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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第四話 江戸

江戸に向かい、着いたときの話です。

第四話 江戸

                   リュシフェル

 山賊に遭いながらも逆に金持ちになり、とぼとぼと江戸まで歩いて来た。本当に長い道のりだった。小説だと一瞬だけど。道中、唐沢師範と俺でいろいろな話をした。それを少しだけ。

「トシ。トシは将来どんな侍になりたい?」

「うーんとね。やさしくつよく、できたらさらに、おもしろくかっこいい侍になりたい」

「優しく強くか。ということは私みたいな侍か?」

「ハハハッおもしろい冗談を。唐沢師範、やさしいとなめられる、つよいと恐れられる。でも、俺の中ではやさしいとつよいは同じ意味を持つ言葉なんですよ」

「トシ、私に分かるように説明してくれ」

「やさしい人間と何でも言う事聞いてくれる人間とは似ていても、まったく違う人間なんですよ。やさしいの裏に芯のつよさがないと」

「うーん。深いなー」

「それにつよい人間と恐れられてる人間も、まったく別の種類の人間です。あいつはつよいけどやさしい、そう言われる人間を侍全員は目指さなければいけないんじゃないかと」

「そうか。トシの言う通りかもな。私も心底そういう侍になりたい」

「そして、おもしろくかっこよく。難しそうだけどやりがいはありますよね?」

「要するにまとめると、トシは私みたいな侍になりたいということだな」

「ハハハッ冗談を。ただ、師範は良い侍だとは思います。何より俺は師範に拾ってもらったし。本当に感謝してます」

「トシ、今の私にとってはトシがすべてだ。私の方こそありがとう」


 そうこうしてる間に江戸に到着。んんっガキ共に囲まれる。どうやら目当ては唐沢師範のようだ。師範、師範となつかれてる。

「トシ、私も子供達には人気があるんだ」すごくうれしそうな子供達と唐沢師範。俺も、なついちゃおっかなー。

「唐沢師範。こどもたちに人気があるのはやさしく、なおかつおもしろい人間ということですよ」

「トシにそう言ってもらえると本当にうれしい」そう言いながら子供達の頭をなで終わり、今日のところは子供達にさよならを言う。なんだか唐沢師範は本当に子供が好きみたいだ。俺には見せたことのない寂しそうな顔をしている。

「トシ、トシは子供達を好きか?」真顔の師範。

「好きといえば好きなんだけど奢ってあげられないから切ないかな」

「ふふふ。トシ、私も一緒だ。そのかわり私は時間のゆるす限り子供達に、自分と自分の大切なものを守れるように剣術を教えている。その結果、子供達は私を師範、師範と呼んでくれるようになった。私は唯一、自分を誇れるとしたら誰よりも剣術に秀で、なおかつ丁寧に分かりやすく教えられるというところだ」


 と、向こうから二人の侍がやってくる。こちらに気づいたようだ。

「おい、唐沢の野郎がいるぞ。逃げたんじゃねえのか」

「唐沢、のこのこ何しに来た。もう、師範は辞めたんだろ」

 唐沢師範の顔色が明らかに曇る。どうやら、子供には人気があるが大人にはないらしい。俺に脇差貸してくれればこの二人ぐらい無礼討ちにしてやるのに。あーあ。

「この子を探していた。次の将軍様にはこの子になってもらいたい。名前はトシという。誰よりもやさしく、誰よりもつよい。こういう子が将軍様にならないと幕府はもう、終わりだ」そう言いつつ俺を後ろに隠してくれる師範。

「こんなガキが将軍様だー?唐沢、そもそもお前ごときにそんな権限ないだろうが」二人の侍のうちの一人に怒鳴りつけられる。オーライ、無礼討ちだ。怒鳴りつけやがった侍の金玉を思い切り蹴り上げる俺。蹴り上げられた侍は泡を吹きながら横に倒れる。

「なあ、唐沢師範。武士がなめられちゃおしまいだ。ましてや、俺を拾ってくれた人が目の前で怒鳴りつけられているのを我慢するのがやさしさなら、俺はやさしくなくたっていい」

「すまん、トシ」口を真一文字に結んでうつむく師範。

「ついでだっ」もう一人の武士の鳩尾に直突き。

「トシっやりすぎだ」あわててとめる唐沢師範。

「江戸か。楽しくなってきたじゃねえか。ただ、金玉の感触は最悪だ。次からは、脇差を貸してくれ師範」そんな事を言っている俺を遠めから見ていた子供達から、拍手喝采。ブラボー、ブラボー。これで俺も、人気ものの仲間入りかな?

「トシ、今のうちに城へ向かおう」

「はい、ほーい」以上。



よろしければ続編も期待してください。よろしくお願いします。


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