第七十二話 愛刀
武士の命といわれる刀を、北野局長と一緒に買いに行き、 手に入れる話です。また、北野 勝君の学問を教える環境も、整います。
時代は幕末、俺たちは京にて 侍の集団、新選組を旗揚げした。まだ出来たばかりの組織だが、なかなかの強者揃いだ。新選組の局長に、人を笑わせる事が好きな いつもふざけてばかりいる 北野 誠。副長に、まだ少年の俺 土方歳三。一番隊 隊長に、俺の唯一無二の親友で 武器を使っての戦闘なら、おおよそ世界一の斎藤一。一番隊 隊員に、此方も少年の天才 沖田総司。四番隊 隊長に、天然理心流の師範で、相手を飲み込む 気組の使い手 近藤勇。四番隊 副隊長に、近藤さんの用心棒で、無口でニヒルな 野口君。他に、今は2人居る年老いた百姓たちの世話をしている、八番隊に入ることが内定している 井上源三郎。見習いに、ガキンチョの安藤 ジュンヤとガキンチョで、口の聞けない リュウスケがいる。そして、北野局長の弟 北野 勝君が加わり、新選組は より高みを目指す。
新選組の道場内に、机と椅子を並べ 勉学の出来る環境を整えた。先生は、北野 誠局長の弟、北野 勝君だ。その北野 勝君の用意した教科書を、俺が読んでみると、なかなか興味深いし 面白い。特に歴史の教科書は、俺の知ってる歴史と、教科書に載っている歴史に、食い違いがあり そこは今後 北野 勝君と俺で、話し合うことにした。とりあえずは、新選組で教える学問は、国語と算数だけだしね。入門はね。応用は、その後だ。
「じゃあ 北野 勝君、勉強を教える環境は整っただろう?」と俺。
「はい!勉強机ばかりか、座椅子まで。充分です」
「勝には、勿体無い 環境だな」と北野 誠君。
「歴史の教科書だけは、俺もそうだし きっと北野 誠局長の知ってる 体験している、歴史がある。その内、北野 勝君の教える学問の深度が深まったら、歴史の記憶の擦り合わせをしよう。日本の歴史だけじゃなく、世界の歴史もね」と俺。
「はい。かしこまりました」と北野 勝君。
「おうっ、歴史だったら おいらも得意だぞ。彼方此方の時代に飛ばされて、その中で 見てきた歴史があるからな」と北野 誠局長。
「だろうな。彼方此方 飛ばされているのは、俺も同じだ。クソ大和田が全宇宙の支配者に成ってからは、ろくなことがない。この時代なら、本名が名乗れないようにね。北野 誠君?」と俺。
「おうっ、おっかねえー。おいらも、大丈夫そうなら 本名名乗らないとな」と北野 誠君。
「それじゃあ、俺は刀を買いに行ってくるから、学問の件は 北野 勝君に、任せるよ。俺は新選組の副長のくせに、刀を持っていないからな」と俺。
「それ、おいらも 一緒に、同行していいかい?土方殿の刀の目利きも、見てみたいしな」と北野 誠君。
「ああ。いいよ」と俺。
俺と北野 誠局長で、新選組の外へ出る。そして、刀がたくさん並んでいる、刀市へ到着した。
「おうっ、刀がたくさんあるな。おいらは、どれにしようかな」と北野局長。
「北野局長、まず刀の相場を見て知って、其れから 自分が気に入った刀を買った方がいい。それにしても、日本刀は こんなに種類があるんだな」と俺。
「よしっ、おいらは おいらの予算内で、一番高い刀を買おう。この金で、一番高い刀を売ってくれ」と北野局長。
「馬鹿!それじゃ、目利きも糞もないじゃねえか。まあ、いいけど」と俺。
「土方殿!一番高いのだと、この虎鉄という刀だそうだけど、おいらは これにするよ」と北野局長。
「虎鉄か…。きっと、いい刀だ。北野局長、刀は武士の命とも言うから、血を吸わせるたびに ちゃんと手入れして、使っていかなきゃ駄目だぞ」と俺。
「おうっ、了解した。じゃあ、残った金で 酒でも呑んで、新選組の屯所へ帰るよ」と言い残し、北野局長は帰って行った。
刀市の店主に「若いお侍さん!どんな刀をお求めで?」と、俺は声をかけられ「妖刀とか魔刀とか。その上、出来たら 長く使える刀がいい」と俺は答える。
ただし、刀市の店主の勧める刀は、俺の予算では買えない。そこで、持ち手はボロボロだが キラリと光る日本刀を、俺は見つけた。
「店主!この刀は、どうだい?」と俺。
「それは持ち手が痛んでいるから、二束三文ぐらいかな」と店主。
「うおっ、俺の予算で 買えるじゃねえか。業物の名は、あるのかい?」と俺。
「有ります。和泉守兼定という名です」と店主。
「和泉守兼定か…。なかなかいいな。これで、二束三文か。持ち手を、自分で直せばいい。じゃあ 店主、一両だ」と俺。店主に、金を一両渡す。
「多いです、多いです」と店主。
「多いなら、持ち手のところを俺が直すから、紐と直し方を都合してくれ」
「かしこまりました」と店主。
和泉守兼定という名の日本刀を、本身だけにして 一から持ち手を作り変える。元来 俺は、手先が器用なので 店主に教えてもらいながら、いい感じに刀が仕上がってきた。
「教えた以上に、出来るのですね。時に、若いお侍さん。名は、何という名ですか?」と刀市の店主。
「ああ。新選組 副長の土方歳三だよ」と俺。
「お侍さん!新選組の副長だったのですか!?土方歳三という名も、斎藤一とともに、京の都の町娘に一二を争う 人気のお侍さんじゃないですか!そのお侍さんが、二束三文の刀を…。新選組 副長の土方歳三様、うちで売っている刀、どれでも好きな物を持っていって下さい」と店主。
「そういう訳には、いかないよ。其れにもう、俺の愛刀になる 和泉守兼定が、仕上がったからな」と俺。
「では、脇差しは何ですか?」と店主。
「ない」と俺。
「其れでは、この脇差しを。うちの刀市で、一番の脇差しです」と店主。
「俺の所持金、あと3両しかないけど。俺の場合、武士は食わねど高楊枝を地でいってるからな。ナハハハハッ笑!」と俺。
「もう 其れでは、清水の舞台から跳び下りる気持ちで、あと3両だけ頂いておきます。新選組の副長 土方歳三殿は、うちにとって 最高のお客様でした!」と店主。
「うん、そう言ってもらえると助かる。じゃあ 和泉守兼定の本刀と、其れより高い 脇差しを、持って帰るよ。また新選組の者が、刀を買いに行く時は、ここの刀市を勧めとくよ」と俺。
「はい!」と店主。
「脇差しの方は、ありがとな。じゃあな」と俺。俺は、刀市を去り 新選組の屯所へと向かう。去り際、刀市の店主が、何度も笑顔で 頭を下げていた。屯所へ帰ると、北野 誠局長が、自分の刀の虎鉄を大袈裟に、自慢をしていた。俺は其れを放っておいて、俺の愛刀 和泉守兼定と脇差しを撫で、晴れ晴れしい気持ちでいた。いい買い物も出来たし、『これで、戦える』とね。
《2017/03/29今現在の俺は、未だ続く 生き地獄をのたうち回っている。俺の思いや想い、考えに関係なく 容赦なく明日がやって来る、といった感じだ。この生き地獄を終わらせる方法は、3つある。1、俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫が、会いに来てくれること。2、寿命を迎える。3、念能力者になる。この3つの どれか1つでも叶えば、俺は深海から 生還することができる。このゴミみたいな糞みたいな 捨て人生を、終わらせることができる。最低最悪の人生、その分 最後の最後の人生。覚悟はしていたけど、これ程 シンドイとは…。頼む!俺の3つの願い、どれか1つでも叶え!》
こうして、この新選組 副長 土方歳三としては、ずっと愛用する 本刀 和泉守兼定と 其れより高価な脇差しを手に入れた。此の先、散々 人を斬り 血を吸わせ、妖刀とか魔刀となる。因みに、2017年3月29日今現在の刀の所有権は、和泉守兼定は安藤 ジュンヤで、脇差しの方は リュウスケだったりする。俺が念能力者になったら、プレゼントしないとな。次回の話は、刀の自慢対決と新選組 局長 北野 誠君の、本名についてです。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!