第三十一話 完治
江戸へ向かう旅の途中、斎藤さんが 風邪をひき 治してるところの話です。
俺と斎藤さんと沖田の 江戸への向けての旅も、残りあと4分の1ぐらいだ。相変わらず 斎藤さんは 風邪をひいているが、沖田の世話もあってか、どんどん回復していっているみたいだ。何とか 沖田風邪も、気持ちを強く持って 一皮むけた自分になれば、治れるみたいだ。沖田は、斎藤さんの世話を一生懸命頑張り、その事には 気付いてなさそうだが。
いつものように 朝、俺が 斎藤さんをおんぶして 先へ進もうとすると、斎藤さんに「もう 自分の脚で、歩きます。そろそろ ちゃんとした自分に、なります!」と 言われる。試しに歩かせてみると、フラフラでおぼつかないが、何とか前へ進めている。さすがだね。
「そんじゃあ 沖田、ギリギリこちらの方が見えるぐらいまで、道を先に進んで」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。凄い速さで 道を、沖田の姿が見えるギリギリのところまで、走って行った。
「うん。これで斎藤さん、歩いてみて」と、俺。
「歩ける!」と、斎藤さん。先程とは 比べものにならないぐらい、しっかりとした足どりだ。
「うん。沖田風邪って、沖田の味方をする者を呪う為に つくられた。だから 沖田と距離を置いておけば、少しは和らぐみたいだね。そのうち 近くに居ても、大丈夫になるだろう。斎藤さんも沖田も ここまで来るまで、過去を遡っても 何一つ間違っていない。呪われるなんて、逆恨みも いいとこだ。ただ斎藤さんが、今 襲われたら ひとたまりもないので、回復具合を見ながら 剣術の稽古も お互いして行こう」と、俺。
「はい!」と、斎藤さん。
沖田は 1人で、距離を取らなければならないのが 寂しいみたいだが、これも 風邪を治すため。俺の方は、斎藤さんが 強すぎて、剣術の稽古の相手をするのが 大変でならない。これで 完全回復したら どうなるのか、ひたすら恐ろしい。俺は やせ我慢をして「今日は、これぐらいにしておこう」と、なるべく大丈夫なうちに、切り上げてはいる。
《沖田もそうだし 斎藤さんもそうだけど、もう充分強くなった。存在が 大きすぎて、俺は 自分の小ささを 嫌という程 思い知らされる。2人は何とも、思ってないみたいだが。俺は 努力はある程度でいいと思っているので、限界以上に頑張ったりはしない。でも 斎藤さんに勝つには、限界以上の力を出さなくては 勝てない。まったく、好敵手とは そういう者か。唯一無二の親友でも、あるのだけど。ちなみに 沖田は、遊ばせておくことに限る。俺は、沖田には 自由で楽しく、過ごしてもらいたい。何の責任も、負わずにね》
ちょっとずつ江戸へ向かいながら、幾日か過ごしていると、斎藤さんが「もう 大丈夫です!」と、全快を宣言した。試しに 沖田が、近づいてみても 問題がない。そして「ウキキー!」と、沖田も全開になった。沖田なりに 責任を感じていたんだなと思い、これから俺は、復活した斎藤さんと 闘うのかと、身が引き締まる。
「トシさん、これで俺 戦えますよ」と、斎藤さん。自信がみなぎり、前より 強くなった気すらする。さすがに、敵の策略により 風邪をひいても、斎藤さんは こんなとこで こんなことで、死ぬ男ではない。
これで 沖田風邪も、沖田と距離を置き 療養すれば治せることが、証明された。今後のために、俺も ひくだろう沖田風邪のデータが取れた。俺は、もっと短期間で 療養もしないで、治してみせるけどね。
《斎藤さんの 風邪が治った事で、沖田が久し振りに はしゃぎまわっている。「ウキキ」の歌と「ウキキ」の踊りを、披露している。人間って、こんなに喜べるんだね。まあ 斎藤さんの風邪が治り、俺だって 喜んでるから、いいっちゃいいけどね。ちなみに 斎藤さんは、まとわりつく沖田を 面倒くさそうに、邪険に扱っている。せっかく風邪が治ったんだから、沖田と一緒に 歌って踊ればいいのに。うん、斎藤さんは 、そんなこと しないか。確かなことは、これで また一緒に戦える!侍を目指して!》
「じゃあ もう金が、ちょびっとしかないから、ちょびっとの酒で 斎藤さんの回復を祝って、宴会をしよう!」と、俺。
「はい!」と、斎藤さん。「ウキッ!」と、沖田。
《何か 何かにつけて、基本 毎日、宴会してるな。まっいっか》
こうして 斎藤さんの 沖田風邪も、無事治り、また 沖田が 明るく無邪気に元気になった。やっぱり沖田は、こうじゃなくっちゃ!次回の話は、俺と斎藤さんの 最強の座をめぐる、対決の話です。以上。
よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。