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「副長、土方」  作者: 東 清二
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第二十七話 待機

京都での、久米さんとの別れの話です。

俺 オダギリ 沖田おきた久米くめさんとで、京都御所で 時の天皇に会い、薩摩さつま 長州ちょうしゅうの、京都御所の門を守る 藩兵達の 真ん中を 歩いて、そこを 後にした。

「さあ 生きて帰ってきたことを 祝って、宴会でも しよう。久米くめさんとも、ここで お別れだしね」と、俺。

「ウキ…」と、沖田おきたが、悲しそうな寂しそうな 顔をする。

「いや、トシ君達と 会えたおかげで、毎日が 楽しくて刺激的な日々でした。あとは トシ君オダギリ君、沖田おきた君の事だけ しっかり見ててあげて下さい」と、久米くめさん。

「了解。久米くめさんが、住むのは 京都本願寺か?」と、俺。

「はい。そうするつもりです」と、久米くめさん。

「本願寺かー。鉄砲が使えて すぐ一揆を起こすところだな。戦国時代の話しだけどね。そこに 久米くめさんが、住むのか。一揆は 起こさないように」と、俺。

「はははっ 起こしません。私は この人生で、天皇にも会えたし、あとは トシ君達が、どんなお侍さんに なるかを楽しみに、生きていきます」と、久米くめさん。

「お世話に なりました。久米くめさんは将来、有名人になりますよ」と、オダギリ。

「私、なれますか?」

「なれるよ。久米くめさんと お別れといっても、俺とオダギリと沖田おきたは 江戸へ行ったあと 数年もすれば、再び 京都へ戻って来るよ。だから 久米くめさんは、さりげなく 仏教の高僧として 出世して、京都で 待機していてくれ」と、俺。

「かしこまりました。ちゃんと 足元固めて、トシ君達が 驚くくらい出世して、お金持ちに なっておきます」と、久米くめさん。

「うん、久米くめさんは 大丈夫そうだな。あとは 俺 オダギリ 沖田おきたの、三馬鹿トリオだな。さむらいになると言っても、誰に認められたら さむらいに なれるのか分からない」と、俺。

「私から見たら、3人とも もうすでに、お侍さんですよ」と、久米くめさん。

「トシさん、それで いいんじゃないですか?」と、オダギリ。

「うーん、それでもいいんだけど、強くて優しいとか 政治も出来るとか、ちゃんと死に場所を選ぶとか、しないといけないと思う。もちろん、オダギリと沖田おきたは 別に死ななくていいんだけどね」と、俺。

「そうか、かしこまりました。死に場所は、自分で選びます。生き方についても」と、オダギリ。

「ウキッ」と、敬礼する 沖田おきた。《確実に 分かってないな、沖田おきたは まったく》

「じゃあ、久米くめさんと、俺たち3人の門出を祝って、大宴会だー。久米くめさんがいないと、俺たち3人は 貧乏暮らしだろうからな。今は 食べれる時に食べ、飲めるうちに飲んでおこう」と、俺。

「トシ君達は、貧乏を覚悟してまで、何故 江戸へ向かわれるのですか?」と、久米くめさん。

「うーん、今は 幕末といって、江戸幕府が終わりを迎える 動乱期なんだ。例えば 、オダギリだったら 幕府の旗本だったり 会津あいづと関わりがあったり、俺だったら 徳川将軍家の次期後継者だったり。ただ もう幕府には統治能力がない。二百年以上 平和な時代が 続いただけでも、良しとしなくては。俺は もう将軍には ならない。一度なっているからね。久米くめさん、誰だか 分かるか?」と、俺。

「トシ君が 過去に、将軍。誰のことなのか 分かりませんが、きっと 善政をしたのでしょう」と、久米くめさん。

「うーん、善政を出来たかは 分からないけど、徳川とくがわ 吉宗よしむねの時だよ。高倉たかくら けんさんと 菅原すがわら 文太ぶんたが、珍しく力を合わせて 俺が将軍になる お膳立てをしてくれたからね。徳川とくがわ 吉宗よしむねとして 生きた、楽しい生涯だった」と、俺。

徳川とくがわ 吉宗よしむね!名君として誰でも、知ってますね」と、久米くめさん。

吉宗よしむね、ちゃんと 『し』と『よ』が 入っている。俺を表す数字は、『4』だからね。あと 吉宗よしむね以降の将軍は、俺の後輩だから、正直どうでもいい。江戸幕府ができて 鎖国をして 平和を手にしたけど、幕府もそうだし 日本もそうなんだけど、外圧に弱い。もう幕府は、戦えない。さむらいの時代も 武士道が通じた時代も、もしかしたら もう終わっているのかもしれない。でも俺は、最後のさむらいになりたい」と、俺。

「ウキッ」と、沖田おきた。《沖田おきたも、さむらいに、なりたいのか。そういうもんだ》

「俺だって なれるものなら、さむらいに なりたいですよ」と、オダギリ。

「じゃっ 久米くめさんは、京都で 待機ということで。徳を積んで、出世して 立派なお坊さんになっておくように。出来たら、お金持ちに」と、俺。

「かしこまりました。ひとまず ここで、お別れですね。3人とも、お侍さんになれなくても いいですから、お体を大切に 気をつけてください」と、久米くめさん。

俺たちのいる料亭の二階から、眼下を見下ろすと、たくさんの お坊さんがいた。

久米くめさん、お迎えの坊主達が 来てるよ。さすが 仏教の高僧、やるじゃねえか。久米くめさん だって、体に気をつけてな。それでは!」と、俺。

久米くめさんが 料亭を出ると、たくさんのお坊さんに、大歓迎で迎えられてる。そして、また いつもの3人、俺 オダギリ 沖田おきたの 江戸を目指す旅が、始まる。一人ぼっちじゃないだけでも、マシか。以上。

よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。

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