第三十七話 源爺
多摩地区での、出会いの話です。
沖田が 驚き喜びながら、中年の大人の男に抱きつく。それを見て、斎藤さんが微笑んでいる。久し振りに 俺の側の人間に会えたから、そりゃあ俺だって嬉しい。その男を、俺は 昔から、源爺と呼んでいる。そう その男は 沖田 総司の、昔からの保護者で 沖田が最も信頼を寄せる男。その名は、井上 源三郎、沖田の全てを肯定し、しっかり保護者として守る、俺の側の人間だ!
「ウキキキキーッ!」と、はしゃいで回る 沖田。うん 多分、沖田の笑顔は、俺の側の人間にとって、財産なのかもしれない。
「源爺で、いいんだよな?」と、俺。
「はいっ!今は、井上 源三郎と、名乗っています」
「本名じゃねえか。俺は、名字はまだなく 歳三と名乗っている。よろしくな、源爺」
「トシ君と、呼べばいいですか?」
「ああ。久し振りだな、源爺。沖田ほどではないかもしれないけど、久し振りに 俺の側の人間に会えて、俺だって 嬉しいんだぞ」
「ハハッ 笑、そうですか」
「源さん、お久しぶりです。今は 俺は、斎藤 一と、名乗っています。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
《井上 源三郎!優しくて、強い男。いつも 沖田の味方で、心配ばかりしている。槍の使い手で 強いくせに、暴力を使おうとはしない。嘘もつかないし、裏表もない。信頼と実績の、井上 源三郎。ちなみに俺は、省略して、源爺と昔から呼んでいる。ちゃんと生き残って、じじいまで生きる事が、名誉なことだったりもする。俺も省略されて、トシ君と呼ばれている》
「源爺、刀差してるという事は、侍か?」と、俺。
「はいっ!私が侍かどうかは別として、侍になりたい侍でありたいと、思っています」
「やるじゃねえか、源爺。俺も斎藤さんも沖田も、ちょうど侍を目指してるところなんだ」と、俺。
「ハハッ 笑、そうでしたか。それは、丁度いいですね。やっぱり沖田君には、トシ君や斎藤さんが、いなくては」
「ウキッ!」と、沖田。話しを聞いていたのか分からないが、唯一分かっているのは、沖田が調子に乗っていることだ。
「じゃあ 源爺、この人生は俺達3人と、侍目指して 相変わらず 沖田のお守りとして、一緒にやっていくか!」と、俺。
「源さん、是非!」と、斎藤さん。
「かしこまりました!末長くこちらこそ、よろしくお願いします」と、源爺。
「ウキキキキーッ」と沖田が、源爺にまとわりついて、浮かれ喜んでいる。そんな中、現状把握と自分達の状況 立ち位置を確認する。大して金はないけど、強さはある。あとは 誰に認められたら、侍になれるかだ。そして、どうすれば侍で あり続けられるかだ。
「源爺は、普段どうやって鍛えているんだ?」と、俺。
「自己鍛錬と、近くの道場に通っています」
「例えば その道場に、俺と斎藤さんと沖田の3人が、一緒に通うことは出来るか?」
「出来ますよ。そんなに大きな道場じゃありませんが、トシ君達 3人なら、きっと大歓迎ですよ」
「じゃあ その道場に、見学だけでも 行ってみるか」と、俺。
「はい!」と、斎藤さん。
「ウキ?」と、沖田。源爺に会えて浮かれ、やっぱり話しを聞いていない。いつものことだから、問題はないけどね。源爺は沖田を叱らないし、沖田は天才中の天才だから、普段は遊ばせておく。戦の中の諜報作業や情報戦に、沖田は凄い力を発揮するんだ!
という訳で、源爺に案内してもらって 多摩のとある道場まで来た。道場の看板には『天然理心流』と、書いてある。外観は、大きくもなく小さくもない、何の変哲もない感じだ。
「ここが、源爺 お薦めの道場か。強え奴、いるかな」と、俺。
「トシ君は、相変わらずですね」と、源爺。
「トシさん、勝手に暴れちゃ駄目ですよ」と、斎藤さん。
「ぬおー、何で 俺は、そんなに信用がないんだ。まあ、いいや。いざ!」
こうして ずっと昔からの沖田の保護者、井上 源三郎と合流した。源爺は いつも沖田の味方で、源爺が褒めると沖田は調子に乗る。もちろん、悪いことではないから、別にいいけど。次回の話は、天然理心流の道場での話です。以上。
やっぱり、俺の側の人間に会えると、嬉しい。沖田も、源爺がいると安心する。ちなみに今現在は、沖田も源爺も 天国にある異次元で、一緒に居るはずです。さあ それでは、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。では!