第七十三話 本名
新選組 局長の北野 誠君が、とうとう本名を打ち明けます。皆さんご存知の名前だと、思います。どうぞ、お楽しみください。
時は幕末、場所は京の都にて 時代が大きく変わろうとしていた。刀の時代が終わる、武士の世が終わろうとしている中、そんな時代に抗うように、俺たちは侍の集団 新選組を旗揚げした。局長に、いつもふざけてばかりいる 笑いの中心にいる漢 北野 誠。副長に、未だ少年の俺 土方歳三。一番隊 隊長に、俺の唯一無二の親友にして、武器を使った戦闘なら 最強の斎藤一。一番隊 隊員に、まだ少年である 天才 沖田総司。四番隊 隊長に、『天然理心流』の師範 近藤勇。四番隊 副隊長に、近藤さんの用心棒 無口でニヒルな野口君。最後の隊、八番隊に入ることが決まっている 井上源三郎は、2人在籍している百姓の最期を看取る世話をしている。他に、まだガキンチョだけど、侍を志した2人、安藤 ジュンヤに、口の聞けないリュウスケなどが居て、新たに学問を教える為に 新選組 北野 誠局長の弟、北野 勝君が入って来た。この事によって、新選組には 孤児院としてのこと機能も、併せ持つこととなった。
いつもふざけてばかりいる北野 誠局長が、稽古終わりの安藤君に、最近手に入れた日本刀の虎鉄を見せて自慢している。
「安藤先輩、この刀は虎鉄といって 金何百両以上の価値があるんだぞ」と、自慢する北野 誠君。
「そんな大金、どこにあるのですか?トシさんの刀は、何という刀ですか?」と、安藤 ジュンヤ君。
「うん、まず 金なら 斎藤さんが、用意してくれる。今の安藤君には、金が必要ないだけだ。そんでもって、俺が新調した刀の名は、和泉守兼定だ。この刀の価値は、安藤君と 北野局長で、目利きでもしてみてくれ」と俺。俺は、刀を置く。
「いずみもりかねさだ…。絶対、トシさんの刀の方が、価値があると思います!」と安藤君。
「和泉守兼定と書いて、いずみもりかねさだか…。そう言われてみると、土方殿の刀の方がいい気がする。おかしいな?おいら、一番値段の高い刀を選んだんだけど」と北野 誠局長。
「金だけじゃ、値段だけが価値とは 限らない。俺の刀、和泉守兼定が、北野局長の虎鉄に、負けるとも思わないしな。あと 北野局長、北野 勝君が学問を教えていた寺子屋の子供達が、まだ北野 勝君から学びたいと、十数人やって来ているので、面接がてら笑わせに行っといてくれ」と俺。
「おうっ、了解した。勝なんかを慕ってくるなんて、余程 学問がしたいんだな。おいらは学問なんかしたって、何の得にもならなかったけどな」と北野 誠。
「うん、だったら ちゃんと得になる学問を、教えればいいんだよ。北野 誠局長の経験を生かしてね。安藤ジュンヤ君にとっても、ちゃんとしたガキンチョの後輩が、たくさんできるぞ」と俺。
「うわーい!ちゃんと子供の後輩ができる。新選組は、子供はいないし」と安藤君。
「じゃあ、おいら ちょっくら、笑わせに行ってみるよ。勝は堅物だから、授業なんてつまらないだろうし」と北野 誠。
「新選組の玄関には、俺か斎藤さんが、警備も兼ねて 長椅子に座っているから、敷地内への出入りは、ちゃんと把握してるしな」と俺。
「トシさん!僕も、学問を習った方がいいですか?」と安藤君。
「うん、まず安藤君は、侍を目指している。そんでもって、侍にとって一番大事なのが、誇りや矜持だ。其れを守る為なら、人を斬ってもいい。勿論、バカにされた時にもね。だから、ある程度でいいから 学問は学ぼう。笑われたり、バカにされないようにもね。安藤君の場合は、午前中が学問、午後が『天然理心流』の稽古って感じかな」と俺。
「はい!」と安藤君。
「勿論、リュウスケも一緒でね」と俺。
「はい。リュウスケも、一緒かぁ。それなら、大丈夫です!」と安藤君。
俺は玄関の長椅子へ行き、さっそく安藤君は リュウスケと一緒に、学問を学ぶため、北野 勝君の居る、道場へ向かった。
俺が新選組の玄関にある長椅子で、門番よろしくゴロゴロしていると、珍しく真面目な顔をした 北野 誠君が、やって来た。
「土方殿!おいらの本名についてなのだけど…。」と北野 誠局長。
「うん、どうした?」と俺。
「いやー、弟の勝が本名名乗って 頑張っているのに、おいらが仮の名前じゃ、格好がつかないんじゃないかと思ってな。其処で、土方殿の意見を聞きたい」と北野 誠君。
「うん、どちらでもいい。例えば、沖田総司は本名だ。斎藤さんは、仮の名前だ。俺の場合は、この人生では 土方歳三が、この顔この身体だと本名だ。ただし 元々の、俺の本名は ドン・リュシフェルだ。一番最初の、俺オリジナルの名前で、俺にとっては本当の自分が、ドン・リュシフェルという存在だ。最後の最後の人生、その分 最低最悪の人生、2回目になるであろう 東 清二としての人生を終えると、やっと本当の自分に成れる。勿論 そうなれば、全宇宙の支配者で、俺たちをあちこちの時代に飛ばしたり、世界中を不幸に追い込んでる クソ大和田も 大和田の側の人間たちも、輪廻転生 関係なく、完全にぶっ消すことが出来る。不死身のクソ大和田をね。今も クソ大和田は、この俺の土方歳三としての人生に、うろちょろしてるし それを取り敢えず、叩き斬ってもいい存在、それが今の時代だと、侍に当たる。北野局長にしろ、北野 勝君も、第三の勢力 中立の存在だから、あとは自分で判断してくれ」と俺。
「おうっ、凄え話だったな。おいらも、勝も 第三の勢力か…。おいらは中立と言われたって、大和田の野郎が大嫌いだから、土方殿や 沖田君や 斎藤さん寄りだな。大和田の野郎を消せるなら、おいらも死んで消えて無くなっても、問題ないしな。改めまして、新選組 副長、土方歳三殿!おいらの本名は、北野に 武士の武と書いて、武といいます。改めまして、よろしくお願いします」と、畏まって本名を明かした、北野 武 新選組局長。
「元々、北野局長の本名を、フルネームで 俺は知ってたし、こちらこそ よろしくな。北野 武 新選組局長殿。新選組の者たちに、本名を明かすのは 次みんなが、集まった時にでもしよう」と俺。
「おうっ、了解した。弟の勝が本名明かしてるのに、おいらが仮名じゃ 格好がつかないしな」と北野局長。
「新選組においては、俺より上にいる 北野 武局長殿か。まだ歴史の教科書にも載っていない新しい歴史だけど、これで新選組の未来は明るい。ありがとな、北野 武君」と俺。
「おっ、本名明かしただけで、土方殿に褒められた。本名 名乗ったからには、おいらも ちゃんとしないとな」と北野 武君。
《2017/04/08今現在の俺にとっては、土方歳三は自分の過去に当たるけど、地球に居ないだけで、ちゃんと土方歳三は存在している。今現在の俺が、念能力者になるなり 寿命を迎えれば、ずっと地球に居る訳ではないけど、再び 土方歳三は 他の俺の過去たちと共に、姿を現わすだろう。俺は、俺の過去たちを具現化出来る。なので、俺の過去たちの人生も 無駄ではない。2017/04/08今現在の俺は、地位も名誉も金も持たず、生き地獄をのたうち回っているけど、確かな事は 長く生まれ変わり続けた俺にとっても、この東 清二としての人生が、本当の本当に最後の最後の人生だ。もはや、死ぬことなんて 全く怖くない。それが寿命なら、望むところだ。あとは、ずっと待ってんだ。俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫が、会いに来てくれることを。強力過ぎて 禁止されている、俺の念能力が復活することを。そうすれば、負の連鎖 不幸の連鎖を生み出し続ける、全宇宙の支配者で不死身のクソ大和田を、ぶっ消すことができる。長く見積もっても、あと15年以内にね》
こうして、新選組局長 北野 武君が、本名を明かした。この幕末の動乱期の時代は、簡単に本名を明かすと命の危険を伴うリスクのあることだ。ただし北野 武君にとっては、これが最初の人生ではなく、最後の人生でもない。其れに、侍の集団たる新選組の局長が仮名では、誠意が見せられない。なので、組織としての新選組にとっても、北野 武局長が本名を名乗り、存在してくれるのは有り難かったりする。次回の話は、皆さんはあまりご存知ないかもしれませんが、『取引』といって、シャレにならない交渉を、井上源三郎が、俺に持ちかけてきます。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!