第百四話 子育
女子供の味方のトップで、子育てのプロフェッショナル 北野 サキさんの入居により、新選組の朝食の味噌汁が、変わります。それと、今の俺の近況報告と想いの部分も あります。では!
時代は幕末、徳川幕府による支配と江戸時代が、終わりを告げようとしていた。永らく鎖国政策をして、平和を維持していた日本に対して、欧米列強は帝国主義のもと、戦ばかりをし 命がかかっている分、日進月歩で 技術力が上がっていた。刀や槍では 充分戦える日本も、大砲や鉄砲の火力の差や、軍艦などの製造技術の差は、そうそう埋められない。もはや、武士道など通用しない時代になった。そんな中、幼くして侍を志した俺 土方歳三は、幕末の志士たちの居る 時代の中心 京の都にて、侍の組織 新選組の副長を務めている。
最近、新選組の屯所に、北野 武 局長や 北野 勝 勘定方筆頭の母君、北野 サキさんが入居した。なので、いつも ふざけてばかりいた馬鹿局長の真面目な顔も、垣間見ることになった。
そして、朝になると「朝だ、あーさーだ!」と言い、毎朝 やって来る 哀姫も、率先して お手伝いを頑張っている。
「馬鹿トチーヤイ!これ馬鹿トチーヤイの分のお味噌汁ヤイからね。カナパンマンは、お手伝いしてから食べるヤイからね。馬鹿局長、馬鹿トチーヤイの右隣りは カナ吉の指定席ヤイ。ちゃんと見張ってないと、ダメヤからね」と、哀姫。
「おうっ、哀姫。了解した。トシ坊 こんなことじゃ、トシ坊に ちゃんとした女なんて、つくれないんじゃないか?」と、北野 武 局長。
「うん、この人生では ちゃんとした女は、出来ない事を覚悟している。まぁ 何はともあれ、哀姫も居るし、北野 サキさんの作る 出汁の入った味噌汁を食べれるだけでも、充分だ」と俺。
「確かに味噌汁が、見違えるように美味くなっている。あのばばあ、何を入れたんだろう」と、馬鹿局長。
「これだと、鰹出汁だよ。馬鹿局長、あのばばあって 北野 サキさんのことか?」と俺。
「ああ、母ちゃんのことだ。トシ坊は知らないだろうけど、過去に前世か何かで 母ちゃんが、しわくちゃのばばあになっても、気丈に振る舞って 頑張って生きていた過去があることを、おいらは知ってるんだ」と、馬鹿局長。
「過去とか 前世か…。さすが、女子供の味方のトップ 北野 サキさんだけのことはある。人生 一回切りで、そこまでは這い上がれないしな。ちなみに馬鹿局長、この時代までにも 俺にも過去や前世が、たくさんいるよ。中大兄皇子や聖徳太子とか、徳川吉宗とかね。そういう過去や前世があるから、この時代だったら 将軍に成れる権利、皇位継承権なんかは常にある。源氏と平氏の戦さ場に存在してた、馬鹿局長の次の人生が楽しみだ」と俺。
「トシ坊…。中大兄皇子に聖徳太子、序でに徳川吉宗って、ビッグネームで 名君ばかりじゃねえか。おっかねえ。そうか、おいらにも過去や前世があって、未来に当たる 次の人生があるのか…。ちゃんとしなきゃな」と、北野 武 局長。
「うしっ、馬鹿トチーヤイの右隣りが空いとる。馬鹿トチーヤイ!朝食の準備が、完了致しやした」と、哀姫。
「哀姫、お手伝い ご苦労でやんす。褒美に、いい子いい子ヤイよ」と俺。哀姫の頭を撫でる。
「うにうにー、うにうにー。馬鹿トチーヤイに、いい子いい子してもらえたヤイ!」と、喜ぶ 哀姫。
「おうっ、哀姫が ご機嫌だな。味噌汁も美味いし、今日は良い日だなぁ」と、北野 武 局長。
すると、「お味噌汁の味加減は、どうですか?」と、北野 サキさんに聞かれる。
「うん、バッチリだ。十二分に美味しい 味噌汁だ。やっと哀姫に、ちゃんと出汁の効いた味噌汁を食べさせられて、良かった。それと、北野 サキさんの呼び名を決めよう。ばばあ以外でね」と俺。
「トシ坊、ばばあで いいんじゃねえか?」と、馬鹿局長。
「サキちゃんで、いいと思いますヤイ」と、哀姫。
「馬鹿局長の立っての願いで、新選組に来てもらったのに、ばばあ はないだろ。新選組で学ぶ 子供たちには、孤児院も兼ねているので 院長先生が、肩書きだったり 呼び名でいいけど、北野 サキさん自身は、何と呼ばれたいですか?」と俺。
「サキちゃんで!理由は、カナちゃんにそう呼ばれてるから」と、北野 サキさん。
「じゃあ、俺は これから北野 サキさんのことを、サキちゃんと呼ぶことにするよ。だいたい使える女子供は、哀姫にどう呼ばれているかで、決めるんだよなぁ」と俺。
「トシ坊、おいらは 母ちゃんか ばばあ と呼び続けるけどな」と馬鹿局長。
「別にいいけど、孤児院としては親のいない子もいるので、母ちゃんと呼ぶには配慮がいる。あと サキちゃんは、女子供の味方のトップだから、馬鹿局長は 、サキちゃんを敵に回さないように注意がいる。サキちゃんを敵に回すと、ちゃんとした女子供を、皆んな 敵に回すことになる。気をつけるように」と俺。
「なんだ母ちゃん、ただのばばあ じゃないのか。せっかく新選組は、京の都の者たちに評判が良いのに、母ちゃんを敵に回すと 女子供は皆んな敵に回るのか。トシ坊の言うことは、聞くに限るから 気を付けないとな」と馬鹿局長。
朝食を食べ終わると「皿洗い!皿洗い!」と、哀姫は 嬉しそうに、お手伝いに行く。北野 サキさんと、キャピキャピ言いながらね。八番隊 隊長 安藤優子さんの時は、こうはいかなかったので、子育てのプロフェッショナルにして 女子供の味方のトップ 北野 サキさん、恐るべしといったところだ。ちなみに安藤優子さんは、「私の作る お味噌汁には、出汁が入ってなかった…。出汁の有る無しで、ここまで美味しさが違う…。」と、しきりに反省している。
「馬鹿トチーヤイ、皿洗い 終わったヤイよ」と哀姫。
「お利口さんヤイね。そんなガキンチョは?」と俺。
「しょんなガキンチョは?」と哀姫。
「こちょこちょ攻撃!」と俺。哀姫の脇腹をくすぐる。
「こちょこちょ禁止!こちょこちょ禁止ヤイ!ありー、いい子いい子じゃなかったヤイね」と哀姫。
「いい子いい子は、1日一回限定なのだよ。じゃあ 哀姫は、俺と一緒に新選組の玄関にて、門番をしよう」と俺。
「馬鹿トチーヤイと一緒に居れる!馬鹿トチーヤイと一緒に居れる!」と、喜ぶ 哀姫。
「サキちゃんは、北野 勝 勘定方筆頭の教える学問の、見学でもしててくれ。どうしたらお金持ちに成れるか?とか、どうしたら偉く成れるか?とか、勘定方筆頭の教える学問は、少なくても 日ノ本一だよ。その上で、サキちゃんは整理整頓とか、清潔感のある掃除の仕方とかを伝授してやってくれ。新選組は、安藤優子さんを除くと男所帯だから、掃除は大雑把なのでね」と俺。
「ああ!かしこまりました。掃除の仕方なら、私でも教えられます」と北野 サキさん。
「あとは、サキちゃんだったら しつけと子育てだね。俺としては、北野 武 新選組 馬鹿局長や、北野 勝 勘定方筆頭 以上の人材を望んではいない。その2人以上の人材は、俺の側の人間くらいしかいない。なので サキちゃんは、孤児院も兼ねてる 新選組に居る 子供たちに、サキちゃんが 息子たちにした子育てを、新選組の子供たちにも、実践してほしい。子育てのプロフェッショナルとしてね」と俺。
「武はともかく、勝以上は望んでいないのですね。分かりました。私が、子育てのプロフェッショナル!」と喜ぶ、北野 サキさん。
俺と哀姫は、玄関にて 御用改めに行く、一番隊や四番隊を見送り 出迎え、北野 サキさんは、新選組で未来を見据えて教えている学問のレベルの高さに感嘆し、この日は これにて終わった。
《土方歳三、誇るべき 俺の過去。今は土方歳三は、天国で待機中。そして2017/11/14今現在の俺は、2回目の東 清二として、燻り中。この最後の最後の人生だけは、上手くいかない。最低最悪の人生と覚悟していたけど、実際 体験して、死んで消えて無くなれるなら、そっちを選ぼうという気持ちになるのが、何度もあった。まあ、ただ今は 一人暮らしで、俺の試算では あと14年ある 寿命が尽きるのを待つことと、俺の念能力の復活を願うのみだ。もはや宿敵 クソ大和田は、全宇宙の支配者ではなく 俺自身、敵の手の内から 何とか逃れ、クソ大和田も 大和田の側の人間も 存在しない場所に居る。おおよそ、数百年ぶりにね。この星の最高責任者の俺の状態が悪過ぎて、日本は災害大国になり 日本中どころか 世界中、不幸になり めちゃくちゃになってるけど、皇位を返上し 本当の自分でもなく、念能力ですらない俺には、何も出来ない。全ては、俺の念能力さえ復活すれば、良くなる話なのに。今はただただ、俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫に、二十数年ぶりに逢いてえな。その為にも 俺に、念能力を!》
こうして 北野 サキさんのおかげで、ちょっとした事だけど、新選組の朝食の味噌汁に、出汁が入り 美味しくなった。サキさんは、女子供の味方のトップだけあって、哀姫とも 仲が良く、熱々ホカホカの大好きな 哀姫に、ちゃんとした味噌汁を食べさせることができるようになったのは、俺としても有難い。そういえば 俺も、味噌汁 好きだしね。次回の話は、徳川幕府が滅びる歴史を知っている俺と、サキさんを含む 新選組の者たちと、未来についての話し合いをします。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!