第十一話 旅路
旅の途中の話です。
薩摩へ向かう、唐沢師範とトモ子さんと俺。三人の珍道中。
「トモトモトモトモっトモ子さん」と俺。
「トシトシトシトシっとしさん」とトモ子さん。
せっかくの新婚旅行も兼ねているのに、馬鹿が、二人に増えたと唐沢師範が嘆いている。本当は楽しいくせにー。
「ところで、歳三。何で薩摩へ、向かうことにしたか分かるか?」と急に、真面目な顔で聞く唐沢師範。
「さつま芋を食べて、オナラ、プー」と俺。
「はははっ、そうじゃない。実はな、私は歴史を知っているのだ、歳三」と得意げな顔の唐沢師範。
「俺の知っている範囲だと、薩摩と長州が、同盟を結び、江戸幕府は滅ぶ。そんなところかな。歴史は、最も好きな学問の一つだから、ある程度知っている時もある。もう、そろそろ刀の時代ではなく、そろばんの時代だね」
「それを知っていて、歳三は侍になるのか?」と唐沢師範。
「うーん、例えば、俺は薩摩藩は嫌いだし、長州藩もどうでもいい。だから、江戸幕府側の侍になると思う。まぁ、侍に成れたらだけど。じゃあ、幕府が滅ぶ、侍の時代じゃない、負け戦に成るとしても、負け方があると思う。滅び方があると思う。滅びの美学、歴史上は敗北になっても、最後の侍でありたいと思う」
「ああ、そうだったのか!じゃあ、わざわざ薩摩藩士にならなくても、いいのか?」と唐沢師範。
「まぁねー、勝ち馬に乗るのではなく、強くなりたいと思う。強くありたいと思う。薩摩と長州の天下に成るからといって、それに従属したいとは思わない。この時代だと、最後の侍だけど、ただただ侍になりたい!唐沢師範が、ちゃんと歴史を知っているからといって、それで俺が有利になりたい訳でもない」
「そうか、さすが歳三だな。じゃあ、今回の旅は、新婚旅行と見聞を広げる旅だな」と唐沢師範。
「まぁ、そうですね。薩摩に到着したら、唐沢師範とトモ子さんとも、お別れです。後は二人が生まれ変わっても、また夫婦になれることを祈るばかりです」
「うん!」とトモ子さん。何か、トモ子さんは、天然というか野生の生き物みたいだ。素敵な女性では、あるけれども。
京都に到着した。この時代は、ここが日本の中心だ。俺はキレイな舞妓さんに、目を奪われていた。唐沢師範も、舞妓さんを眺めているが、トモ子さんに蹴りを入れられ、それどころではないみたいだ。あーあ、俺はこの人生で、女は出来るのかなー。
「歳三、この旅もここで中間地点だな」と唐沢師範。
「ああ。京都は、街も整然としていて綺麗だし、街自体が碁盤の目の様になっているから、基本、方向音痴な俺にとっては、本当にありがたい。よしつ、道に迷ったら舞妓さんに聞こう!そして、でへへ」
「こらっ、歳三!歳三は、まだ子供だろ!それに舞妓さんと遊ぶには、お金がいるんだぞ」と唐沢師範。
「それじゃあ、また山賊でもぶっ飛ばして、お金を作って、そして舞妓さんと、でへへ」と俺。
「トシさんは、ちゃんとした恋愛をして、いいお嫁さんをもらいなさい!」とトモ子さん。
「うーん。何時の時代も、大体俺は恋愛力が欠片もない。よって、女が出来ない。よって、舞妓さんと、でへへ」
「歳三っ、買い物も済ませたし、そろそろ薩摩へ向けて出発するぞ」と唐沢師範。
「舞妓さーーん」と俺。
「さあ、私と唐沢さんの新婚旅行中なんだから、舞妓さんに見とれてないで、もう出発よ!」とトモ子さん。若干、怒り気味だな。
「舞妓さーーん」と俺。さて、どうなる事やら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしていてくれたら、幸いです。