第六十八話 密殺
壬生浪士組に巣食う 芹沢一派を、耐えに耐え 京の顔役4人の判断が揃い、とうとう ぶっ殺します。
時代は、幕末の動乱期。二百年以上続いた徳川幕府の支配も 衰え始め、武士の世が終わろうとしている。そんな時代に、俺 土方歳三は、仲間と共に侍を志す。京の都の壬生に居る仲間は、まだ少年の沖田総司、其れから もう中年の槍の使い手 井上源三郎。他に、普段は斎藤屋敷で、諜報や商い 果ては殺しもいとわない、俺の唯一無二の親友にして もはや侍の斎藤一。ピカピカの真新しい道場で稽古と宴会に励む、『天然理心流』の師範 近藤勇。その近藤さんの用心棒で、無口でニヒルな野口君。まだ ガキンチョなので、見習いの安藤 ジュンヤに、同じくガキンチョで尚且つ 口の聞けない リュウスケなどが壬生にて、侍を志す。そんな壬生浪士組に、芹沢鴨と その弟たち ヒロユキにケンジが、近藤さんの判断で、入って来た。俺は、耐え難きを耐え忍び難きを忍び、待っていた。近藤さんが、芹沢一派を処分すると判断するのをね。そして、その時がきた。
俺が、沖田や安藤君とリュウスケと一緒に、源爺の調理した牛肉料理を食べ、牛肉は肉の王様だーと話し合っていると、硬ばった顔つきの近藤さんと野口君が、やって来た。そして近藤さんは、相談したい事があるとのこと。
「どうせ、芹沢一派のことだろう?」と俺。
「はい!今日は大砲を持ち出して、豪商を強請りに行くとの事です」と近藤さん。
「旧式の大砲だ。大砲なんて どうでもいい。強請りに行く奴が悪い。芹沢鴨とその一派が、壬生浪士組に入る事を、俺は反対だと言ったよな?」と俺。
「はい」と近藤さん。
「其れなのに近藤さんは、入る事を認めたよな?」と俺。
「はい。失敗でした…」と近藤さん。
「じゃあ芹沢一派は、全員処分するとして、ちゃんと学習しろよ近藤さん。俺の言うことは聞く。俺に反対された事はしない。俺の言いつけは、必ず守る。出来るか?」と俺。
「はい!必ず 土方歳三殿の、言う通りに致します」と近藤さん。
「了解。せっかく出来たばかりの壬生の屯所と道場を、芹沢一派の汚い血で汚したくなかったから、大砲を持ち出しているとはいえ、外出しているのは丁度いい。侍方式で、処分という事でいいよな?」と俺。
「はい。素っ首を、叩き斬ります!」と近藤さん。
「じゃあ、そういう事で。沖田とガキンチョどもは、此処で待機で。芹沢一派が、壬生浪士組から、居なくなるぞ」と俺。
「うわあ、やったー!でも、どうやったら居なくなるのですか?」と安藤君。
「其れは、まだ壬生浪士組の見習いのガキンチョどもには、教えられないな。機密事項だ。ただ確かに居なくなるので、源爺 特製の神戸ビーフでも食べながら、吉報を待っててくれ」と俺。
「ウキッ」と、敬礼する沖田。
「はい!わかりました」と安藤君。リュウスケも、頷く。
「じゃあ 近藤さん、糞ゴミ共の処分と行こう」と俺。
俺 近藤さんと野口君で、先ずは 芹沢一派の下男に 俺が足の裏で蹴りを入れながら、壬生浪士組の敷地内から出し、芹沢鴨とその弟たちの場所まで、案内させることにした。すると屯所を出た所で、運命なのか必然なのか はたまた ただの偶然なのか、北野という男と斎藤さんと、遭遇した。
「おっ、土方殿!おいら やっぱり、芹沢一派は殺すことにしたよ。これ以上 京の都の人たちが、災厄や迷惑を被るのを見てられないからな」と北野さん。
「奇遇だねぇ。俺たちも、此れから芹沢一派を、ぶっ殺しに行くとこなんだよ。そんで今、芹沢一派の下男に案内させてるところだ。蹴りも入れながらね。斎藤さんも、用向きは芹沢一派の処分か?」と俺。
「はい」
「じゃあ 京の都の顔役 四天王、俺と近藤さんに斎藤さん、其れに北野さんで、芹沢一派を密殺しよう。殺しは殺しなので、一応内密にね」と俺。
「おうっ、そりゃあ いいな。おいらも、京の顔役四天王に入っているしな」と北野さん。
「芹沢一派といっても、芹沢極悪三兄弟に 俺が蹴り飛ばしている下男だけなので、4人対4人で戦うことにしよう。近藤さんと斎藤さんが、充分に強い事は知ってるので、野口君は、近藤さんが負けそうな時だけは加勢してくれ。ちなみに北野さんの強さは未知数なので、北野さんが闘う相手は、今俺がケツを蹴り上げてる、この下男だよ」と俺。
「土方殿!芹沢一派とはいえ、既に瀕死のその下男が、おいらの闘う相手じゃ おいら何の手柄にもならないじゃねえか」と北野さん。
「まぁ いいからいいから。北野さんに、負けてもらっちゃ困るんだよ。死んでもらっちゃ、もっと困るんだよ」と俺。
「顔役って、そういうものか。じゃあ、おいらの闘う相手は、この下男でいい。ただし、土方殿もそのお仲間たちも、おいらに取っても 負けてもらっても死んでもらっても困るからな」と北野さん。
「大丈夫。俺と斎藤さんは、史上最強スリートップの2人だし、『天然理心流』師範代の近藤さんの強さも、折り紙つきだよ。いざとなったら、用心棒の野口君も、控えてるしな」と俺。
そんな中、表札に八木と書かれた 一軒家に、芹沢一派の下男が逃げ込んだ。どうやら この八木と表札のある家が、芹沢一派の隠れ家みたいだ。そして門番よろしく、入り口の前に2人の男が立っていた。その1人は、全宇宙の支配者 クソ大和田。もう1人は知らない男だが、どうせ糞野郎なんだろう。
そして大和田は「ひじかたに、さいとうに、こんどうに、きたの、何だこの組み合わせ このメンツは!?」とだけ言い、後ろを向いて逃げ出した。
「相変わらず 大和田は、糞で雑魚だな」と北野さんは、大笑いしている。
「クソ大和田が、逃げ出したのは分かった。一度、脳天から竹割に、叩き斬っているからな。で、お前は誰だ?」と俺は問う。
「イヤッ待て!話が違う!分かった!名前は、そうだな…。乃木だ。オレもこの状況では、闘わない」と乃木と名乗る 中年の男が言う。
「この芹沢一派の隠れ家には、八木と表札があるんだけどな。まぁ いいや、乃木!誰と闘うか、お前が選べ」と俺。
「待て!オレにも、無理だ。帰る」と言って、乃木だか八木だか 知らねえ男は、この場を逃げ出した。
「じゃあ芹沢一派掃討、ちゃっちゃかやろう」と俺。各自、一軒家に乗り込み 対決と言っても、秒殺で 芹沢鴨と その弟のヒロユキとケンジ、そして俺を見張る役目をしていた下男も、全員 ただの骸と化した。此方の被害はなく、あるとすれば 俺は俺のオンボロ刀を、汚い血で汚れたし この期に捨てることにした。
「なんか、あっという間に片付いて、殺しは殺しでも 手応えがなかったな。おいらが闘った相手なんて、ただの瀕死の下男だったしな」と北野さん。
「うん、イビられた壬生浪士組に居る2人の百姓の分も、拷問している時間があれば良かったんだけど。クソ大和田に、八木だか乃木だか 知らねえ奴が門番に居たから、ちゃっちゃと対決にもならなかった殺しを終わらせるしかなかった」と俺。
「じゃあ トシさん!死体の後始末は此方で済ますので、お引き取りを」と斎藤さん。
「よしっ、じゃあ 近藤さん!壬生浪士組の屯所に帰って、憂さ晴らしに宴会としよう」と俺。
「ガハハハハッ笑!そう致すことにしましょう」と近藤さん。
「おうっ、宴会なら おいらも混ぜてくれ!」と北野。
「ああ、いいよ。ただ 俺たち3人が、早く此処を立ち去らないと、斎藤さんの仕事の邪魔になるので、とっとと帰ろう」と俺。
斎藤さんは斎藤さんで、死体の後始末を見事に成し遂げ、俺含めた他3人は、壬生浪士組の屯所で、糞野郎が居なくなったと、どんちゃん騒ぎの宴会となった。
《尻尾を巻いて逃げ出したクソ大和田も、腐っても 全宇宙の支配者で、同じく逃げ出した乃木を 、この後 日露戦争で 陸軍の要職に置き、日本の軍人をまともな策すら立てられず、突撃だけ繰り返し 大量の死者を出す事となる。歴史上 乃木は、殉死した事になっているが、真実はそんな事はなく、自決も出来ず また逃げ出している。その後、乃木は 表札にあったように、名を八木に変え、2017/02/20東 清二として、最後の最後の人生を送る 俺の中学生時代に、教頭として体育教師として、そしてバレーボール部の監督として現れ、俺の最低最悪の人生を彩る 糞野郎である。もう 八木に、隠語で ずから と呼んでいたけど、次に俺が 八木に会う時は、ぶっ飛ばして 拷問して ぶっ殺して ぶっ消す!俺から会いに行く気は さらさらないから、会うとしたら、俺が念能力者になった後だ。一度 八木には、道具を使われ 俺はボコボコにされてるし、復讐はちゃんと完遂しないとね。俺が待ち焦がれているのは哀姫だけど、念能力に関しては 散々待たされて、ぶち切れてるからな。あーあ、早く 終わりを始めたいなぁ。この失われた30年、俺の恋人の浜崎あゆみが「吐き気を催す時代」と呟いていた、俺が時代に機能していない時代を、終わらせなければ》
こうして壬生浪士組から、芹沢鴨と その弟ヒロユキとケンジ 見張りの下男は、処分した。これで、2人の百姓たちや ガキンチョ その他が、脅されたり殴られなくて済む。京の都の人たちも、芹沢一派に関しては、一安心だろう。俺としても、また 京の都を肩で風を切って歩き、屯所に帰っても機嫌が悪くならなくて済む。次回の話は、とうとう 宴会で気を良くした北野さんが、仲間になるかもです。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!