第七十一話 弟君
新選組に、北野局長の弟 北野 勝君が、入ってくる話です。
時代は幕末、京にて 俺たちは、新選組を旗揚げした。もう武士の世も終わり、刀より算盤の方が良い事は、分かっていたが、この時代でしか成れない 侍になりたかった。新選組の局長に、ガキ大将がそのまま中年の大人の男に成った ふざけては人を笑わせる 北野 誠君。副長は、まだ少年だけど 俺 土方歳三。一番隊 隊長に、俺の唯一無二の親友 斎藤一。一番隊 隊員、此方もまだ少年の沖田総司。四番隊 隊長、近藤勇。四番隊 副隊長、野口君。他にも、八番隊に入ることが決まっている、今は百姓たちの世話をしている中年の男 井上源三郎。侍を志す まだ見習いのガキンチョたち、安藤 ジュンヤに 口の聞けない リュウスケなどがいる。そして、まずは新選組の看板を創るところからスタートだ。
「じゃあ、北野 誠君!看板に、新しく選んだ者たちという事で、新選組と書いて。新選組 局長としての、初仕事だ」と俺。
「横書き?縦書き?安藤 ジュンヤ先輩は、糞ガキ?」と北野君。筆を持ったまま、北野君は、安藤君に追いかけ回されている。
「北野君、何故 ふざけてばかりなのか…。横書きだと、将来書く方向が変わるから、縦書きで書いて。局長としての初仕事で、何で安藤君に追いかけ回されているのか?まったく」と俺。
「おうっ、副長 土方殿!縦書きで、新選組だな、了解した。序でに、安藤先輩の顔にも、まだ見習いと、書いておこう」と北野君。看板には、新選組と書いたが、安藤君の顔に 見習いと書き、また追いかけ回されている。局長はふざけてばかりだが、兎にも角にも 此れで新選組は、体を成した。
「トシさん!本当にふざけてばかりの、それも僕の後輩の北野さんが、新選組の局長なのですか?トシさんが、局長に成ればいいのに」と、仏頂面で 安藤 ジュンヤ君が言う。
「うん、北野君はふざけてばかりだけど、その結果 周りの人は笑顔になる。其れに、長い物には巻かれろ ということわざがあるように、北野君にも歴史があり、北野君の未来は明るい。そうして、新選組の未来も、明るくなってほしい。北野君は、其れが出来る人だよ」と俺。
「ふーん、僕には そうは思えないけど、トシさんがそう言うなら そうなのでしょう。北野局長!ちゃんと副長である、トシさんの言うことを聞かないとダメですからね」と安藤君。
「おうっ、了解した。安藤先輩!それと、副長 土方殿。おいらの弟を、新選組に入れてもらえる事は、出来るかい?弟は、寺子屋で学問を教えているから、安藤先輩やリュウスケ先輩に、学問を教えることぐらいは、出来るだろうし」と北野君。
「ああ。北野君の弟なら、大歓迎だよ。侍としてじゃなくても、読み書きや計算ぐらいは出来ないとね。確かに、子供には学問も必要だ。安藤君にも、リュウスケ君にも。ただし、弟君の採用面接には、俺も参加するからな」と俺。
「おうっ、了解した。早速、連れてくるよ」と言い、北野君は 弟の元へと、出掛けて行った。
「トシさん!僕もリュウスケも、学問が必要なのですか?」と安藤君。
「うん、もう既に 安藤君もリュウスケも、自分の身を守れるぐらい充分に強い。日本一の道場で、『天然理心流』を学んでいるしね。だったら軽めでいいから、勉強もしないとね」と俺。
「はい!」と安藤君。
そうこうしていると、この時代に眼鏡をかけた 勉強だけは出来そうな、北野君の弟とみられる中年の男が、顔を出した。
「この方が、新選組 副長の土方歳三殿だ。土方殿!この男が、勉強しか出来ない おいらの弟だ」と北野君。
「新選組の副長、土方歳三だ。名を名乗れ」と俺。
「北野に 勝つという漢字で、北野 勝と言います。運動も喧嘩も どちらも苦手ですが、勉強なら出来ます!どうか末席でいいので、新選組に入らせて下さい!」と、北野 勝と名乗った男。
「おいっ、勝!北野 勝って、本名じゃねえか。この時代は、偽名とか仮名を名乗った方がいいんだぞ」と北野 誠君。
「別に 本名明かしている相手が俺で、所属する組織が新選組なら、わざわざ偽名を名乗らなくてもいい。俺の場合も、この時代この顔この身体だと、本名は土方歳三だからな。まあ 念の為、北野弟と呼ぶことにするよ。ようこそ 新選組へ、北野弟君!」と俺。
「はい!ありがとうございます」と、北野 勝君。
「おうっ、勝が、新選組に入れた。きっと、まぐれだな」と北野 誠君。
「自分で紹介しておいて、まぐれ もないだろう。じゃあ 北野 誠局長!北野 弟君を、新選組の道場やら屯所やらを、案内しといて。子供に学問を教える係りの弟君として。出来たら 新選組に、孤児院としての機能も 欲しいしな。その点、学問を教えられる者が、入って来たのは有難い」と俺。
「おうっ、了解した。孤児院も兼ねてか…。それは、いいな。よし、勝付いて来い。色々、案内してやる」と北野 誠君。弟を連れて、案内をしに行く。
「トシさーん!また、新入りが入ったのですか?」と、稽古帰りの安藤君。いつも通り、リュウスケも一緒だ。
「うん、北野 誠君の弟で、北野 勝君だ。北野 弟君とでも、呼んでくれ。寺子屋で先生をしていたそうだから、学問の先生をしてもらうつもりだ。安藤君もリュウスケも、ある程度は勉強もしよう。既に、強さはあるだろうしね」と俺。
「僕たちも、学問を勉強か…。トシさん、僕は勉強 苦手なのですけど」と安藤君。
「うん、だから ある程度と言ってる。読み書きが出来る。計算ぐらいは出来るで、充分だしな。其れに新選組に、孤児院の機能を持たせる。安藤君やリュウスケのように、親も家族もいない子供も 其れなりにいるだろうしね。其れに、俺自身 親も家族もいないしね」と俺。
「そうか…。そうしたら、また後輩がたくさん出来るのですね。楽しみだー」と安藤君。
「そう言ってもらと、助かる。ちゃんと面接も、するしね。じゃあ 安藤君もリュウスケも、風呂に入ったら、源爺特製 牛肉料理を、食い散らかそうぜ」と俺。
「うわーい!やったー!」と安藤君。口は聞けないけど 話は分かるリュウスケも、喜んでいる。その上、「ウキウキ」言う、機嫌のいい沖田とも 宴会をし、この日は実りのある1日となった。
《2017/03/21今現在の俺は、何だか 嫌なことばかり思い出す。何で 真実を見れる『真実の目』を失ったのかとか、何で念能力を失ったとかね。そして俺は糞野郎じゃない筈だけど、糞みたいなゴミみたいな日々を送っている。せめて極道たちの居る 福岡に、行かなければ良かった。せめて、もっと早く 東京へ帰れれば良かった。俺が、俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫と暮らしていた 極道の館に、糞詐欺師 にて不幸の使者 クソ高倉健がやって来て、帰りやがらず 全宇宙の支配者 クソ大和田までやって来た。そして澤野という極道と そのかみさんが、ありえない大失態と大失敗を重ね、俺は福岡で 真実の目も哀姫も、序でに才能まで奪われた。その後やって来たのが、2017年3月21日まで続く、大和田の世だ。俺が東京へ帰ることで、関東大震災は防げたが、日本は災害大国になり、日本中どころか世界中が不幸になり、めちゃくちゃになり糞まみれになった。早く クソ大和田の世なんて、終わらせたいけど、其れには絶対条件 俺に念能力がいる。12歳になったら 念能力者に成れる筈が、今年で36歳になるのに一向に念能力が復活しない。ただ 待つしかないって、こんなにしんどいんだなぁ。念能力を、この両手に!》
こうして新選組に、北野局長の弟 北野 勝君が、入って来た。新選組の頃の俺には、学問の知識がなかったから、勉強を教えられる人材が入った事は有難い。駆け引きもせず、逃げも隠れもせず、北野 勝という本名を明かして、入って来た。其れが、どれ程の勇気のいることか?本名を明かしたら、簡単に命を奪われる時代だったから。次回の話は、侍のくせに刀を持っていない俺が、刀を買う話と、無駄に意地を張ります。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!