第六十七話 百姓
年老いて家族に見放され 壬生浪士組に居る百姓たちの知恵も借り、とうとう壬生浪士組の牛舎に、肉牛と乳牛がやって来ます。もはや侍の斎藤さんの力、恐るべし!という話です。
侍を志す集団、壬生浪士組。初期のメンバーは、俺 土方歳三に 天才 沖田総司、少し年配の槍の使い手 井上源三郎、そして普段は斎藤屋敷で過ごしている もはや侍の斎藤一。『天然理心流』の師範 近藤勇、その近藤さんの用心棒 無口でニヒルな野口君。まだ ガキンチョだけど、侍を志した 育ち盛り伸び盛りの安藤 ジュンヤと、未だに何故か分からないが、口の聞けない リュウスケ。その他に会津藩の推挙した若者や、家族に見捨てられた百姓などがいる。その壬生浪士組に、水戸藩脱藩浪士 芹沢鴨とその弟たち 極悪三兄弟が入って来た。なので俺は、芹沢一派はいずれ殺すと決め、百姓たちの知恵を聞くことにした。
百姓たちの世話は、人生を看取るのも含めて 源爺が担当しているが、俺も其処へ出向く。其処とは壬生浪士組の屯所に併設された豚小屋と牛舎で、今は豚だけが飼育されている。
「トシ君、機嫌が悪そうですね。何かあったのですか?」と源爺。
「ああ。壬生浪士組に、芹沢という糞野郎が3人も入って来たんだよ。しかも其奴ら 糞野郎だけあって、壬生浪士組だと名乗ったうえに、ユスリ タカリ カツアゲ 盗み、果ては強盗までするんだよ。芹沢一派は、近藤さんが処分すると判断したら、叩き斬る。一緒に居たくないから、源爺と沖田の顔でも見に来た次第だ」と俺。
「ウキーキッ」と沖田が抱き付いて来たので、俺は邪険に扱っておく。
「ところで源爺、豚はブヒブヒ元気だけど、牛はいつ飼い始めるんだ?せっかく壬生浪士組に百姓が居るんだし、肉牛と乳牛を飼育するうえで、百姓の知恵でも借りとかないかい?」と俺。
「トシ君、其れは良いですね。早速、取り掛かります。いま、紙と筆を持って来ます」と源爺。足早に、屯所へ向かった。
すると「トシさーん!」と、元気印の安藤君と、いつも安藤君と一緒に居る リュウスケがやって来た。
「おうっ、あんどう!安藤君もそうだし、リュウスケも沖田も、新しく壬生浪士組に入った芹沢一派には、近付かないように関わらないようにしてくれ。いずれ芹沢一派は、近藤さんが殺すと判断したら、ちゃんと処分しとくからね」と俺。
「はい!わかりました」と安藤君。沖田もリュウスケも、了解したみたいだ。
「じゃあ 源爺が戻って来たら、百姓たちの知恵でも聞くとしよう」と俺。
其処に、紙と筆を持った源爺が、急いだ様子で戻って来た。
「トシ君!お待たせしました!其れでは お百姓様たちから、今迄生きてきた分の知恵を授かりましょう」と源爺。
「ひえーっ、私たち百姓が、お侍様に授ける知恵など ありません。此処に置いてもらえるだけで充分です」と百姓の1人が、畏まって言う。もう1人の百姓も、同意見みたいだ。
「うん、まず 壬生浪士組には、米と酒はたんまりあるけど、お金は必要最低限しかない。だから、買うより飼いたい。長い事 百姓をしていたら、牛の飼い方育て方ぐらいは、知ってるんじゃないかい?」と俺。
2人の百姓は目を合わせ、「そのぐらいだったら、知ってます。牛を育てた事も、供養も兼ねて食べた事もあります」と百姓たちは言う。
「うん、ちゃんと知ってるじゃないか。何事も 経験則でものを言えたら、一番説得力があるんだよ。じゃあ斎藤さんにお願いして、斎藤屋敷でお金を融通してもらい、早速 肉牛と乳牛を買いに行こう」と俺。
俺 沖田 源爺 安藤君にリュウスケ、あと百姓2人と斎藤屋敷へ向かう。道中、安藤君は「うーしっうーしっ!」とはしゃぎ、沖田も「ウーキッウーキッ!」と、一緒にはしゃいでいる。斎藤屋敷に到着すると、使いの者がすぐに斎藤さんに、取り次いでくれた。斎藤さんに訳を話すと、お金もそうだし良い肉牛も乳牛も、用意してくれるとの事。さすが、もはや侍は話が早い。その上で斎藤さんに、壬生浪士組に糞野郎が、3人も入ったのか尋ねられた。
「ああ、俺は反対したけど、近藤さんの判断で、壬生浪士組に糞野郎が3人も入った。近藤さん曰く、天下に名高い 水戸藩脱藩浪士 芹沢鴨とその弟たちだとよ。芹沢は一派は、もう既に重大なミスを犯してるし、近藤さんが消すと判断したら、即座に芹沢一派はぶっ殺す!斎藤さんも、殺しの準備でもしててくれ」と俺。
「かしこまりました。死体の処理も含めて、しっかり準備しておきます」
「出来たら、屯所も道場も作ったばかりだし、汚い血で汚したくないから、壬生浪士組の敷地の外で芹沢一派は処分しよう。じゃあ、お金に牛の件 ありがとうな」と俺。
「はい。どういたしまして」と斎藤さん。
安藤君が「うーしっうーしっ!」と言い、沖田が「ウーキッウーキッ!」と言っている中、とうとう壬生浪士組の敷地内の牛舎に、毛並みの立派な肉牛と白と黒のごま模様の乳牛が、搬入された。百姓たちは「こんな立派な牛、見たことねえだ」と驚いている。もはや侍の、斎藤一の力 恐るべし、といったところだ。
「沖田は大丈夫かもしれないけど、安藤君とリュウスケは、牛の後ろ蹴りと胴体タックルに、気をつけるように。じゃあ源爺に、肉牛を調理して貰って、肉の王様 牛肉を食らいつくそう!」と俺。
「ウキッ!」と沖田。
「はい!」と安藤君。リュウスケも、頷く。
「かしこまりました。ステーキでもすき焼きでも焼肉でも、用意してみせます」と源爺。来たばかりの肉牛を連れ、屯所の調理場へ向かう。
「これで肉牛はいいとして、百姓の2人は、乳牛の乳の絞り方 分かるか?」と俺。
「わかります!」と百姓の内の一人が答える。
「じゃあ安藤君とリュウスケは、百姓に乳の絞り方を教わって。こして薄めれば、牛乳の完成だ。沖田もそうだし、安藤君もリュウスケも まだ背が低いから、朝食には牛乳を飲まないとね」と俺。
「はい!わかりました!牛乳で背が伸びたら、最高です」と安藤君。百姓たちに教わりながら、楽しそうに牛乳を創り出していく。考えてみれば ずっと以前から、沖田はすぐに子供と仲良しになる。今も、沖田 安藤君 リュウスケの3人で、笑顔でいる。此れも、天才 沖田の才能の1つなのだろう。だけど 2人の百姓に ガキンチョ3人、そんなに乳牛の乳を絞ってどうするんだ。そんなに、飲み切れないだろ…。
《生まれ変わり続け、最後の最後の人生 2回目の東 清二としての人生に、児童養護施設 東京サレジオ学園の『ブナの家』で、また ガキンチョの安藤 ジュンヤと、口数は少ないけど話せるようになった、此方もガキンチョのリュウスケとは、再会した。ただ その頃は、先輩と後輩の間柄で、壬生浪士組で一緒だった事は、思い出せなかった。生まれ変わる度に殺される度に、記憶は消され 置かれた環境で、自分なりに適応していくしかないからね。沖田総司は、この環境適応能力にも優れていて、尚且つ 大人にも子供にも、人気者になる。その証明に、沖田は 元、モンキー・D・ルフィだからね。そして、沖田とルフィに分離させた、赤髪のシャンクスだった当時の俺がね。だって勿体無いだろう?沖田が居て ルフィが存在するなんて、最高じゃないかい?勿論、俺の過去たちのD・サンジと赤髪のシャンクスも、存在する未来。長くても、あと15年待っててくれ。俺のこの最低最悪の人生、その分 最後の最後の人生が終われば、そうさ 未来は、希望に満ち溢れている!》
こうして2人の百姓たちの知恵も借りて、壬生浪士組の牛舎に、肉牛と乳牛まで やって来た。まぁ ほぼほぼ、斎藤さんのお陰でもあるけど。2人の百姓たちも、源爺の世話もあり、ちゃんと生きれている。歳をとって家族に見放されても、源爺の包容力と沖田の明るさがあれば、大丈夫なんだろう。次回の話は、とうとう芹沢一派と対決し、勝てたら処分します。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!