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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第三十三話 旗本

やっと江戸に到着し、一悶着あったところです。

俺と斎藤さいとうさんと沖田おきたの 京都から江戸へ向かう旅も、やっと終わりを迎えた。道中 いろいろあったけど、今 三人の目の前には 江戸の町並みが、広がっている。俺は かつて江戸城に住んでいたことがあるから 何ともないが、沖田おきたは 見るもの聞くもの 好奇心を出して、無邪気にはしゃいでいる。斎藤さいとうさんは せっかく江戸に着いたのに、はしゃぐでもなく 、難しい顔をして何か考え事をしている。何か思うところが、あるのかもしれない。

斎藤さいとうさん、久し振りの江戸なのに 浮かない顔だね」と、俺。

「はい。俺は元々 江戸幕府の旗本の家の子供だったんですけど、家族もなく名前もなかったので、いい思い出が 一つもありません」と、斎藤さいとうさん。

「そういえば 薩摩さつまに流れ着いた時は、確かにボロボロだったね。だけど 今は、俺もいるし沖田おきたもいる。斎藤さいとうさんの この人生は、もう大丈夫だと思う」と、俺。

「ウキッ!」と、沖田おきた沖田おきたなりに、励ましているのかもしれない。届いてないけど。

「分かってます!今は 一人じゃないし、自分が 何者かも、ある程度 分かっているつもりです!」と、斎藤さいとうさん。

「それじゃあ、恐れずに行こう!斎藤さいとうさんを苦しめた奴なんて、俺と沖田おきたで 蹴散らしてやるよ」と、俺。

「ウキッ」と、沖田おきた。きっと話しも 聞いてないし、思いも届いてないよ、まったく。

「今は京都が 時代の中心だけど、天皇が江戸に移れば、ここ日本の中心は江戸になる。斎藤さいとうさんにとって 心残りがないように、しっかり まずは斎藤さいとうさんが、住んでいた場所や 下町辺りを見て行こう」と、俺。



江戸の下町の 旗本の家の人達が、住んでる辺りに来た。さすがに 江戸だけあって活気がある。そして、斎藤さいとうさんと 同い年か少し歳が上の少年達に、囲まれた。どうやら 斎藤さいとうさんの 知り合いのようで、囃し立てられ 険悪な雰囲気だ。

「お前 今更、何しに来た!俺たちが怖くて、逃げ出したんだろ!」と、斎藤さいとうさんに 向かって、少年が言う。斎藤さいとうさんは、黙って下を向いている。

「何だ、刀なんか差して。旗本にも 成れなかった奴が、武士の真似事かっ」と、また違う 少年が言う。

「うん」と、俺。「ウキッ」と、沖田おきた。珍しく、怒っている。

「これからは、俺たちの…」と、別の少年が、言い出した途中で、その少年をドーンと俺が前蹴りで、蹴る。

「よっしゃああ、沖田おきた 暴れるぞ!峰打ち 祭りだー!」と、俺。どうしても、我慢出来なかった。

「ウキッ!」と、沖田おきた。旗本家の少年の、刀を奪って暴れ回る。

俺と沖田おきたで、刀を抜いて 峰打ちだけで、旗本家の少年達を倒していく。安心して下さい、峰打ちですよ。沖田おきたも、頑張って、ちゃんと闘っている。沖田おきたが、ちゃんと闘っているなんて、戦国時代以来だ。よっぽど、斎藤さいとうさんが侮辱され、ぶち切れたんだろう。粗方、倒し終わり、斎藤さいとうさんを見ると、笑顔と泣き顔で、ぐしゃぐしゃになっていた。そして、斎藤さいとうさんは、涙を拭いて「ありがとう!」と、胸を張って 言った。


《この時代この人生の、俺と斎藤さいとうさんと沖田おきたは、家族がいない。もちろん、親もいない。これだと、自分の名前も年齢も、分からない。誰も、守っちゃくれない!そんな状態の中で、斎藤さいとうさんは、幕府の旗本の家の子供として、生き しんどい思いや、辛い思いをしてきたのだろう。だからこそ、強くなれ!強くあれ!そして、いつか 自分の家族を、持ってくれ!》



俺と沖田おきたで、斎藤さいとうさんを嘲笑った、旗本家の少年達を、峰打ちで倒していると、騒ぎを聞きつけた 岡っ引きと、幕府の役人が来た。知ったこっちゃないので、旗本家の当主の大人達まで、倒していると「事情を、教えて下さい!」と、岡っ引きが言う。

「大儀のある、峰打ち祭りだ!邪魔すると、お前らも 標的にするぞ!」と、俺。

「トシっ、トシ様じゃありませんか?」と、幕府の役人。どうやら、かつて俺が、江戸城で君臨していた頃の、知り合いみたいだ。幕府の役人の一声と怒鳴り声で、旗本家の少年達と大人達が、かしこまってしまった。あーあ、せっかくの峰打ち祭りが。


斎藤さいとうさんも、復讐は こんなとこでいいか?」と、俺。

「はいっ!」と、斎藤さいとうさん。

「それじゃあ、名前も知らない、幕府の役人。江戸城へ、案内してくれ。こっちは 長旅で、疲れてんだ。ちなみに、今の俺の名前は 歳三としぞうだ。名字は、まだない」と、俺。

「ウキッ?」と、沖田おきた

「はい、未来の将軍様。直ちに、案内させてもらいます!私なんかに、本名を明かさないでください」と、幕府の役人。

「ウキッ」と、好奇心を出す、沖田おきた

「それじゃあ、いざ 江戸城へ!」と、俺。

「はいっ」と、斎藤さいとうさん。「ウキッ」と、沖田おきた


こうして、親もなく ボロボロだった斎藤さいとうさんを、イジメて苦しめた 幕府の木っ端役人 旗本達に、ちゃんと復讐をした。こちとら、将軍になる資格を持ってるからね。唯一無二の親友を、苦しめた奴らを、そのまま野放しにのさばらさせては、いけんじゃろうが!次回は、江戸城で はしゃぐ、俺たちの話です。以上。

楽しんで頂けましたでしょうか。続編も、どうぞお楽しみに。それでは、良いお年を!

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