第五十八話 寺社
侍を目指しているのに、何故か 豚を買い豚を飼い始めます。
京の都 東本願寺の程近くに、新居を構えた 俺 沖田、そして源爺。隣には 俺の発案で、沖田と源爺が豚小屋を作った。『天然理心流』の師範 近藤さん、近藤さんの用心棒の野口君は、斎藤さんの作った 斎藤屋敷で、斎藤さんと一緒に 京の都の情勢や、会津地方のことについて、猛勉強中だ。そして、俺 土方歳三は、京で豚を買い 豚を飼う。
「よっしゃああ 沖田!豚を仕入れに行くぞ」と俺。
「ウキッ!」と沖田。
「源爺も、仕入れに行くか?」と俺。
「もちろんです。トシ君が 散財しないよう、見張らなくてはいけませんからね」と源爺。
「源爺…、源爺にとって、俺は どれだけ信用がないのか…」と俺。
「ウーキキッ」と、沖田に慰められる。
「大丈夫だよ、沖田君。それ程、落ち込んでやしないからね」と俺。心配していた沖田のわき腹を、くすぐっておく。
「ウキウキ」言って、沖田は 、源爺の後ろに隠れた。
「よっしゃ、どこで豚を売っているのか分からないから、斎藤さんに聞きに行こう」と俺。
「ウキ」と、まだ 源爺の後ろに隠れながら、沖田が言う。
「斎藤君と一緒なら、散財やトシ君の気まぐれを、心配しなくていいですね。そうする事に、致しましょう」と源爺。
斎藤屋敷に到着すると、近藤さんと野口君が、宴会をしている最中だった。
「よしっ、俺も宴会だー!」と言うと、「トシ君!斎藤さんに、会いに来たのですよ」と、源爺に 窘められる。
そうこうしてる間に、沖田が斎藤屋敷にいた 斎藤さんを、連れて来てくれた。
「ありがとう 沖田。斎藤さん、飼育用の豚を買いたい。どこで 売っているのか、分かるかい?」と俺。
「分かりますよ。トシさん達は、豚を育てるのですか?」と斎藤さん。
「ああ。試し斬り用と、食べる用にね。せっかく 沖田と源爺が頑張って、立派な豚小屋も作ったし」と俺。
「分かりました。案内します。早速、行きましょう」と斎藤さん。
斎藤さんの案内で、京の都の外れ 、郊外の大きな百姓の家に着く。どうやら この百姓の家は、牧畜もしているようで、豚ばかりか 牛もいる。斎藤さんに会った 百姓は、慇懃に畏まり ぺこぺこ頭を下げていて、どうやら豚が手に入りそうだ。
〈しかし 京の都の人たちや、郊外の人たちまで、斎藤さんの威光が届く。あちこちで 尊敬され敬愛され、いったい斎藤さんは、俺たちが京へ着くまでの間に、どんな善政をしたのだろう?まあ、さすが 斎藤さんと言ったところか〉
「トシさん!豚、何匹 要りますか?」と斎藤さん。
「俺 沖田 源爺、一人2匹育てるとして 大きな豚6匹。子豚を、牡牝 1匹ずつ」と俺。
「かしこまりました!大きな豚は、なるべく良いのを、子豚は血統の良いのにしときます」と斎藤さん。百姓の話に 耳を傾けながら、選んでくれている。
俺はと言うと「沖田、ロデオって知ってるかい?」と、放し飼いになっていた猛牛の背中に乗って、暴れる牛の上で遊んでいる。源爺が、呆れる。沖田も、俺の真似をして ロデオをする。それを見て、源爺は笑顔になる。源爺の対応、この差っていったい…。
無事、豚を買い付け 百姓の人たちにも手伝ってもらい、東本願寺の程近く 新居の隣の豚小屋に、収めることが出来た。多分 斎藤さんが、金を積んだんだろう 当面の豚の餌も貰え、百姓の人たちは大喜びで帰って行った。豚がもぐもぐ 餌を食べているのを、確認して 斎藤さんは、斎藤屋敷に帰って行った。京の都に住む人々にとって、斎藤さんの存在は もう既に、必要不可欠になっている。その窓口になっている斎藤屋敷には、なるべく斎藤さんが、居なくちゃいけない。こういう人を、人は侍と呼ぶのかもしれない。
とりあえず 豚も手に入ったし、そのお祝いに宴会をし 二日酔いで朝を迎えると、前にも来たガキが2人 興味津々といった様子で、豚小屋を覗いていた。
顔を洗った俺は「確か、安藤君とリュウスケ君といったな。豚 眺めていて、楽しいか?」と聞く。すると、唯一喋れる方の安藤君が「楽しいです!生きている豚、初めて見たので!」と答える。
「それと、本願寺の偉いお坊さんが、ここで何をするのか 話を聞きに来ると思います」と安藤君。
「別に構わないよ。犯罪を犯してる訳でもないし。あとは、豚の調理法だけ分かればなぁ」と俺。
すると、 本願寺のお坊さんと見られる 頭を剃り上げた、袈裟を着た男が3人 トコトコこちらに来る。そして こちらも、沖田と源爺が、とうやら目覚めたようで 顔を洗いに起きてきた。
「私は、本願寺の者です。ここで何をする おつもりですか?」と、お坊さんのリーダー格と思われる男が、聞いてきた。
「うん。新しく居を構えたのと、豚を飼い豚を食らう。ただ、それだけだ」と俺。
「お前らは、寺に戻って 雑巾掛けでもしていろっ!本当に、使えねえ」と、先程とは違う 坊さん。
「はいっ!すいません!」と、直立不動になる 安藤君。同じく、リュウスケ君も ビクッとする。
「坊主が ガキ相手に、そんな口の聞き方をするんだな 怒。ロクな坊主でもないし、本願寺はロクな宗派でもないようだな」と俺。
リーダー格の坊主が、ジッと俺を見て畏る。そして「もしかしたら 前世が、織田信長公では ありませんか?」と聞いてきた。
「ああ。正確に言うと、織田二郎三郎信長だけどな。お前は、念能力者か?」と俺。
「はいっ!」と、リーダー格の坊主。
「俺はまだ、念能力者じゃないけどな。別に俺たちが、ここに豚と住んでもいいよな?」と俺。
「はいっ!」とリーダー格の坊主。
「あと、さっき ガキ相手に 暴言を吐いてたお前の後ろの坊主、破門に出来るか?」と俺。
「出来ます!すぐ、破門に致します」とリーダー格の坊主。安藤君が、それを聞いて 小さくガッツポーズをした。
「じゃあ そういうこで。大丈夫、ずっとここに住むつもりはない。そのうち 出てくよ。金を積まれたらね。チンピラの手口だけどな。ナハハハハッ笑!」と俺。
「待ってください!本願寺 破門になったら、行くところがありません!」と、暴言を吐いてた 後ろの坊主。
「お前は、次見かけたら 叩き斬るからな 怒。とっとと、去れ!」と俺。
気の利く沖田が、俺のおんぼろ刀を持って来てくれた。
俺は 刀に手をかけ「こちとら、侍を目指してるんでな」と言い 刀を少し抜いたら、暴言を吐いてた坊主は、背中を見せて逃げて行った。それを見て、今度は リュウスケ君が万歳をする。
残った坊主とリーダー格の坊主は、丁寧に頭を下げ帰って行った。
「安藤君も リュウスケ君も、豚小屋に遊びに来る分には、いつでも来い。あとは、豚の調理法が分からないんだよな」と俺。
既に、笑顔になってた 源爺が「トシ君、豚の調理法なら 私に任せてください」と胸を張る。
「なんだ、源爺 豚を調理出来るのか。伊達に長生きしてないんだな。今日は もう陽が暮れるから、豚の解体と調理は 明日にしよう」と俺。
「ウキッ」と沖田。
「はい。かしこまりました」と源爺。
「明日も、ここに来ていいですか?」と安藤君。
「ああ、いいよ。明日こそ、美味しい豚肉を食おう!」と俺。
「はい!やったー」と安藤君。そして、陽が暮れた。
《なんだか、もう疲れた。2016/10/29今 現在も続く、この消すか消されるかの戦い。審判が居たら、とっくに俺は ギブアップしてるのに。はい!ちゃんと全宇宙の支配者 クソ大和田を、完全にぶっ消して この戦いを、こちらの勝利で終わらせます。俺が、念能力を手に入れ次第ね》
こうして、豚を買い 飼い 食べる準備が出来た。そして 、たまたまなのか 運命なのかは分からないけど、安藤 ジュンヤ君とリュウスケ君と、縁が生まれた。この後も 関わってくるし、生まれ変わっても 地獄のような児童養護施設 東京サレジオ学園で、思わぬ再会をすることになる。俺が ぶっ飛ばした、数少ない後輩としてね。次回の話は、昔懐かしい 仏教の高僧が出て来ます。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!