第二十八話 道中
京都から 江戸へと向かう、旅の途中の話です。
仏教の高僧 久米さんと別れ、俺とオダギリと沖田は 名残惜しくも、京都から 江戸へ向けて出発した。京都では、俺は 舞妓さんと 遊びたかったのに、それは叶わず、オダギリは お洒落な服を揃え、沖田は 久米さんに抱きつき、丁寧にお礼を言い、あいからわずの 三馬鹿トリオで 東へ向かう。
「オダギリ、久米さんも いなくなったし、これからは この時代オダギリの事を、斎藤さんと呼ぶ事にするよ。本名名乗るなら、相手を見て 名乗ってくれ。斎藤 一って、せっかくオダギリが 考えた名前だしな」と、俺。
「かしこまりました。俺が呼ぶ分には、トシさんでいいですか?」と、斎藤さん。
「ああ。それで、大丈夫。沖田総司は、本名だけど まあいいだろう。下手な名前 付けられないしな」と、俺。
「ウキ」と、沖田。
《沖田は 裏表のない性格で、天才中の天才なので ファンも多い。俺が しっかり方針を出して、この時代は 斎藤さんが、しっかり見守っていなくては。沖田を表わす数字はないけど、強いて挙げるなら【0】か【1】かな。沖田 総司という名前は、ずっと以前に その時の俺が、名付けた。あえて数字は、入れなかった。沖田は 独りぼっちではなく、ちゃんと幸せにならなければ!その為に 俺は、策を練ろう。考えろ、俺》
ちなみに 沖田は、刀を持っていないので、木の枝の棒を 振り回して遊んでる。茶屋があったので、少し休憩することにした。
「沖田、久米さんから 頂いたお金があるから、食べ放題飲み放題でいいぞ」と、俺。
「ウキ」と、沖田。久米さんとの別れを思い出したのか、一瞬 哀しそうな顔をする。基本 沖田は、別れが嫌いだからね。
こういう時は、「よしっ沖田、饅頭の早食い競争だ!」と、俺。口に入れられるだけ 饅頭を頬張り、沖田も 真似する。2人で限界まで 饅頭を頬張り、ふと斎藤さんを見ると、呆れた顔をして、おいしくお茶を飲んでいる。斎藤さんも、饅頭を頬張りまくればいいのに。
《斎藤 一こと オダギリは、俺の唯一無二の親友で、秀才と評価される事が多い。無論 強さは一級品で、俺 オダギリ 松風の史上最強スリートップの内の、1人でもある。オダギリを表わす数字は【44】で、その為 名前は【し】と【よ】を入れ、ショーじゃ締まらないので、ジョーと俺が決めた。なのに何で、この時代の名前を 斎藤 一にしたのか。【44】は、どこにいったのか。ただ 、よく俺の親友に なってくれた。文太にしろ オダギリにしろ、俺が 宝物としている、ちびっ子天使 哀姫を拾った時に、どうしても俺の側の人間にしたかった二人だ。その二人が、文太は俺の唯一無二の子分、オダギリは唯一無二の親友となり、俺と同じく、天上人の資格を持っている。有難いし、2人とも どうもありがとう!》
やっと 俺も沖田も、饅頭を何とか食べ終わり、お茶で喉を潤す。
「斎藤さんは、饅頭 食べないのか?結構美味しいぞ」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。抹茶を一気に飲み干す。全く、抹茶は味わって飲むものなのに。
「別に 饅頭食べてもいいのですが、体重制限があるので。細身じゃないと、似合わない服もあるので」と、斎藤さん。
「相変わらずの、お洒落さんか。沖田も 少しは、見習いなさい」と、俺。
「ウキッ?」と、沖田。沖田は 服には無頓着で、だいたい斎藤さんが、沖田の服を選び、揃えてあげてる。もしかしたら それは、すごく贅沢な事かもしれない。斎藤さんより お洒落な人は、そうそういない。全く、沖田は そのことに、気付いているのか?まあ、沖田なら いいけど。
「そんじゃあ 江戸までの道のりも、残すこと あと半分なので、旅館が見えたら今日はそこに泊まろう」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。
「かしこまりました。ゴホッゴホッ!」と、斎藤さん。青ざめた顔で、急に咳き込む。
「そろそろか」と、俺。
「ウキ?」と、沖田。
「斎藤さん、旅館まで歩けそうか?」と、俺。
「はい。大丈夫です。ゴホッカハッ!」と、斎藤さん。もう 立っているのが、やっとみたいだ。
「じゃあ 沖田は 現地の人に、近場の旅館の場所 聞いてきて!俺は そこまで、斎藤さんをおぶって行くから」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。凄い速さで、走って行った。
「すいません。俺の不手際で」と、斎藤さん。こんな時に だけど、青はやっぱり斎藤さんに、似合う色なんだな。俺を表わす色は、赤なんだけども。
沖田が見つけてくれた旅館に、斎藤さんを おぶって運ぶ。斎藤さんは、咳き込みながら ぐったりしている。
「沖田、この旅館で 二日間静養しよう。二日間待っても ダメなら、俺がおんぶして斎藤さんを、江戸まで運ぶよ」と、俺。
「ウキ…」と、沖田。だいぶ、心配しているみたいだ。
「トシさん、俺のせいで すいません」と、斎藤さん。
「大丈夫。心配ない。いずれ治る」と、俺。
こうして 京都から 江戸へと向かう道半ばで、斎藤さんが病魔に襲われた。江戸までの道のりは、あと半分。治らなくても、運ぶ。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。