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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第五十二話 吉報

情報が入り、決意と決断をする話です。

俺の名は、土方歳三ひじかたとしぞう。つい最近 、このさむらいを目指していた人生に戻ってきた。そして 戻って来れたお祝いに 朝まで宴会をしていたから、今はぐったりだ。ただ この『天然理心流てんねんりしんりゅう』の道場から 見る眺めには、満足している。俺の親友の斎藤一さいとうはじめが居て、天才 沖田総司おきたそうじが居る。そして 沖田おきたの保護者 井上源三郎いのうえげんざぶろうが居て、なおかつ 道場主の近藤勇こんどういさみさんと、近藤こんどうさんの用心棒 野口君ぐちくんが居る。そんな中での話。


この時代この場所に 帰って来た早々、朝まで宴会だったので 俺はぐったりしている。このご馳走と 美味いお酒を用意してくれた 斎藤さいとうさんは、自分の刀を抱きしめ すやすやと寝息をたてている。宴会中 ずっとはしゃいでた沖田おきたは、源爺げんじいの用意してくれた布団で、「ウキウキ」と寝言を言いながら、眠っている。源爺げんじいは「徹夜など、へっちゃらです」と言い、お酒は控えて ご馳走を食べ続けている。近藤こんどうさんは「二日酔いには、迎え酒です。がははははっ笑」と豪快に笑い、豪傑とは こういう男の事を言うのだと、俺は思った。ちなみに、お酒をほとんど飲まなかった 野口君ぐちくんは、近藤こんどうさんと俺の間に座り、帰って来たばっかりの俺を、念のため 警戒している様子だ。さすがに、用心棒だけのことはある。もちろん、俺は 近藤こんどうさんに 何もする気はないけどね。


気付いたら 俺は、睡魔に襲われ眠っていた。目覚めたのは 昼過ぎで、もうみんなは起きていた。俺は 井戸水で顔を洗い、徹夜したであろう 近藤こんどうさんと源爺げんじいを、軽く尊敬した。

「おはよう、沖田おきた!つっても、もう昼過ぎだけどな」と俺。

「ウキッ」と元気な沖田おきた。だいたい沖田おきたは、俺と斎藤さいとうさんが揃い、沖田おきたが一緒に居られる時は、機嫌がいい。その上 今は、源爺げんじいも居るから、なおさら元気だ。

「トシさん、おはようございます」と斎藤さいとうさん。

「おはよう、斎藤さいとうさん。今日も お洒落で、かっこいいな 斎藤さいとうさんは」と俺。

戯れてくる沖田おきたを、俺が適当にいなしていると、何やら近藤こんどうさん宛てに、文が届いたみたいだ。近藤こんどうさんは、珍しく 眉間に縦皺を寄せ、文を何度も読み返している。


近藤こんどうさん。珍しく真面目な顔をして、どうした?何て、書いてあったんだい?」と俺。

「はい。京都で、不逞浪士を取り締まる 者を、募集しているとの事です」と近藤こんどうさん。

「うん。それだと、斎藤さいとうさん。会津藩あいづはんも、絡んでくるよな?」と俺。

「はい!京都守護職に、会津地方の若殿がなると思います。損な役まわりですが、会津藩あいづはんは幕府の要請を、断りきれないでしょうから」と斎藤さいとうさん。

「例えば 昨今、若い武士達が主張する 尊王 攘夷 も、ただのお題目にしかならない。尊王 と言っても、もう徳川幕府に それだけの力はない。二百数十年、平和だっただけで 十分だったんだと思う。そして、二百数十年の平和が 攘夷をするだけの力も無くした。ただ 今、日本の政治の中心は京都だ。天皇がいるからね。それにさむらいを目指すと言っても、ここ多摩地区に居ては なれるものもならない。それゃあ、俺たちは強いさ。だから、京都で勝負しよう」と俺。

「がははははっ笑!私たちは、強い!」と近藤こんどうさん。

「ああ。もともと強い、俺と斎藤さいとうさん。戦う気のない沖田おきたと、保護者の使える男 源爺げんじい。その他の者も、『天然理心流てんねんりしんりゅう』を学べば 十分に強いし、強くなれる。天皇には、俺が縁がある。京都守護職の会津藩あいづはんには、斎藤さいとうさんが縁がある。斎藤さいとうさんが居れば、会津地方あいづちほうから 米と日本酒を、調達できる。あとは、近藤こんどうさんが決めてくれ」と俺。


一つ呼吸を置いた 近藤こんどうさんは、「私たちは、強い!いざ、京都でさむらいへと 成れるよう勝負することにしましょう」と言う。

「ウキッ!」と沖田おきたが、敬礼する。珍しく、話を聞いていたのかもしれない。

「うん。じゃっ斎藤さいとうさん、先に京都に入って 京都の内情と住むところ、それと京都でも 会津地方あいづちほうから、米と日本酒を手に入れられるよう手配してくれ」と俺。

「はい」と斎藤さいとうさん。

源爺げんじいは、沖田おきたと一緒に ここから京都までの旅支度をしてくれ」と俺。

「かしこまりました。いよいよ、さむらいへの道が 本格始動ですね」と源爺げんじい

「じゃあ 近藤こんどうさん宛ての文が、吉報となるように頑張っていこう!」と俺。

「はい!」と一同。


斎藤さいとうさんは、多摩地区を立ち 京都へ向かった。沖田おきたは埃まみれになりながら、ガラクタとしか思えない 私物を片付け整理している。源爺げんじいは、もともと整理整頓も掃除も出来ていたので、出立の準備はすぐに出来た。俺の方は、それなりに血を吸わせた オンボロ刀を持って、それだけで準備完了と お酒を飲んでいる。近藤こんどうさんは、この『天然理心流てんねんりしんりゅう』の道場の事や 跡継ぎのことで、手一杯みたいだ。野口君ぐちくんは、黙々と準備をしている。


「ウキッ!」と、沖田おきたが 、たいして準備をしてなく 酒ばかり飲んでいる俺に、戯れて来た。

「ナハハハハッ笑!沖田おきた君、俺は追い込まれないと 旅支度の準備なんてしないのだよ」と俺。

すると、 苦笑いをしながら源爺げんじいが「沖田おきた君、今回のトシ君は 反面教師と言って、真似せずに しっかり準備をしなければいけませんよ。トシ君は、いつ頃 準備を始めるのですか?」と聞く。

「着替えもあるし オンボロだけど刀もあるし、あとは路銀だけだな。路銀は、旅の途中で 山賊を倒すなりゴロツキを倒すなりして、手に入れよう。沖田おきた、山賊を倒してみたくないか?」と俺。

「ウキッ!」と沖田おきた

「これは 旅の荷物に、十文字槍も入れないと駄目みたいですね。槍は かさばるし、置いて行くつもりだったのに」と源爺げんじい

「たくっ、どうしょうもないな 源爺げんじいの荷物は」と俺。

「どうしょうもないのは、トシ君の方ですよ。さむらいは、ただでさえ命を狙われるのに、山賊を倒して旅費を手に入れようなんて」と源爺げんじい

「そうでもしなきゃ、金が足りねえだろうが。じゃあ、近藤こんどうさんと野口君ぐちくんの支度が整い次第 京都へ向け 出発としよう」と俺。

「ウキッ」と沖田おきた。「はい」と源爺げんじい


《今現在、沖田おきた源爺げんじいは何をしているのだろう。分かっている事は、天国にある異次元で、合気道の達人で創始者の ごうちゃんと一緒にいること。散々 結果を出してきて頑張った沖田おきただから、源爺げんじいごうちゃんに見守られながら、楽にしてて欲しい。沖田おきただけじゃなく、源爺げんじいともごうちゃんとも、俺が念能力を手に入れたら ずっと一緒にやっていくつもりだ。俺はせっかちだから、ただ待ってるだけなのも しんどいけどね》


こうして 本当に吉報かは 分からないけど、京都へ向かうことになった。良くも悪くもね。さむらいを目指すという事は、死ぬことすら 受け入れなければ ならないのかもしれない。例え そこが、寿命じゃなくてもね。次回の話は、京都へ向かうところからです。以上。

読んでくれて、どうもありがとうございました。よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!

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