第六十六話 芹沢
とうとう壬生浪士組に、クソ野朗 水戸脱藩浪士 芹沢鴨とその弟たちが、入ってしまいます。北野さんも、出て来ます。さすがの情報通です。
時代は幕末、長く続いた江戸幕府の支配も 衰え始めていた。日本全国の各藩からも、志しがある者 ただ単に現状に満足していない者 藩から摘み出された者が、天皇の居る 京へと色々な思惑があり集まり始めていた。そんな時代に京の都で、俺 土方歳三と沖田総司や井上源三郎が、侍を志し 壬生で、もう充分強いので 稽古はせす、日々 宴会をしていたりする。幸い もはや侍へとなった、俺の唯一無二の親友 斎藤一が繋がりのある会津地方から、日本一の酒と米をもたらせてくれる。その結果、毎日 宴会となる。そして、『天然理心流』の師範 近藤勇や、その近藤さんの用心棒 野口君が、壬生浪士組に入って来た者たちに 稽古をつけ、まだ ガキンチョで それでも侍を志した、安藤 ジュンヤとリュウスケが日々稽古をして、精進する日々を送っている。ただし勿論 壬生浪士組に新しく入って来る者は、いい人たちばかりではない。そんな話。
水戸藩脱藩浪士、名は芹沢鴨と名乗った。その弟に、次男のヒロユキと三男のケンジがいると言う。近藤さんに「新しく浪士を壬生浪士組に入れる時は、俺にも伝えてくれ」と頼んだところ、今目の前に 喧嘩しか能のない、芹沢という名字の極悪三兄弟がいる。近藤さんは、俺の隣で「天下に名高い 水戸藩脱藩浪士 芹沢さんとその弟たち、壬生浪士組入りを歓迎します」なんて言ってるけど、俺としては反対だし、そう近藤さんにも伝えた。ただ 近藤さんは、徳川御三家の水戸藩出身ということで、壬生浪士組入りを認めた。 ろくでもない者が、三人も入るのかと先が思いやられる。せっかく壬生で居場所のできた百姓や、侍を志ざす者たちにとっても、悪影響が出るだろう。ただ、我慢も苦労も辛抱もない人生なんて存在しない。なので、芹沢三兄弟は、俺が見ることにした。壬生浪士組への被害を最小限にしたいからね。
壬生浪士組には、米と酒は大量にある。ただしお金は、必要最低限しかない。其れを知った 芹沢鴨とその二人の弟たちは、「米と酒を売って、金をつくる」と言いだす。壬生浪士組にある米と酒は、斎藤さんが調達して来てくれた、会津地方の日本一の酒と米だ。其れを俺は、売る気にはならない。
「壬生浪士組にある米と酒は、大切なものだ。金をつくるなら、他の方法にしろ」と俺。念のため、オンボロ刀を確かめる。芹沢鴨とその弟たち二人を斬ることは、簡単に出来る。ただし人を殺すには、正当な理由がいる。三人分ともなれば、かなり強めな理由でなくてはならない。
「お前、オレは水戸藩脱藩浪士 芹沢鴨だぞ!そのオレが、米と酒を売ると言っているんだ。黙って言うことを聞いておいた方が、身のためだぞ」と芹沢鴨。
「ここにある米と酒は、侍を志ざす者たちや、捨てられた百姓たちの為の米と酒だ。お前らなんかには、渡さねえよ。其れと、そちらが名乗ったから俺も名乗るけど、俺の名は土方歳三だ。黙って言うことを聞いておいた方がいいってのは、此方の台詞だ」と俺。
「ひじかた としぞう…。史上最強の剣客…。わかった、米と酒はいい。ただ金をつくらないと、ここじゃ遊ぶ金もないだろう?」と、弱腰になり 芹沢鴨が言う。
「遊ぶ金なんか、知らねえよ。米と酒があれば、充分 生きていけるだろ。お前らなんか、壬生浪士組にいらねえからよ」と殺気を帯びる俺。
「待て!わかった。金は、自分でなんとかする。ひじかた殿にも、付いて来て欲しい。京の都の商人は、金を貯めこんでるからな」と芹沢鴨。
「付いて行くのは、構わねえ。その代わり、ミスを3回したら叩き斬るからな」と俺。
芹沢一派と俺で、壬生の屯所を出て京へと足を運ぶ。
いつもの俺は、京の都で 肩で風を切って歩くのは好きだが、今日は芹沢一派が一緒だ。肩で風を切ってる場合でもなく、京へ来て以来、一番機嫌の悪い日だ。そして芹沢鴨やその弟たちが「壬生浪士組の者だ」と名乗る度に、壬生浪士組の信用も名声も、下がり続け地に落ちて行く。しかも厄介な事に、芹沢一派は「壬生浪士組の者だ」と名乗り、タカリやカツアゲ 挙げ句の果てには、盗みまでする。俺は、芹沢一派がミスを3回したら叩き斬ると伝えたが、タカリ カツアゲ 盗みの時点で、ミス3回だ。あとは近藤さんが壬生浪士組に、芹沢一派を採用したので、近藤さん次第だ。俺としては、いずれ殺すと決めたけどね。
そんな中、前に会ったことのある、北野と名乗った男と遭遇した。その男は、俺を見て 嬉しそうに近づいてきた。
「土方殿、まさかこんなところで会えるとはな」と北野。
「北野さん?君?別に 名字が北野の男と会えたのは嬉しいけど、こんな奴らと俺は一緒なんだよ」と俺。
すると芹沢鴨とその弟のケンジが、「待て!この男は、ダメだ!オレたちは、今日は何も悪いことはしていない」と言い、次男のヒロユキの後ろへ隠れる。
「芹沢鴨と弟たちは、京の都をうろつくんじゃねえと、おいら ちゃんと伝えた筈だぞ」と北野。
「北野さんは、この芹沢とかいう 極悪三兄弟を、知っているのか?」と俺。
「ああ。元水戸藩の鼻つまみ者で、悪さばっかりして問題ばかり起こすから、水戸藩から追放された三兄弟だ。しかも おいらの大嫌いな、大和田の側の人間たちだ。大和田や 大和田のクソ野朗が、この辺うろつくんじゃねえと言ってるだろ!土方殿と一緒にいるということは、もしかして こんな奴らが、壬生浪士組に入ってしまったのか?」と北野。
「ああ。北野さんじゃ、近藤さんと言っても通じないだろうけど、こっちは確かに壬生浪士組の、近藤勇が決めたことだ。俺は、反対したけどな」と俺。
「こんどう いさみ…。大物じゃねえか。壬生浪士組か…、こいつらクソ芹沢三兄弟が居ないなら、おいら 壬生浪士組に、入れてもらうのもいいな。この時代に、侍をするのも悪くないからな」と北野。
「うん、まず芹沢鴨とその弟たちや一派に関しては、全員 処分する。ミス3回で叩き斬ると伝えたのに、既にミス3回だからね。あとは、いつ近藤さんが、処分すると決断するのかを待つだけだ。あと北野さんの壬生浪士組入りは、大歓迎だよ。全宇宙の支配者 クソ大和田の存在を知っていて、尚且つ嫌っている。その上 北野さんなら、クソ大和田とも、充分に戦えるだろう。因みに俺は、クソ大和田の敵のトップだよ。途方もないくらい時間がかかるけど、いずれ俺の手で クソ大和田は、ぶっ消す。完全にね。だから 北野殿が壬生浪士組に入るなら、名称も変えるし 人選も、一からやり直す。政治家の言う 前向きに考えます じゃなくて、侍として 前向きに考えてくれ」と俺。
「わかった。準備が出来次第、話だけでも聞きに行くよ」と北野。「お前らは、居なくなれ!」と、見事に芹沢一派を、読んで字のごとく蹴散らした。さすがです。
「じゃあ 北野さん、名字は本名だろうから、名前も自分で考えておいてくれ」と俺。
「おうっ、そういえばそうだな。名前を決めないとな。考えとくよ」と言い、北野さんは 何処かへ帰って行った。
《この頃は良かったと、過去を賛美するつもりはない。だけど 2017/02/01今現在 東 清二として、最後の最後の人生を送っている俺は、もう とっくに心なんて折れてしまった。ただ容赦なく 明日がやって来るから、その日をとっとと終わらせようとしている。過去に俺には、覚悟も中身もないと、俺を念能力者に出来た、先公に言われた。ただし その先公は、俺の左眼に天使の基本装備 真実の目があると、勘違いしていた。それを知って謝られても、念能力は手に入らない。何だか この最低最悪の人生は、俺が振ってもいないサイコロの目が、必ず悪い方へいく。しかも厄介なことに、俺にはサイコロを振る権利すらない。嘆いていてもしょうがないので、このままこの生き地獄が、あと15年続くことを覚悟する。か、とっとと寿命よ、終われ!》
こうして 壬生浪士組に、芹沢一派が入って来た。芹沢鴨は、全宇宙の支配者 クソ大和田の庇護を受けて、暴力だけで生きてきた男だ。そんな奴が居たら、壬生浪士組も、遅かれ早かれ 駄目になってしまう。俺に出来ることは、芹沢鴨に圧力をかけながら、近藤さん、処分すると決めてくれと、やんわり表現するしかない。次回の話は、百姓とその知恵の話です。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!