第二十二話 研鑽
俺と沖田と久米さんでの、三人旅の話です。
俺と沖田と久米さんで、近畿地方の美味いものを食べまくることと、道場破りをしながら研鑽を積むことにした。沖田は、人と闘うことも争うことも、嫌いなので、美味いものを食べる係り。無論、久米さんの奢りで。俺は、強くならなければいけない。強くあらなければいけない。だから、腕を磨くために、道場破りの係りになった。ちなみに久米さんは、沖田を笑顔にすることが、大好きになったみたいだ。美味い飯と美味い酒を、ばんばんご馳走している。さすがー!
ある道場へ、道場破りに行く。大体、まだ子供じゃねえかと、追い返される。こういう時には、久米さんが機転を利かして、俺を紹介して 「この子に勝てたら賞金を出す」と、持ちかける。すると、「生きては帰さないぞ」と道場の中へ入れる。
「一番強え奴から、かかって来い!」と、俺。刀を構えると、「万が一があってはいけないので、木刀にして下さい」と、刀を木刀に変えさせられる。こちらも念の為、刀は久米さんに預けとく。
大体、相手の攻撃は、上段 中段 下段のどれかなので、いなしたり かわしたり 受け流して、一撃で仕留める。あとは、相手をしっかり見て選ぶ。気にくわない奴だと、一生 刀を持てなくさせる、怪我をさせる。オダギリと闘うことに比べれば、相手は大人とはいえ、楽勝だ。自分の強さの、確認だけをする。
沖田は沖田で、渡された木刀を何故か久米さんに預け、「ウキッウキッ」逃げまわっている。身のこなしが素早すぎて、誰もまともに闘えない。天才中の天才だから、さすがだね。そして相手が、追いかけ回すのに疲れ、根をあげたあとに、久米さんに預けけていた木刀を、俺に手渡す。そして俺が、二刀流になる。別に俺は、木刀一本もあれば、十分なのだが。天才は 理解されないかー。俺なりにでも、理解し評価しないとね。まあ、存在してくれるだけで、十分ってとこだね。
「トシ君、沖田君は、いつも逃げているのですか?」と、久米さん。
「うん。俺にしろオダギリにしろ、沖田には、徹底的に『逃げるが勝ち』を教えた。俺にしろオダギリにしろ、そうそう喧嘩には負けないから、ちゃんと戦っているぞ勝ったぞと、俺の側の人間達に伝えてもらうことにしている。物資の補給も、したいしね。もちろん沖田 自身、人を傷つけたり、人に迷惑をかけたりすることが、嫌いだということもあるけどね。沖田に関して言えば「ウキッウキッ」言いながら、遊んでるだけでいいって感じかな」と、俺。
「そうか、そうですね。少しは沖田君のことが、理解でき、分かってきました」と、久米さん。
「まあ、沖田なりの考えも、あるだろうし。戦になった場合、沖田の諜報能力は凄いから、凄え使えるんだ。すぐに、子供を味方にするし、すぐに、人気者になる。沖田の場合、裏表がないから、信用されるんだろうね」と、俺。
「ウキッ」と、敬礼する沖田。分かってるんだか、分かっていないんだか。
そして、暴れるだけ暴れて、倒したい奴みんな倒して、道場をあとにする。これで、強くなっていっているのか分からないが、それでも、何もしないよりは、マシだと思う。そして道場をあとにしたあとは、風呂に入って、お待ちかねの 久米さんの奢りで、大宴会。おれも沖田も、まだ子供なのであまり飲めないが、美味いものは美味い。大体、沖田が「ウキッウキッ」言いながら、はしゃぎまわって、沖田がうとうとし始めるとお開きになる。
そんなある日、いつものように道場破りに行くと、日本の西の方に、突きばかり多用する左利きの 少年の侍がいると、耳にする。やたらめったら強いらしい。
「沖田、きっとオダギリのことだぞ。もうすぐ、会えるかもな」と、俺。
「ウキッー」と沖田。喜んでるみたいだ。
「きっと、オダギリ君のことですね」と、久米さん。
「よしっ、今日はいい情報が入ったので、道場破りは見逃してやる。ついでに、稽古をつけてやる」と、俺。この日は、稽古付けの1日になった。
こうして自分を磨きあげる、三人の旅も、終わりを迎えようとしている。強くなったかはわからないが、楽しかった。やっぱり沖田が、はしゃいでると、場が明るくなる。さすがだね。さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。