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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第四十六話 子分

幕末から 飛ばされ、清水の次郎長としての 自分の子分にまつわる話です。

俺の名は、土方歳三ひじかたとしぞうだった。何故 だったのかと言うと、別の場所別の未来へ飛ばされたから。今は、清水きよみず次郎長じろうちょう親分と呼ばれている。そして、裏稼業の極道達の世話役をしている。極道は、領民の堅気達から 慕われてるだけじゃなく、使えるし強い。だから ここでの暮らしも悪くないが、いずれは、さむらいになる という、土方歳三ひじかたとしぞうとしての人生に戻らなくては、と思っている。大切な仲間たちを、残しているからね。そんな中での話。


清水きよみず次郎長じろうちょう一家の館に、極道達が全員 集合している。酔い潰れていた者も回復し、徹夜明けだった 俺と澤野さわの 小久保こくぼ、そして 一番年輩の極道も 十分休息を取り、もう大丈夫となった。そんな中、澤野さわのから 提案があるとのこと。


次郎長じろうちょう親分!ここに居る 極道の中から、子分を取りませんか?」と緊張した面持ちで、澤野さわのが聞いてきた。

「子分は取らん!」と、いつもの調子で 答える俺。

「うわー!」と言いながら、澤野さわの一派の極道達が崩れていった。うん、相変わらず 面白い反応だ。

澤野さわのだから、駄目なんだ。次郎長じろうちょう親分!私を、子分にしてください!」と、小久保こくぼが言う。

「少なくても この中からは、子分は取らん!」と俺。

「うわー!」と、小久保こくぼ一派の極道達も、将棋倒しのように崩れていった。極道は、強くて優しい集団なのにね。


「うーん、子分を取るって 覚悟のいることだし、責任も生まれる。今の俺は、人生の途中で ここに飛ばされて来て、寄り道をしているところだ。いずれは 元々の人生にもどらなくてはならない。そんな中途半端な状態で、子分は取れないよ」と俺。

次郎長じろうちょう親分!戻らなくては、ならないのですか?もう ずっとここで、極道のトップとして 清水きよみず次郎長じろうちょう親分をなさりませんか?」と澤野さわの

「同意見です!」と極道達。

「うーん」と俺。

「はい」と極道達。

「うん?」と俺。

「うわー、期待してたのに、やっぱりダメだったー」と極道達。


「ここに飛ばされて来る前の俺の名前が、土方歳三ひじかたとしぞうだった。さむらいを目指していて、親友を含む 大切な仲間たちを置いてきたんだ。自分のせいだと自分を責めて泣きじゃくる少年もね。ただ ここに居る間に、極道の世話役として 出来る限りのことは、するつもりだ。極道は、強い。使える。そして、裏稼業の者達としても、お天道様の下を堂々と歩ける存在だ。例え 殺しをするにしても、殺すに至る 正当な理由があれば、何も問題ない。俺が、いずれは いなくなることを想定して、今 出来ることをしよう」と俺。

土方歳三ひじかたとしぞう!それは、戻らなくてはいけないですね。ここに居る間は、清水きよみず次郎長じろうちょう親分として、極道の世話役をよろしくお願いします!」と、一番年輩の極道。

「よろしくお願いします!」と極道達。


一日中 館に居てもしょうがないので、今 俺がいるこの時代と日本は どんな感じか、見て廻ることにした。歩きで行ける、範囲だけど。ガスが普及してたり、電気が灯っていたり、自分の知らない 未来がそこにはあった。清水きよみず次郎長じろうちょう親分を一人で 警備もなく外出させる訳にはいかないと、澤野さわの小久保こくぼが一緒について来る。そんな中、一人の若い青年を見つけた。


その青年を見つけて、今 俺が この時代ここで やるべき事 やらなくてはいけない事が分かった。今は 眼光鋭く こちらを睨みつけている 青年が、いつか裏稼業のトップに君臨する事を俺は知っている。こういう時は、一人で会わなきゃ駄目なので、次はこの場所に俺一人で来ようと思った。と言っても、俺は方向音痴だから ここまでたどり着けるかは、分からないけど。


俺が勝手に、大根のおばあちゃんと呼んでいる おばあちゃんの畑に着いた。本当に、畑には大根しか植えられていない。こちらを見つけた おばあちゃんは、汗を拭きながら 笑顔でこちらに来てくれた。

「あんれまあ 、清水きよみず次郎長じろうちょう親分でねえか。こっただとこに、よく来てくれただ。みかじめ料の徴収かえ?あまりお金は、ないんだけども」と、大根のおばあちゃん。

「まず、おばあちゃん。本当にお金のない人から、みかじめ料は徴収しないよ。今日は 大根のおばあちゃんの、ご機嫌を伺いに来ただけだよ」と俺。

「あんれまあ!極道の大親分が、私さの機嫌さ伺いに来てくれただか。とりあえず、私はご機嫌だあ。清水きよみず次郎長じろうちょう親分に、会えただかんなあ。すぐ 食べられるように、大根さ 用意するだあ」と、おばあちゃん。

「大根のおばあちゃん!おばあちゃんが館に置いてった大根が、まだ たんまりあるんだよ!また 近いうちに、大根のおばあちゃんの畑に ご機嫌伺いに来るよ」と俺。

「あんれまあ!そうだべか。そっだら今度は、漬け物さ用意しとくだ」

「たくあんだったら、いただくよ。じゃ、また」と俺。大根だらけの畑を後にした。


《僕は知ってる。今はまだ 、青くて若く こちらを睨みつけるだけの青年が、後に 裏稼業の頂点に立つことになる事を。それを確認し認めることも、この時代に俺がいる意味の一つなのだろう。そりゃあ最初は、喧嘩になるだろうけど、清水きよみず次郎長じろうちょうとしての俺なら、チャンスを与えられる。やっと 形に残せる、何かが見つかった。きっと相手に取っても 俺に取っても、運命なのだろうから しっかりものにしなければ!》


俺は「明日は、一人で出掛けるから」と、澤野さわの小久保こくぼに伝え、この時代この場所に 飛ばされたけど、意味のある意義のある 人生にしようと強く思った。


こうして 後に、俺の唯一無二の子分になる男に遭遇した。オダギリの時と一緒で、きっと運命に運ばれてきたのだろう。ちゃんと対応しなくては。目が、今にも人を食い散らかしそうなギラギラした目をしてたから 喧嘩には、なるだろうけどね。次回の話は、俺の唯一無二の子分になる男との喧嘩と、改めた出会い そして名付けの話です。以上。

楽しんで、頂けましたでしょうか?よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!

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