第十七話 坊主
薩摩での、客人が来た話です。
とりあえず、俺もオダギリも、薩摩では向かうところ敵なしになった。俺はというと、水車にふんどしを付けてきれいする装置が、人気になり商売として成り立つようになっていた。オダギリは、お洒落に磨きをかけ、薩摩一の美男子と、言われるようになっていた。俺はー?そんな折、本郷家の東側にある東郷家に、一人のお坊さんが訪ねて来た。
「久米と申します。仏教の高僧を、しております。【トシ】というお方は、どちらですか?」
「俺だよ。薩摩では、東郷 トシと名乗っている。坊主が俺に、何の用だ?」と、俺。
「トシさん、このお坊さん、将来有名人になりますよ」と、オダギリ。
「だろうね、ピンとは来てるよ。でも、お坊さんに、今は用はないだろ」
「トシ君、お坊さんになりませんか?私が、手伝いますよ」
「断る!俺はこの時代は、侍になる。久米坊主、お引き取りを」
「トシ君、もうすぐ侍の時代も、終わりを迎えます。トシ君の年齢なら、ちゃんと仏教の高僧になれますよ。いや私が、そうしてみせます。事情を汲めっ」
「トシさん、俺は坊主には、なりませんからね」と、オダギリ。
「ああ、俺もだよ。久米が、汲め汲め言うのだな。じゃあ、あだ名は【生臭坊主】で。うーん、生臭坊主なりの、理由や考えあるのだろうけど、俺はこの時代、たとえ侍が滅びるとしても、やっぱり侍になりたいよ。オダギリも、同じ考えみたいだし」と、俺。
「生臭坊主じゃないです。久米です。お坊さんと言っても、お金持ちにもなれますし、女性と結婚しても、いいのですよ」
「坊主のくせに、女つくるのか。やっぱり生臭坊主じゃねえか。俺には、子種がない。だから、結婚もあんまり関係ない。それに、オダギリは、10歳になったんだ。俺は、6歳になった。ちょうど侍になる、お年頃なんだ」と、俺。
「お坊さんに、お嫁さんが居てもいい。それに、侍になるお年頃は、早くても12歳ぐらいで家督を継いでからです」と、久米。
「飛び級って、知ってるか?まあ、近いうちに上京するつもりだから、生臭坊主と、付き合いが生まれる分には、問題ない。俺もオダギリも、薩摩では無敵を誇り、もう薩摩藩には、用はない。あとは、きっかけがあれば、江戸へ行く」と、俺。
「江戸かー。それは、いいですね」と、オダギリ。
「京都じゃ駄目ですか?私は、京都でお坊さんをします」と、久米。
「うん、江戸で、幕府とか将軍家の、終わらせ方を決めたら、京都に住むから、生臭坊主とも京都で、近所付き合いで問題はない。ただ、俺がいて、オダギリがいたら、沖田がいないと」
「そうか!沖田 総司か!すっかり忘れてた」と、オダギリ。
「二人とも、沖田 総司様の、知り合いなんですか?」と、久米。
「ああ。大昔からの、知り合いだよ。とりあえず、俺、オダギリ、沖田の3人で、強くなろうと決めた。その為には、全ての戦、全ての戦争に、参戦しようと決めた。今も、その作戦継続中なんだよ。だったら、お坊さんじゃなくて、侍になる方がいいだろ。ちゃんと第二次大戦後は、戦争には行かないから」と、俺。
「かしこまりました。それでは薩摩藩を、出る時は私に教えてください。路銀ぐらいは、出せるので」と、久米。
「了解。くっつきすぎない、かといって離れすぎない、適度な距離でやっていこう」と、俺。
こうして、この時代一番の高僧【久米】が、会いに来てくれて、旅路を共にしたり、京都で助けあったり、して生きていく事になる。さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると嬉しいです。