第二十一話 脱出
四国から、出た時の話です。
沖田が恨んでいた、土佐藩士を倒しながら、四国脱出を目指す。途中、関所に差し掛かり、沖田が不安な顔をする。
「大丈夫だよ、沖田。俺たちには今、生臭坊主がいる。仏教の高僧の久米さんだと、関所を簡単に通過出来る」と、俺。ついでに、沖田の脇腹をくすぐっておく。
関所では、久米さんが、身分証や仏教の高僧の証しを見せ、難なく通過出来た。沖田が「ウキキーッ」と、喜ぶ。久米さんも、嬉しそうな誇らしげな顔をしている。
「土佐藩を出たから、もう追っ手も来ないだろう。港町で一泊して、四国を脱出しよう。久米さんのおごりで、小宴会だ!」と、俺。
「ウキーッ」と、沖田。
「はははっ。私のおごりです。大宴会と行きましょう」と、久米さん。
「宴会をするなら、沖田がいるに限る。「ウキッウキッ」とはしゃぎながら、踊りながら、飲み食いしている。あまり飲めないし、食べれないが。俺は、大食いで 大酒飲みと思っているので、こういう時は食いまくって飲みまくる。まあ、三大長老ほどは、飲めないし食べれないが。久米さんは、陽気なお酒で終始楽しそうだ。沖田が、ウトウトし始めたから、眠る支度をする。たった三人だけの宴会だけれど、いい宴会だった。
翌朝、港へ行き 東へ向けて、四国を出る。船の上でも、沖田は「ウキウキッ」言いながら、あちこち見てまわっている。早くも、人気者になる。俺は朝食代わりに、カツオのたたきを馬鹿食いしている。だって、次にいつ食べられるか分からないじゃないか?船は無事に到着し、船長と船員に丁寧にお礼を言い、船をあとにした。
「沖田、京都を目指しながら、道場破りをしていくから、沖田は見て学んでくれ。どうせ、闘いたくないだろう?」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。了解したみたいだ。
「トシ君、大阪へ寄りませんか?」と、久米さん。
「大阪は、当時の沖田の豊臣 秀吉を、不幸にしたところだから、できたら寄りたくないな」と、俺。
「豊臣 秀吉ですか?」と、久米さん。
「うん。あの時代俺は、織田 二郎三郎 信長だったから、沖田がその後継ぎだった。オダギリが俺の後継ぎを断わったからね。沖田はちゃんと、天下人になったし、もうあとは、「ウキッウキッ」言いながら遊んでるだけで充分だ。大阪は沖田を、不幸にしたところだから、汚れきって穢れきっているから、わざわざ立ち寄りたくはないね」と、俺。
「かしこまりました。沖田君は、元天下人ですか。さすが、沖田 総司様ですね」と、久米さん。
「戦国時代は、俺は沖田のことを、猿と呼んでいたから、それ以来、基本 沖田は、ウキッウキッ言ってるね。これだと、言質もとられないし。猿並みでいいから、明るく無邪気に過ごしてほしいと、俺は願っている」と、俺。
「言質を取られないように、ウキッウキッですか。ちゃんと、理由があるのですね。トシ君のあとをついで、天下人。凄い人なのですね」と、久米さん。
「うん。速度では、誰も敵わないね。名前も、俺が考えたんだよ。何とか、沖田を置いておいてもらう為に、『起きたら 掃除』。朝起きて掃除をすれば、居場所が出来るかもしれない。そんで真ん中の『ら』を抜いて、あとは当て字で『沖田 総司』に決めた。数字も入ってなく、なかなかいい名前だろ」と、俺。
「起きたら 掃除で、沖田 総司ですか。さすがトシ君、いい名前を考えますね」と、久米さん。
「『久米』なんて、大した名前ではないだろう?」と、俺。
「はははっ、そうかも しれないですね」と、久米さん。
「ウキッ」と、沖田。久米さんに、無邪気に抱きついて 勇気づける。
「そんじゃ、京都を目指しながら オダギリと合流をしよう。もちろん、俺も沖田も、侍を目指すから、道場を見つけたら ついでに道場破りをしながら、楽しい三人の珍道中でも繰り広げよう」と、俺。
「かしこまりました。楽しみです」と、久米さん。
「ウキッ」と、敬礼する沖田。理解しているのか、遊んでるのか?まあ、いつものことだ。存在しているだけで、奇跡の少年だからね。沖田は、俺が認める、天才中の天才だからね。
こうして三人とも、土佐藩と四国を、無事に脱出することができ、もう しばらく三人で、あちこちを見て学びながら、旅を続けていくことになる。さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。