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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第四十四話 清水

幕末から、転生し飛ばされた先での話です。

幕末の動乱期に、俺 土方歳三ひじかたとしぞうは姿を消した。大切な、仲間達を残して。


《気付いた時には、ここに居た。ここが、転生したあとの場所か。とりあえず、両手 両足はある。目も耳も、大丈夫みたいだ。ただ 身体が、一回り大きくなり 少し歳を重ねている感がある。更に 俺は、畳の上に居て、畳が一段高くなっている。そして、この館の中の人達を見渡す。見てすぐに、分かった。あきらかに強いと思われる、男達が居て俺から見て、右と左に二手に分かれ、正座している。さて、この状況下で、俺は誰で 何者か?》


「親分っ!俺は、澤野さわのと言います!お見知り置きを」と、左側の最前列に居た、男が言う。

「親分!私は、小久保こくぼと言います。よろしくお願いします」と、右側の最前列にいる男が言う。

さわのと聞いてもこくぼと聞いても、ピンとこない。手っ取り早く、俺は自分が誰か 聞く事にした。

「今この時代の俺の名前と、俺が誰だか知ってる人はいるか?」と俺が問う。

清水きよみず次郎長親分じろうちょうおやぶんですっ!」と、そこにいた全員が一斉に返答した。やっと、ピンときた。今の俺は、極道絡みか。そう言えば 大和田おおわだが、転生してここに来る前に、極道が大和田おおわだの言う事を聞かないと、言っていたな。


「俺の名前は、分かった。きよみず次郎長じろうちょう。『よ』が名前に入っているから、相変わらず 俺を表す数字は4 か。とりあえず、澤野さわのさんと小久保こくぼさんの名前だけ、覚えておけばいいか?」

「呼び捨てで、結構です!氵に四に幸福の幸、そして 野球の野で、澤野さわのです!どうか、よろしくお願いします!」

「名字に、四が入ってるのか。じゃあ、ラッキーナンバーは4だな。澤野さわの、いい名字じゃねえか」と俺。

「私は、小に久保と付けて、小久保こくぼです。そんなに、いい名字ではありませんがよろしくお願いします!」

「了解。別に 小久保こくぼって、悪い名字ではない。ラッキーナンバーは、くで9だな。で、俺は何をしたらいい?」と俺。

「極道のトップ、清水きよみず次郎長じろうちょう親分として、あっしらの世話役を!」と、一番年輩の おそらく極道と思われる人が、ただならぬ凄みを滲ませながら言う。

「じゃっ とりあえず、澤野さわの小久保こくぼの名前だけ、覚えておく。いきなりここに送られて来て、今の俺に 極道のトップと世話役が出来るか分からないけど、自分なりに努力してみる」と俺。

「はいっ!」と極道達。


この時代がいつの時代なのかはわからないけど、幕末からそう遠くない未来で、そもそも そんな事どうでもいい。少なくても、自分が 清水きよみず次郎長じろうちょうで、極道達の世話役をするのも 悪くはない。ただし、いずれ幕末の動乱期 土方歳三ひじかたとしぞうの人生に戻らなくては。ちゃんとさむらいに、ならなくては!大事な仲間達を、残したままにはしたくない。そのためにも、今はここで 足下と地盤を固めよう。


「じゃっ とりあえず、喧嘩だな。極道と言うからには、強くないといけない。道を極めると書いて、極道だからね。どっか 揉めてる組織とか 殺したい奴とか、いないか?」と俺。

「います!」と澤野さわの。「私にも、います!」と小久保こくぼ

「この館から、距離が近い方から 殺して行こう。じゃ 一番年輩の極道と澤野さわの小久保こくぼで、出入りで」と俺。

すると館に残される極道達が、「自分達も連れてって下さい」と声をあげる。

「この館を空にする訳にいかないから、大人しく待ってなさい」と俺。

「うわーっ!」と おそらく強者と思われる極道達が、意気消沈していった。うん、面白い反応の仕方だ。


ゴロツキの集まる場所と、憲兵の屯所、どちらにカチコミしますか?と聞かれる。

「じゃあ、ゴロツキの集まる場所で 金を手に入れ、憲兵の屯所で 自分達の強さを証明しよう。戦う理由が、ちゃんとあるんだろう?」と俺。

「はい!ゴロツキが 女 子供関係なく金を巻き上げ、それを取り締まる 憲兵が、ゴロツキから賄賂をもらい、ゴロツキ達の味方になっています。もはや、無法地帯です」と澤野さわの

「うん。殺すには、十分な理由だね。あとは、今日中に方がつけばいいのだけど」と俺。

「はい!頑張ります!」と小久保こくぼ


そうこうしている間に、ゴロツキ達のアジトに着いた。見たところ、見張りが2人ばかりいる。問題ないけど。

「じゃあ、自分の身は 自分で守る方式で。殺す殺さないの選別は、各々に任す。かかれ!」と俺は言い、見張りの首根っこを、扉にぶち当てる。もう1人の見張りは、年輩の極道の手によって、既に首が ありえない方向に曲げられている。

「誰じゃ こりゃーっ!」と、ゴロツキ達が扉から わんさか出てくる。こんな頑丈そうな扉なのに、立て篭もらないなんて、アホなのか?最初は素手で 向かって来ていたゴロツキ達も、仲間が倒されていくにつれ、武器を手にし始めた。こちらは道具を用意してないが、ゴロツキ達から武器を奪い、更にこちらは攻勢にでる。気付いた時には、見張りを入れて 50数人いたゴロツキ達を、倒し終わっていた。分かった事は、ゴロツキ達がアホなのと、極道は喧嘩が強い。4人対50数人の喧嘩なのに、こちらには何の被害も出なかった。最終的には、「俺が倒す」「俺が倒す」と澤野さわの小久保こくぼが、手柄を奪い合う余裕すらあった。


「それじゃあ 金 借用書 証文 証券などを持って、館に帰るぞ」と俺。

「はい!」と澤野さわの小久保こくぼと年輩の極道。

そのまま 館へ帰ろうとすると、館で大人しく待っているはずの人が「清水きよみず次郎長じろうちょう親分、どうぞこちらへ」と案内をする。あきらかに、館の方向ではない。ただ 俺は、生まれ持っての方向音痴だから、もしかしたら俺が間違えているのかと思っていた。

すると案内をしていた極道が「清水きよみず次郎長じろうちょう親分。あそこにあるのが、憲兵達の屯所です。あっしらで、ほとんど倒したので、あとは 憲兵隊長を残すのみです」と、胸を張って言う。

「ぬおーっ、やっぱり 館の方向じゃなかった。今回は 極道が、全員無事だからいいけど、殺そうとするからには、殺されるかもしれないと しっかり覚えておいてくれ」と俺。

「はい!」と極道達。


憲兵達の屯所に入ると、死体の山の奥に 憲兵隊長と思われる男が、両手両足を縛られ 転がっている。そして転がっている男が「極道だか何だか知らねえが、俺は日本国の憲兵隊の隊長だぞっ!おれにこんな事して、ただて済むと思うなよっ!」と、のたうつ。

「例えば 税金で生きてる憲兵が、ゴロツキから賄賂をもらい ぶくぶく太り、その見返りとして ゴロツキ達の犯罪を見逃したりしてなかったか?」と俺

「いや…。そう言うお前こそどうなんだ!?名を名乗れ!」と、憲兵隊長。

「俺の名は 今この瞬間は、清水きよみず次郎長じろうちょうだ」

「清水の次郎長!きよみずの…。次郎長親分!命だけは、助けて下さい!」と、態度が豹変する 憲兵隊長。

「ならん!本当は、ギチギチ拷問したいところだけど、せめてもの手向けだ。一思いに、殺してやる」俺はそう言い、憲兵の物と思われる 転がっていたサーベルで、憲兵隊長の心臓を串刺しにする。


「これで 極道が殺したかった奴は、できる範囲内で 殺せたか?」と俺。

「はい!」と極道達。

「だいたい、これぐらいの数の人間を殺すと、1人や2人見逃してもいい奴が、いるもんなんだけど。ゴロツキも憲兵も、よっぽど腐りきってたんだな。じゃあ、館に戻って風呂に入って、宴会にしよう!」と俺。

「ウーイー!」と言い、右手を上に上げる澤野さわの。「はい!」といい返事の極道達。


こうして 俺は、極道のトップ 清水きよみず次郎長じろうちょうになった。そして、ちゃんと環境に適応した。ちなみに 澤野さわの小久保こくぼは、生まれ変わっても 福岡の『タテオカ』という組織で、相変わらず極道をしています。裏稼業の、トップ集団としてもね。もちろん、生まれ変わった ひがし 清二きよじとしての俺とも、福岡で再会し 俺は小学生だったけど、澤野さわの親分 小久保こくぼ親分と、呼ぶことにした。次回の話も、清水きよみず次郎長じろうちょう一家編です。以上。

読んでくれて、どうもありがとうございました。よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!

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