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罪人、惚れられる

 いつの間にか太陽が下って、辺りが暗くなった。

 ずっとこうしていたいが、ここは異世界なのだ。

 一度現状を確認することも必要だろう。

 魔物からは近づいてこなくなったことだしな。


 まず俺の服装だが、青色のゴワゴワとしたシャツとズボンといった簡素なものだ。今は返り血でほとんど赤色だが。


 食べ物はスキル[創造者]で作ることにしよう。

 このスキルは一度触ったことがある物を魔力を消費して作り出せる。

 魔力は無限らしいので実質消費ゼロで作り出せることになる。

 神か。


 とりあえず試してみる。

 ハンバーグが食べたい!


「あ……」


 確かに出て来た。

 地面の上に直接だけどね。

 そうだよな。皿が無いといけなかったよな。

 何もないところからハンバーグが出てきたことよりも、食べれなくなったというショックの方が大きい。

 気を取り直してまずは、皿を作り出す。

 そしてこの上にハンバーグを作る。


 ナイフとフォークも作り出して食べた。

 前の世界で触った物が作り出せるというのは本当に便利だ。

 お金いらないのでは?

 あーでも、マッサージとかのサービスは作れないか。

 物じゃないからな。


 それにしても、謎の荒野で魔物の死骸に囲まれながらハンバーグを食うような体験をすることになるとは思わなかった。

 意味不明だ。旨いんだけど、この状況で素直に喜べるかって言われたら喜べないよね。


「ゴオォオン!」


 唐突に、爆音が響き渡る。驚いて音の方向を反射的に見るとそこにあったのは謎の肉の塊。地面とぶつかった衝撃で弾けとんだのだろう。

 空から落ちてきたようだ。


「ガンッ!」


 今度は別の方向に落ちてきた。

 これは何かの攻撃か?

 それとも異世界特有の天気か?

 今日の天気は肉の塊ですってか?

 あ、いや違うな。あれだ。

 俺が空に落ちろとか言って打ち上げた魔物だ。全く落ちてこないから忘れていた。


 それから次の日の朝日が昇るまで、周囲には爆音が響き渡った。



「おはよう。今日も元気に運動だ」


 魔物しかいない何処までも続く果てしない荒野で俺は一人、朝の挨拶を呟いた。

 円滑なコミュニケーションは挨拶から。人間は俺以外にいないが。

 それからスキル[創造主]によって剣を作り、黒いトラのような魔物の元に一直線で進む。振り方は体が教えてくれる。

 何の抵抗も感じずに刃が入り真っ二つになった。

 気配を探って、次の獲物を探す。

 非常に離れた距離でも精密に探ることができる。これもスキルのおかげだ。

 数が多かった方向に向けて、剣を振ると衝撃波のようなものが発生し斬撃を飛ばすことに成功した。その斬撃は見えなくなるほど遠くまで飛んで行った様だ。


 その後も魔物を見つけては殺していき、お腹が空いたらスキルで作ったものを食べるという異常すぎる生活を続けた。


 体感で一ヶ月ほど経った時、荒野の端にたどり着いた。

 そこには水辺が存在していた。波が存在することから恐らく海だろう。

 本当にこれが海かどうかは分からないが、もしかするとここは魔物が住む大陸で、この大陸には人間は住んでいないんじゃないかと思い始めた。



 この世界に来てからどれくらい経っただろうか。

 最初、海を見つけた時の推測は正しかったようだ。ここは荒野の大陸で魔物以外の生物はほぼ存在しない。逆に魔物ならいろんな種類が生息していた。


 俺が来るまでは。


 生息していたのは過去の話だ。

 俺はここに来てから魔物を殺しまくった。それはもうアホみたいに殺した。

 その結果、目の前にいる一体の黒い龍以外の魔物は死んだ。こいつの眼だけでも俺の体の数十倍の大きさだ。生き残っただけはある。

 こいつを倒せばここにいる魔物を全滅させたことになるだろう。最高だ。


『我が同胞たちの仇、討たせてもらう』


 心の中に声が響く

 ふむ、念話か。でかいだけじゃなくて高度な知能も持っている様だ。

 俺がこいつとの戦闘に期待していると、魔物のものとは全く違う人間の気配が近づいていることに気が付く。

 さっきまで大陸には確かに俺とこの龍しか存在しなかった。


「グルワァッ!」


 龍がほえる。開かれた口からかなりの大きさの青い炎の球体が生成され、こちらに飛んでくる。

 人間が少しだけ気になるが、待ってはくれないようだ。今は壊すことを楽しもう。

 剣を持っている右腕を特に力をこめずに振って、飛ぶ斬撃を生成する。

 炎の塊は真っ二つに切れた後消滅した。しかし、斬撃の勢いは衰えない。

 そのまま龍に襲い掛かりその体を切断した。

 感想を一言で言うなら虚しいだな。


 俺はその死体を視界にいれず、戦闘中に近づいてきた謎の人物に目を向ける。

 ボロボロの服に、アクセサリーには無骨すぎる首輪。体格から女性のようだが、こんなところに来るほど戦闘に慣れてはいなさそうだ。年齢は十八ぐらいだろうか。顔はかなりの美人だが痩せこけていて台無しになっている。

 髪の毛の色と同じ綺麗な青色の瞳は俺に向いていた。

 奴隷と言う言葉が頭を過ぎる。

 もしそうだとしても、何故ここにいるのかは分からない。

 女はフラフラと俺の元に歩いて来てこう言い放った。


「一目惚れしました。私を痛めつけて殺してください、お願いします」


 この世界は面白いコトだらけで最高。

 再びそれを実感した。

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