第百十九話 新作
役者を志す者の身体を借り 長州藩に高杉という名で、潜伏して2日目、新作と自らの名前を決め、何の大義名分もないまま 攻め込んで来た徳川幕府の先兵たちと、俺は奇兵隊を率いて戦います。役者を志す者の身体故に、NHKの大河ドラマの生まれ変わりを必ず使う 恐ろしさと、今の俺の近況報告と想いも、描かれています。では!
時代は幕末、二百年以上続いた 徳川幕府による支配と管理が、開国を迫る 欧米列強の圧力により、終わろうとしていた。そして その事は、戦のない世 平和な世の終わりも、意味していた。鎖国政策から開国へと進み、まさに時代の転換期を迎えていた。外国相手に突出して戦い、火力と技術では敵わない。でも、陸上での白兵戦では戦える事を証明したのが、長州藩だった。そんな長州藩に対して、何の大義名分もないまま 徳川幕府は、第一次征討令で失敗し 更に懲りずに、自らの首を絞める事となる 第二次征討令を発令した。戦を知らない各藩から、長州藩へ 徳川幕府の先兵たちが、攻め入ろうとしていた。そんな中、新選組 副長、俺 土方歳三は、長州藩士で 将来 役者を目指す男、高良健吾の中身と成り、自らの名字を高杉と名付け、長州藩にて 町民と農民から成る、奇兵隊を組織した。そして、とうとう 徳川幕府の先兵たちが、長州藩へと、攻め込んで来た。
「高杉様、とうとう徳川幕府の者たちが、攻め入って来ました。長州藩の家老たちは、開城して 降伏した方がいいと言う者も 居ります。高杉様は、戦いますよね」と、伊藤君。
「ああ、戦うために わざわざ長州藩に来て、奇兵隊を組織したからな。伊藤君は、降伏して開城したら、徳川幕府によって お取り潰しになるだけだぞと、家老たちを説得してきてくれ。俺は、戦う。今 長州藩に攻め込んで来ているのは、手柄争いをしている ただの雑魚だ。徳川幕府の本体たちではない。奇兵隊で、充分 撃退できるよ。あと念のため、俺の下の名を遺言代わりに伝えておくけど、新作とする。どんな漢字かは、伊藤君が考えてくれ」と俺。
「高杉 シンサク…。どんな漢字で書くか、知りたーい。それでは、降伏を主張する家老たちを説得してきます。高杉 シンサク様は、まだ 死なないでください。明日までは、長州藩のため、日本の未来のためにも、戦ってください」と言い残し、伊藤君は 説得をしに城へと向かった。
円。自分が作って伸ばした円の中での事柄が、全て 手に取るように分かる念能力?はたまた才能の一部。それが土方歳三ではない、この高杉 新作としての身体でも、使える。なので、既に敵と戦い始めていた一度会ったことのある、 長州藩の武士の長に、奇兵隊を引き連れて俺は、挨拶に出向く。徳川幕府の先兵たちの隊列の横っ腹に、弾丸の雨を降らせて 敵を分断させてね。同士討ちにならないように気をつけながら、連撃により 烏合の集の徳川幕府の先兵たちを始末した。
長州藩の武士の長は「ハハハハハッ笑!あっぱれ、高杉殿!あっぱれ、奇兵隊!」と、身を乗り出し告げる。
「奇妙 奇天烈、奇兵隊!今日の分の長州藩にとっての敵は、始末した。明日は、俺の寿命なので 奇兵隊は、長州藩で引き取ってくれ。今のところ奇兵隊は、誰も死んではいないどころか、傷1つ負っていない。武士の長なら、戦う道を選ぶと思った。これからは上手く、奇兵隊を使うんだな」と俺。
「ははーっ、かしこまりました」と、始めて俺に頭を下げる 長州藩の武士の長。
「あとは、軍艦と。伊藤君が、開城 降伏を主張する家老たちを説得しているから、奇兵隊が居るなら 長州藩は戦えると、城へ伝えてきてくれ。この身体、咳が止まらないどころか、震えに立ちくらみまで、起こり始めた。時間がない」と俺。
「長州藩は、取り潰しどころか戦える。お侍様、お名前を教えてください」と、俺の存在を知らなかった、長州藩士たちに聞かれる。
「ああ。高杉 新作だ。今日はもう、徳川幕府の先兵たちは攻めて来ないので、誰か 長州藩の所有する 軍艦へ案内してくれ。せっかく今日は 勝ち戦なのに、軍艦に乗る者たちには、軍艦を徳川幕府へ明け渡すように、命令がいってる。このままいくと、長州藩は天下を取れるのに、軍艦がなきゃ上手くいかないだろう」と俺。
「長州藩が、天下を取れる。どうすれば、良いですか?」と、長州藩士。
「他の雄藩と、手を組み 同盟を結べばいい。今の徳川幕府は、平和ボケで 戦を知らないから、付け入る隙なら いくらでもある。慢心も、してるだろうしな」と俺。
「それなら、会津藩と同盟を結びたいです。そうすれば、西の長州藩 東の会津藩と、丁度いいです」と、長州藩士。
「ああ、俺も そう思う」と俺。
「バカ、今は 同盟の話より、高杉晋作殿を、長州藩の軍艦に搭乗させることの方が先だ。見たところ 高良健吾の中身が変わっているが、余命あと僅か には違わない。オレは、この陣に居なきゃいけないので、軍艦奉行に案内をさせろ。それと降伏を主張する家老たちを、黙らせろ」と、長州藩の武士の長。
俺は、軍艦奉行とやらと 長州藩の所有する軍艦へと、案内される。この人生では、俺は軍艦に乗った事がなかったので、見るもの新鮮で面白い。これで身体が無事だったら、軍艦の造船と改良に勤しめたのになぁ。
長州藩の軍艦の乗組員たちは、徳川幕府に降伏することで、話はついてたみたいだ。そこを、軍艦奉行が戦おうと説得している。
「まず、陸上戦では 奇兵隊の活躍により、勝利した。徳川幕府に降伏したところで、せっかくの長州藩の軍艦が、徳川幕府に奪われるだけだ。分かっている事は、徳川幕府は滅ぶ。それだと、長州藩は勝てる。どうせ この軍艦に大砲があるから、降伏を主張する家老たち目掛けて、大砲をぶっ放してやろうぜ」と俺。
「おおーっ!」と乗組員達から 歓声が上がり、自分たちの城 目掛けて、大砲を放つ準備が進められる。
「高杉殿!長州藩の城 目掛けて、撃つのですか!?」と、軍艦奉行。
「ああ。言っても、堀とか池へ 着弾させるけどね」と俺。
大砲の角度や向きを調整して、人的被害が出ないように、気をつける。円が使えるから、それが可能だ。
「角度 よし、向き よし。放てー」と俺。
「おおーっ」と、長州藩の軍艦の乗組員たち。
大砲が発射され、想定通り 城の堀に、着弾した。続けて発射し、次は 城の池に着弾した。
港に居た 長州藩士より、手旗信号が送られ もう充分との事。俺は軍艦を降り、伊藤君より 首尾を聞く。
「開城 降伏を主張する家老たちは、逃げ出しました。これで、長州藩は、降伏など致しません。勝ち戦です。高杉 シンサク殿、ありがとうございました」と、伊藤君。
「ああ。これで、長州藩は大丈夫そうだな。以後、奇兵隊の活動は、伊藤君に任せる。奇兵隊によって始末した、徳川幕府の先兵たちは、クソ大和田の側の糞野郎たちだけだ。徳川幕府の本体には、何もしていない。ただし、奇兵隊の活躍により そうそう攻め込んで来たりは、しないだろうけどな。そんじゃ俺は、高杉 新作として明日死ぬ。今も、立ってるだけで精一杯だ。俺の最期を看取る、長州藩 一のベッピンさんの女性を、用意しておいてくれ。最期ぐらい、女性の膝枕で この長州藩での三日間の潜伏作業を、終えたい」と俺。
「かしこまりました。独身女子の方が、良いですね。すぐに、手配します。高杉 シンサク殿、どうもありがとうございました」と伊藤君。
そして、日が暮れた。
《うん、長州藩の武士の長が、高杉 新作という名の漢字を、高杉晋作と誤訳し、それが広まったんだよなぁ。まぁ 中身が俺だっただけで、身体は高良健吾のモノだから、別に問題ないけど。結局、NHKの大河ドラマの恐ろしいところで、生まれ変わりが居たら 其の者にに その役を演じさせるので、高杉晋作 役を、高良健吾が演じていたし。NHKの大河ドラマなら、新選組の斎藤一 役を、俺の唯一無二の親友 オダギリジョーが演じていたのを、観ていたらよかった…。テレビを観るスケジュール上、放送されていた時は 俺は大河ドラマを毎週観てはいなかった。今は、毎週 観てるのに。新選組の大河ドラマを観ていたら、この『副長、土方』という物語も、もうちょっと 良い作品になっていたかもしれなかったのに。まぁ観なかった理由の1つに、土方歳三 役を、俺の嫌いな役者が演じていたのもあったけど。そんで2018/02/28今現在、無駄に2回目の東 清二として、俺にとっては本当の自分 大天使長 ドン・リュシフェルに やっとたどり着ける、最後の最後の人生 その分、最低最悪の人生を送る俺は、あと14年間を切った寿命が尽きるのを待つ事と、念能力の復活を祈るのみだ。確かなことは、土方歳三は 天国でピンピンしていて、出番を待ってる。もう 本当の自分にたどり着いていないのは、俺と哀姫だけなので、早く!なるべく早く、そうなりたい》
こうして俺が、高杉 新作として、長州藩での2日目が終わった。奇兵隊により始末した 徳川幕府の先兵たちは、ほとんどが手柄を立てようとしていた、元 全宇宙の支配者 クソ大和田の側の糞野郎たちだったので、手柄を立てたのは こっちの方だ。次回の話は、余命宣告通り 高杉 新作として、臨終を迎えます。さて、どのような最期でしょうか?以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!