第三十八話 近藤
近藤さんとの、出会いの話です。
『天然理心流』と書かれた、道場の前に来た。俺は念の為、刀を確認する。斎藤さんも、同様だ。沖田は、無警戒ではしゃいでいる。それを見て、源爺は笑顔だ。嬉しそうに、微笑んでいる。「ここは、私が」と、源爺が先に 道場に入る。続けて、俺 斎藤さん 沖田も、道場に入る
そこには、 いかにも武士といった男がいた。体格も どっしりがっちりしていて、顔も大きく おそらく強い。その男は 豪快に笑いながら、近藤と名乗った。
「近藤さん!この3人が前に話した、私よりも強い 少年の部を代表する人達です」と、源爺。
「がはははは 笑。『天然理心流』の道場主の近藤 勇と申します」
「名字は、まだない。名前は、歳三だ。侍を、目指してる。よろしく、どうぞ」
「斎藤 一と申します。同じく、侍を目指しています。よろしくお願いします」
「ウーキッ」と、沖田。
「近藤さん、この少年は 沖田 総司君と言って、無邪気で純粋な少年です。戦国時代には、私と一緒の時には 木下藤吉郎でした。後に 豊臣秀吉として、天下人にまで 上り詰めました。そして生まれ変わって、今 ここに居ます」と源爺。
「がはははは 笑。源さんに、そこまで見込まれている少年ですか。元天下人ですか。それはいい!よろしくお願いします」
源爺と近藤さんの案内で、道場を見てまわる。汚くもないが、綺麗でもない。武具が、雑然と置かれている。沖田が、源爺の側で 目を輝かしながら、「ウキウキ」はしゃいでいる。源爺もそれを見て、自慢げに目を細めている。久し振りに会った2人だ。やっぱり、こうじゃなくっちゃ!
「近藤さんと、呼べばいいか?」と、俺。
「はい」
「『天然理心流』って、どういう武道や流派なんだ?」
「全て、実戦を想定した流派です。形式だけではなく、実際の斬り合いで力を発揮します」
「確かにそっちの方が、ためにはなるか。とりあえず、俺と斎藤さんと沖田の三人で、仮入門させてもらっていいか?」
「是非!大歓迎です。がはははは 笑」と、豪快に笑う 近藤さん。
《近藤 勇。頑丈な頑強な身体をしたこの男が、後に京都で獅子奮迅の大活躍をする事になる。ただ 今は、多摩地区の普通の道場主でしかない。それに、大抵 強いと言われる男は、一度は俺と闘うことになる。どっちの方が強いか、白黒はっきりつけようじゃねえか、という事で。俺の悪い癖なんだけども。今の近藤さんは、野武士といったとこかな》
旅の疲れを癒すのも兼ねて、源爺の家で 酒盛りとなった。源爺の家は、槍が置かれ、整理整頓されている。はしゃぎ回る 沖田を見ながら、俺と斎藤さんと源爺で、楽しく酒を飲む。そうこうしていると、近藤さんともう1人の大人の男がやって来た。
「がはははは 笑、私も宴会に参加させてください。それとこの男は、私の用心棒をしている『野口』と言います。もちろん、天然理心流の門下生もしております」
「野口と言います。よろしくお願いします」
「歳三だ」
「斎藤です」
「ウキッ」と、沖田。それじゃ名前が、伝わらないよ沖田。
「野口君、この少年が 沖田 総司と言います。私が保護者をしていて、無邪気で純粋な少年です。知っておいてください」と、源爺。
宴会の最中、近藤さんが自分の拳を、全部口の中に入れるという特技を披露する。試してみたが、とても真似出来るものではない。沖田が「ウキウキ」言いながら、踊りはしゃぎ、「がはははは」と言う、近藤さんの豪快な笑い声が響く 宴会になった。どうやら 沖田と近藤さんは、裏表がない者同士 ウマが合うみたいで、2人で肩を組んで「ウキキ」と言いながら、歌を歌っている。源爺も、それを見て笑顔だ。そして、とうとうお酒が切れたので、残念ながら お開きとなった。あとは、明日 道場でということで。
こうして、近藤 勇さんと 、後にぐち君と呼ばれる野口君に出会った。そして幕末と呼ばれる、この時代の変革期を、一緒に駆け抜けていく事になる。図らずともね。次回の話は、俺対近藤さんとの対決の話と、天然理心流についての話です。以上。
とうとう出てきた、近藤勇!よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!