、ガス代も 払えるだろうからね。近い将来は、日本中に 上下水道 ガス管 電気と、インフラ整備をしていくことになるだろうから、今日 来てくれた業者の方々は、そのまま都市整備の仕事をしていってくれ。水も電気もガスも、必要だからね」と俺。
「トシ坊、ガス管の設置代や ガス料金は、いくらぐらいする?」と、北野 武局長。
「うん、ガス管の設置料金は、政治家が公費で出す。月々のガス料金は、収入の1割以内 詳しくは、北野 勝 勘定方筆頭と、数字を詰めてくれ。いくら利便性が高くなっても、月々の料金を払えなければ、意味がないからね」と俺。
「おうっ、数字の事は、弟の勝と話し合って決めればいいんだな。了解した。斎藤さん、忙しい中 おいらの仕事なのに、すまなかった。ありがとう。じゃあ トシ坊、おいらは勝と 今日来てくれた業者の者たちと、都市計画の話し合いをしてくるよ」と北野 武局長。
「いってらっしゃい。俺はいつか、24時間365日入れる風呂を楽しみに、門番も兼ねて ここで哀姫と、遊んでるよ」と俺。
「馬鹿トチーヤイと遊べる!馬鹿トチーヤイと一緒に居られる!」と、喜ぶ 哀姫。
「哀姫様、モリモリ副長と遊んでてください。一番隊の今日の任務が終わったら、お団子でも買って来ますので」と斎藤さん。
「お団子ヤイか!楽しみヤイね。馬鹿オダギリがお団子買って、無事に帰って来ることをお持ち申すヤイ」と哀姫。
この日は、北野 武局長は得意の政治力を活かし、金銭面は 北野 勝 勘定方筆頭が、数字を決めていき この兄弟は、力を合わせたら 政治はこんなに上手くいくのだなと、俺は感心した。また 斎藤さんは、団子は団子でも 団子屋の屋台ごと 新選組の玄関まで連れて来て、とても哀姫1人では食べ切れないので、新選組で暮らす 子供たち皆んなで、「美味い、美味い」言いながら 食べ切った。団子屋の屋台の店主も、売り切れた団子の料金を、斎藤さんから えぐいぐらい貰い、多過ぎると断わろとしても、侍のお金は、三大長老ぐらいじゃないと断れないと俺から聞き、それなら毎日 新選組の所まで、屋台ごと団子を売りに来ますと言い、店主は丁寧にお礼を言い帰って行った。
俺は、いつもそうだが 俺との本日のお別れをムズがる哀姫を説得し、哀姫の住む民家まで送り、この日はこれで終わりとなった。
《俺の過去、土方歳三。2017/10/11今現在は、他の俺の過去たちと同じく、天国にて 再び地球へ帰還する 出番を待っている筈だ。ただし 2回目の東 清二として 最後の最後の人生、その分 最低最悪の人生を送っている 今の俺が、少なくても念能力者になり、這い上がらなければならない。2017/10/12今現在、俺の居るところは、クソ大和田も 大和田の側の人間たちも居ない、例えるなら 深海に、俺は身を潜めている。そこは社会の最低辺で、社会人として最低限度の暮らししか出来ていないけど、いつか当時の俺が、尾崎豊だった時に歌詞に込めた「ギリギリの暮らしなら、見つけられる筈さ」と歌っていた通り、ギリギリの暮らしなら見つけられた。クソ大和田や大和田の側の人間たちから成る 敵の手の内で、生き地獄をのたうち回っていた俺は、そこから這い出て 引っ越しと移動を繰り返すことで、敵が周りには存在しないギリギリの暮らしなら送れている。寿命まで、あと14年。カウントダウンは、既に始まっている。あとは、俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫、簡単じゃない事は分かる。でも、逢いに来てくれ。哀姫を拾って以来、これだけ長い期間 逢えなかったことはないから。それと念能力、とっとと起きるか 復活しろ!それを、日本中どころか 世界中が、待ってんだ》
こうして 新選組の屯所の風呂に、ガスが供給されようとしている。この元々は歴史に存在しなかった 新選組 副長、土方歳三としての人生は、1回目の東 清二としての人生を経験した後だった。俺以外にも、そういう者もいてこの時代に仮名を名乗る者も、多い。よって、創意工夫をすれば 水道 ガス 電気が、街のライフラインとして創れることを知っていたし、未来を経験した者として、街を発展させていかなければならない。次回の話は、ガスで沸かす風呂の温度調節の調子を見る 馬鹿局長と、八番隊 隊長 安藤優子さんの、風呂も覗く 馬鹿局長の話です。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!