第九十七話 報酬
池田屋事件 解決の手柄に、徳川幕府より報酬が出るのですが、約束の時間にも来ない。「大物は、遅れて登場する」という、糞詐欺師 クソ高倉健のいつものやり口の所為です。当然、正座させて 新選組の敷地内、立ち入り禁止にします。
時代は幕末期、そもそも歴史には存在しなかった 俺たち新選組。ただし、生まれ堕ちた以上 俺はこの時代、侍に成り、そうあり続けるように決めた。歴史と伝統を重んじる、我が日本。それならば日本人として、倒されて滅びる事が分かっていても、最後まで徳川幕府の味方でいようとも決めた。そんな中、欧米列強が開国を迫り 鎖国をしていた徳川幕府には、外国との交渉能力がなかった。戦争ばかりをしていた欧米列強には、火力と技術力があり 徳川幕府は、なし崩し的に外国の主張を受け入れていくしかなかった。そんな徳川幕府を弱腰と非難し、全国の若者たちが拳を突き上げようとしていた。
そして、実際に動いたのが、長州藩士と脱藩浪士、長州派の公家たちだ。京の都に火を放ち、天皇を長州藩にさらうという計画で、池田屋事件とのちに呼ばれる。その池田屋事件を解決したのが、新選組の侍達だ。長州藩士と公家たちは、長州藩へと落ち延び、天皇の無事も 新選組は確認し、新選組の名と存在が、徳川幕府にも全国にも知られることとなった。
そんな中、俺 土方歳三は、いつも通り 新選組の玄関に置いてある座椅子にて、ゴロゴロしている。もう一方の座椅子では、新選組 一番隊 隊長 斎藤一が、徳川幕府の者の来客を待っている。ここまでは、いつもとあまり変わらないが、俺の全ての人生通しての宝物 ピノコ・ナディア・哀姫が、新選組の場所と俺の居場所を、突き止めたという違いがあった。
案の定、哀姫がひょっこり現れ、モジモジしながら「馬鹿 斎藤さん、馬鹿 斎藤さん。馬鹿トチーヤイと、遊んでも いいヤイか?」と、斎藤さんに聞く。
「バカトチーヤイ?」と斎藤さん。
哀姫は、俺を指差す。
「全然、良いですよ」と斎藤さん。
「全然、良い!全然、良い!」と喜ぶ 哀姫。
「もりもり、遊んで下さい」と斎藤さん。
「もりもり、遊ぶ!もりもり、遊ぶ!」と哀姫。
哀姫は、照れながら「馬鹿トチーヤイ!遊びに来たヤイよ」と言う。
「よく ちゃんと、1人で一度しか教えてないのに、新選組の玄関まで、たどり着けたね。そんなガキンチョは…。」と俺。
「そんなガキンチョは?」と哀姫。
「こちょこちょ攻撃だ」と俺。俺は、哀姫の脇腹をくすぐる。
「こちょこちょ禁止!こちょこちょ禁止ヤイ!まったく、馬鹿トチーヤイは カナLOVEなんやから」と哀姫。調子に乗った哀姫は、俺のお腹に座り ご機嫌な様子だ。
其れを、驚いた顔で見ていた斎藤さんは「副長。副長が探していた、トシさんの全ての人生通しての宝物が、そこに居る 哀姫様でしたよね?」と訊ねる。
「ああ。本名がフルネームで、ピノコ・ナディア・哀姫だ。ピノコという名は、当時の俺がブラックジャックとして、医者をしていた時に 付けた名だ。ナディアは、スペインのお姫様をカナがしてた時の名で、哀姫は いつもカナが、一人ぼっちで哀しんでいたから、俺がカナを拾おうと決めた時に、インスピレーションで思い出せるように、哀姫と名付けた。俺の宝物で、女子では 俺に一番近い円に居る子で、姫が付くのも当たり前のことだ」と俺。
「副長、きちんと俺の事も 紹介して下さい」と斎藤さん。
「うん、いいよ。哀姫、そこに居るのが 現在名 斎藤一という、俺の唯一無二の親友で、強くて優しくてお洒落で カッコいい男だ。覚えておいて、損はないよ」と俺。
「馬鹿トチーヤイの親友ヤイか!?それは、凄いヤイね。カナチャリング ヤイ!よろしくお願いし申すヤイ」と哀姫。
「こちらこそ、よろしくお願いします。哀姫様、今の俺の 斎藤一という名は、自分で付けた この時代だけの名前です。本名は、オダギリ ジョーといいます。馬鹿オダギリで いいので、俺の名前も 覚えて貰えるなら、覚えて下さい」と斎藤さん。
「馬鹿オダギリ ヤイね。ちゃんと、覚え申すヤイ。馬鹿トチーヤイの親友やからね。覚えとかないと、アッチョンプリケツ ヤイからね」と哀姫。
すると「トシさーん!斎藤さんも、一番隊の出動の時間ですよー」と、新選組の元気印、一番隊 隊員 安藤 ジュンヤが言う。傍らには、同じく 一番隊 隊員 リュウスケも、居る。
「ウキッ」と、二日酔いであろう 沖田総司も、顔を出す。
「うん、一番隊の侍たち。見ての通り 俺を占領している、このピノコ・ナディア・哀姫という名の少女が、俺の全ての人生通しての宝物だ。そして、この子を一人ぼっちにさせない事や、この子の安心安全を守ることが、俺にとって 最優先課題だ。それに比べたら、京の都の治安も 天皇の安心安全なんて、どうでもいい。斎藤さんに沖田も居れば、一番隊は大丈夫だろう。ジュンヤもリュウスケも、まずは 斎藤さんの言うことを聞いて、その次に沖田の言うことを聞いて、一番強い 一番隊として、やってみてくれ。俺は副長として、門番がてら ここに居るから」と俺。
「はい!まずは斎藤さんの言うことを聞いて、その次に沖田さんの言うことを聞く。かしこまりました!」と、元気のいい安藤 ジュンヤ。
「トシさん、トシさんが隊として行動しないのは、構わないのですが 今日ここに、幕府方から 来客がある筈なのです。もう、約束の刻限はとうに越しているのです。どうしますか?」と斎藤さん。
「徳川幕府からの来客なら、俺が対応するよ。幕府ごときが、斎藤さんとの約束の時間に遅れるとは、どうせ 糞詐欺師 クソ高倉健の仕業だろう。あの糞野郎は、約束も守らないし約束の時間にも、大幅に遅れるからな。少なくても クソ高倉健は、新選組の敷地内は、立ち入り禁止にしておくよ。じゃあ、斎藤さん含め 一番隊、御用改めに行ってらっしゃい」と俺。
一番隊が任務に出かけ、少し経つと 葵の御紋を身につけた徳川幕府の者と思われる者と、仏頂面をした会津藩筆頭家老 クソ高倉健が、新選組の玄関に姿を見せた。
「糞詐欺師 クソ高倉健は、新選組の敷地内に入ったら、素っ首 叩き斬るからな。で、徳川幕府の関係者らしき者は、約束の時間にも 大幅に遅れておいて、何の用だ?」と俺。
「きよじ君、大物は遅れて…。」と、クソ高倉健。
「話しかけてくるんじゃねえ!糞詐欺師、ここに居たかったら そこで正座でもしてろ。今の俺の名は、土方歳三だ。直ぐに、俺や俺の側の人間を売る奴に、用はねえからよ」と俺。
都合が悪くなると、いつも沈黙してやり過ごす クソ高倉健は、沈黙した後、しぶしぶ正座した。
「徳川幕府より 、名代として来た者です。この度は 池田屋事件を、無事解決頂き 御礼と幾ばくかの金子を、渡しに来ました。貴殿は、新選組 副長 土方歳三殿に、相違御座いませんか?」と、幕府の名代を名乗る男。
「ああ、新選組 副長には、相違ねえよ。池田屋事件 解決は、俺の手柄ではないけどな。そんで、幕府ごときの名代、一番隊 隊長がわざわざお前が来るのを待っていたんだけどな。約束の時間には、だいぶ遅れたのか?」と俺。
「だいぶ遅れました…。この会津藩筆頭家老の者が、大物は遅れて登場すると言い、効かない者で…。」と幕府の名代。
「ああ。糞詐欺師 クソ高倉健のいつもの汚い手口だ。他にも、沈黙に 二枚舌とかな。もうすぐ一番隊が帰って来て、四番隊が御用改めに行くから、幕府の名代とはいえ 約束の時間に遅れたなら、そこで正座して待ってろ」と俺。
「はい…。」と幕府の名代の男。その場に、正座する。
そろそろ一番隊が帰って来る時間で、四番隊の侍たちが、玄関へと出て来た。
「近藤さんに野口君、徳川幕府の名代を名乗る男が、約束の時間に大幅に遅れて、そこに正座してるよ。池田屋事件の手柄は、君たち2人のモノだから 報酬を受け取っといて。そんで、勘定方筆頭や 斎藤さんのおかげで、新選組には、ちゃんと金があるので、幕府からの報酬は、今日の御用改めの任務の折にでも、パァーと使っちゃって」と俺。
「がははははっ笑!幕府から、報酬ですか。頂いておきましょう」と近藤さん。
近藤さんと野口君は、幕府の名代を名乗る男から、報酬の数百両づつの金子と、懇切丁寧に御礼を言われる。
そして一番隊が、御用改めの命懸けの任務から、帰って来た。
「トシさーん!只今、戻りました。何故だか 最近、敵の数が減って 新選組は、最強の侍の組織だと、京の都のみんなから言われます」と、一番隊 隊員 安藤 ジュンヤ。
「うん、実際に この時代最強の侍の組織だからね。斎藤さん、幕府の名代を名乗る男が、遅れて到着し 御礼と金子を、近藤さんと野口君に渡されたよ。幕府の名代とやらが、約束の時間に遅れたのは、予想通り 糞詐欺師 クソ高倉健の仕業だった。大物は、遅れて到着する、と ほざいてね。斎藤さん、不幸の使者 クソ高倉健は、罪が多すぎて もはや終わった男だから、言うことも聞かなくていいし、最低限 関わらないようにね」と俺。
「かしこまりました。じゃあ そこの正座している2人、約束は守るものだし 時間も守るべきだ。幕府の名代の方は、次からは将軍を連れて来い。糞詐欺師 クソ高倉健の方は、もはや終わった糞野郎だと認識したから、新選組や会津地方に害があった時点で、その汚ねえ首 叩き斬るからな。2人とも、とっとと帰れ!」と斎藤さん。
斎藤さんの剣幕と、余りの鋭さに 幕府の名代を名乗る男も、糞詐欺師 クソ高倉健も、急ぎ 新選組の玄関をあとにした。
俺は「まだ、馬鹿トチーヤイと一緒に、居たいヤイ!」と言っている 哀姫を、「じゃあ、手繋ぎデートで帰ろう」と伝え、手を繋いで 哀姫の暮らす民家の前まで送った。最後に俺は、哀姫の頭を いい子いい子して、抱きしめてから帰した。哀姫は、「馬鹿トチーヤイ!今日のところは、これで見逃したるけど、明日の朝も 馬鹿トチーヤイの居るところに、逢いに行くヤイからね」と言い、哀姫は 自分の住む民家へ、入り この日は、これにて終了した。
《哀姫。年齢が6歳で固定されてる、明るく無邪気な女の子。そして 会う度に、直ぐにやる気と生きる気力を失う俺のことを、応援し続けてくれる。2017/09/26今現在、哀姫は、どこに存在するのだろうか?相変わらず俺は、生きる気力を失い、念能力の復活と 哀姫が望むなら、ずっとずっと一緒に居られる未来を、待ち続けている。そう、其れはそう遠くない未来》
こうして 近藤さんと野口君は、徳川幕府の名代を名乗る男から 報酬を受け取った。元 織田二郎三郎信長の俺にとっては、徳川幕府といっても どうでもいいが、共に侍を目指していた近藤さんにとっては、徳川幕府にも認められたと胸を張っていた。俺にとっての報酬は、生きとし生けるお金と、 哀姫が笑顔で喜んでいれば充分だが、幕末期 哀姫が、俺の全ての人生通しての宝物だと、この頃だと斎藤一、今だとオダギリジョーが認識してくれたので、有り難かった。次回の話は、元気一杯の哀姫の話と、風呂にガス管を新設します。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!