第七十話 新選
近藤勇さん対北野誠君の対決があり、その後 壬生浪士組の名称と人事を改めます。皆さんご存知の、名となると思います。
時代は幕末、京の壬生にて 侍を志す集団、その名も 壬生浪士組。脱藩浪士や不逞浪士の悪さを、取り締まっている。そんな壬生浪士組に、まだ少年の俺 土方歳三も居て、同じく少年の沖田総司や、その保護者 井上源三郎も名を連ねている。他にも 斎藤一、近藤勇、野口君などが居る。そして見習いのガキンチョ2人の安藤 ジュンヤにリュウスケも、侍を目指している。そんな中、新しく仲間に加わった 北野 誠と名乗る男。この男の存在で、壬生浪士組も 大きく変わろうとしていた。
壬生にある『天然理心流』の道場で、師範の近藤勇対 北野 誠の対決が、始まろうとしていた。真剣だと死人が出るので、木刀にて行う。その対決を、壬生浪士組の全員が見守っている。壬生浪士組は、侍を志す 強き漢たちの集団だから、遅かれ早かれどのぐらい強いのか?と こうなる。
近藤さんは、木刀を正眼に構え 御堂だにしない。いつもは ふざけてばっかりの北野君も、真剣な面持ちで 近藤さんの構えにどこか隙がないか、ギラギラとした人をも殺しそうな目をして構えている。ちなみに、審判が俺、立会人は斎藤さんだ。
北野君が、先に上段へ斬りかかる。近藤さんは、其れに対応して はね返す。北野君が、ならば下段へと攻撃をする。それでも、近藤さんに見切られ、通用しない。続けて北野君は、立て続けに 突きで攻撃する。此れには、さすがに近藤さんも、苦慮する。
〈北野 誠君。このガキ大将が、そのまま中年の大人の男になった男は、闘いにおける才能と喧嘩でのセンスがある。もともと才能を持って生まれた者が、戦いに勝ち続けると、ここまで強き漢になるのであろう〉
北野君が突きを繰り出しつつ、破れかぶれの攻撃に出て、攻勢になる。そこで近藤さんは、気合いを入れ直し、道場の空気が一変する。『気組』だ。北野君が迂闊に動けなくなり、近藤さんが木刀を大上段に構えたところで、「それまで!」と俺。「そこまで!」と斎藤さん。
「審判は俺だから、判定で近藤さんの勝ち。北野君も、負けは負けとしても、よく近藤さん相手に、此処まで闘えた。充分に強いし、大したものだ」と俺。
「木刀での対決で、天然理心流の『気組』を使う事になるとは」と近藤さん。
「土方殿!おいらの負けだから、おいら壬生浪士組を出て行くよ」と北野君。
「うんにゃあ、その必要はない。少なくても北野君には、自分も自分の大切なものも、守れるぐらいの強さはある。持って生まれた才能と、喧嘩で鍛えたセンスなのだろう。壬生浪士組を、辞めなきゃいけない理由もない」と俺。
「おうっ、おいら負けたのに、まだ居ていいんだな。良かった」と北野君。
「じゃ、斎藤さん。京都守護職の者に、壬生浪士組の名称を改める件と、侍として 如何して欲しいか、聞いといてくれ」と俺。
「かしこまりました。いよいよですね」と斎藤さん。
「ああ、いよいよだ。侍の集団としての組織の名称は、俺が考えるし募集もする。人事も改める。近藤さんも北野君も、見事な対決 御苦労だった。じゃ あとは、宴会でもしててくれ」と俺。
「北野さん!強かったのですね」と安藤君が言い、「おうっ、安藤先輩に褒められた」と、北野君はふざけている。
其れを聞きながら、俺は壬生浪士組の玄関にある椅子にて、新しい組織としての名称と、人事を考える。そんな折、生臭坊主こと 仏教の高僧 久米さんが、顔を出す。
「トシ君!少し見ない間に、また大きくなって。何か、考えごとですか?」と久米さん。仏教の高僧だけあって、相変わらず 察しがいい。
「うん、壬生浪士組の名を改めるのと、人事についてを考えてる」と俺。
「名を改めるのですか。壬生義士隊は、どうですか?」と久米さん。
「よく咄嗟に、そんな名が出てくるな。さすが、仏教の高僧をしているだけはある。ただ、まず壬生という地名を外したい。ずっと壬生に居る訳じゃないからね。隊は、採用するけど。まぁシンプル・イズ・ベストでいこう。漢字、三文字になっちゃうけど」と俺。
「名は、何と?」と久米さん。
「新しく選んだ者たち、から取って 新選組とする。きっと、まだ歴史の教科書に載っていない、新しい歴史だ。その分、人選をしっかりしないとな。新選組の中で、一番隊 二番隊というように、それぞれ隊を編成して組織作りをする。どうだ、仏教の高僧?」と俺。
「新選組!確かに 歴史にはないかもしれませんが、良い名です」と久米さん。
「よしっ、あとは斎藤さんの了承を得られれば、正式決定だ。久米さん、元気でな…。」と俺。
「元気でなって、死ぬ前のお別れの挨拶みたいじゃないですか。まったく、トシ君は。まだ寿命ではない筈ですよ」と久米さん。
「これから 正式に侍になるから、寿命なんて いつ尽きるか、分からないんだけどな。じゃっ、久米さん 御機嫌よう」と俺。
道場へ戻ると、案の定か?飲めや歌えやの宴会になっていた。せっかくなので、話題と笑いの中心にいる北野君の、面白い話を聞きながら ちびちびお酒を飲んでいると、斎藤さんも 戻ってきた。
「斎藤さん、壬生浪士組に変わる名称は考えたけど、京都守護職との侍になる件は、どうなった?」と俺。
「侍になる件は、ばっちりです。会津地方のため、幕府の側に立って 京の都の為に、侍として働いて欲しいとのことです。ただし、お金はあまり出せないとの事です」と斎藤さん。
「金か…、まぁ いいだろう。幸い斎藤さんが居て、他にも いい人材が揃ってる。刀さえあれば、金を稼ぐ手段ぐらいはある。斎藤さんは、もうとっくに侍だけど、とうとう俺たちも 侍の仲間入りかあ。気合い入れていかないとな」と俺。
「じゃあ、皆の衆!壬生浪士組は、名を改める!その名は、新しく選んだ者たちという事で、新選組。人事も、一新する。局長は、北野 誠君。副長は、俺 土方歳三。一番隊 隊長、斎藤一。一番隊 隊員、沖田総司。四番隊 隊長、近藤勇さん。四番隊 副隊長 野口君。これが、今のところ決まっている事だ。井上源三郎さんは、2人の百姓たちを看取った後に、最後の隊、八番隊の何かになってくれ。以上だ」と俺。
「土方殿!おいらが局長って、どのぐらいの位置づけかい?」と北野君。
「局長は、新選組のトップだ。日本語だと、最高責任者だ」と俺。
「ひえー、おいらがトップ。土方殿の副長は分かるとして、おいら 近藤さんに負けたのに、局長なのかい?」と北野君。
「うん、人を測る物差しは、何も強さだけではない。新選組の局長に必要なのは、政治力だと思う。それだと、北野君が多分、一番かな。既に 新選組には、強さはあるしね。斎藤さんと 近藤さんが、組織としてこの仕組みでいいのなら、とりあえず 此れでやってみよう」と俺。
「四番隊 隊長で、やっていきます」と近藤さん。
「俺も、一番隊 隊長で大丈夫です。別に、トシさんに 相談やお願いをしても いいんですよね?」と斎藤さん。
「ああ、勿論だ。各自 新選組 副長としての俺への、報告 連絡 相談はちゃんとするように。じゃあ、新選組 発足!えいえいおー!」と俺。
「えいえいおー」と皆の衆。
《この後に、新選組発足時のメンバーは、みんなばらばらになる。それには、良い面と悪い面があり、2017/03/11の今現在の俺は、1人で ただただ念能力が復活するのを、待ち続けている。今は、残念ながら 全宇宙の支配者 クソ大和田の世だ。そして俺の念能力が復活しだい、不死身のクソ大和田をぶっ消すことが出来る。この吐き気を催す時代、俺の挫折と敗北の人生、失われた30年を終わらせる。もう怯むこともない。怯える必要もない。この想い、哀姫へ届け!》
こうして、新選組は発足した。侍といったら、人斬り集団かもしれないけど、この時代 京の都の治安維持だったり、のちに日本で起きる内戦の終わらせ方には、やっぱり侍が必要だったりする。例えば俺の唯一の子分、菅原文太は、基本 正義だ。でも俺は、大義だったりする。大義を持った侍の集団が、新選組だ。次回の話は、北野 誠君の弟が、登場してきます。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!