第二十話 沖田
四国での、出会いの話です。
地元の子供に案内されて、俺と久米さんは、神社の祠に来た。木の枝の、棒を持った少年がこちらに気づく。俺と同じ年頃の、ガキンチョだ。歳は、6〜7才といったところか。
「そこのガキンチョ、名前当ててやろうか?沖田 総司だろ」と、俺。
「ウキーッ!」と、ガキンチョ。俺に、抱きつく。俺は、少し距離を置く。
「この子が、沖田 総司様ですか?」と、久米さん。
「ああ。やっぱり、四国に居た。ガキンチョ、知ってるとは思うけど、お前の名前は沖田 総司だからな」と、俺。
「ウキッ!」と、敬礼する沖田。
「ウキウキッ言ってたら、話が通じねえじゃねえか」と、俺。
「ウキーッ」と、沖田
「お前わざといつにも増して、ウキウキ言ってるな」と、俺。沖田の脇腹を、こちょこちょくすぐる。相変わらず、沖田はウキウキ言ってる。あと、ここまで案内してくれた現地の子供に、俺の全財産の半分を渡す。現地の子供は、大喜びしながら帰っていった。そんなに賞金出すのですかと、久米さんが驚いている。沖田には、それだけの価値がある。
「久しぶりだな、沖田。元気にしてたか?俺は、この時代この人生では、侍になる。沖田も侍に、ならないか?」と、俺。
「ウキッ!」と、沖田。敬礼をする。了解したみたいだ。
「そんでこの男が、久米さん。仏教の高僧で、あだ名が生臭坊主。ここから京都までは、一緒に旅をすることになると思う。もちろん、オダギリとも、京都で落ち合う予定だ」と、俺。
「久米と言います。沖田 総司様と会えて、光栄です。よろしくお願いします」と、久米さん。
「ウキッ」と、沖田。了解したみたいだ。
「沖田、今歳はいくつだ?」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。指で、七を表す。
「七才か。よしっ、俺も、七才だー!」と、俺。
「どんな年齢の、決め方なんですか」と、久米さんに、呆れられる。
「基本的に、俺も沖田も、家族がいないから、年齢は大体で決めるしかない。いつものことだ」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。
「そして、俺も沖田も正体は、喧嘩の強い馬鹿だー!」と、俺
「ウキッ」と、沖田。
「ちなみに、沖田。今の俺の本名は、歳三だからな。3歳をひっくり返して、歳三だ。名字は、まだない」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。
「そんじゃあ沖田も久米さんも、土佐藩や四国で、やり残したことがないように、後顧の憂いをしっかり断つぞ。沖田が、憎んでいる奴恨んでいる奴をぶっ飛ばしてから、京都へ向かおう」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。
土佐藩には、上士と下士に当たる郷士がいて、沖田の案内で、まずは郷士達に会い、よくわからないまま宴会が始まった。沖田が酒を片手に、「ウキッウキッ」はしゃぎまわっている。久米さんも、笑顔だ。じゃあ、まいっか。俺は俺で、まだ少年の坂本 龍馬と、これからの日本のことと、どうしたら女にモテるか話あっている。俺の長年の課題だ。
すると騒ぎ過ぎたのか、土佐藩の上士達が、注意しに来た。坂本 龍馬を含め郷士達は、地べたに正座してかしこまっているが、俺は関係ないので、素早く刀を奪い、沖田に渡す。
「今、どうしたら女にモテるかという、大事な話をしてるんだよ!」と、俺。刀は大小奪ってあるので、上士達の顔面を、一斉整列ビンタで倒し、上士達も正座させる。「刀は家宝だから、返してくれ」と、泣いて請われ、しょうがなく返す。せっかく沖田に、プレゼントしようと思ったのに。刀を返すと、上士達は、走って逃げ散り散りになった。
「これからの日本は、そう遠くないうちに、身分制度がなくなる。郷士だって、頑張って結果を出せば、上へ行ける。頑張ってくれ。その分侍も、いなくなるけど、俺は最後の侍になる。俺も、頑張る。よしっ、沖田と久米さん、土佐藩の上士達の追っ手が来ないうちに逃げるそ」と、俺。
「ウキッ」と、沖田。「かしこまりました」と、久米さん。
こうして土佐藩で、沖田と出会い、一緒に侍を目指していくこととなる。とは言っても、沖田は遊びの延長かもしれないけどね。久米さんは沖田に会えて、すごく嬉しそうだ。本当に、子供好きなんだな。この後は、三人で、四国脱出をしようとすることになる。さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。